軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

煙突トラブル

第48話 煙突トラブル

ゴホン、ゴホン――。

また咳が出る。

領主ヤマタニ様が、村を豊かにすると言って建てた工場。

最初は皆で喜んだ。

だが、煙がひどすぎた。

昼でも空は黒く、洗濯物は煤だらけ。

子供も、かかあも、咳が止まらない。

本来なら農民が領主様に意見などできない。

機嫌を損ねれば、家族もろとも処刑されかねない。

だから、皆ずっと我慢していた。

――あの日までは。

畑が燃えていた。

慌てて水をかけ、なんとか消し止めたが、

あと少し遅れていたら、家も家族も焼けていた。

震えが止まらなかった。

「……もう無理だ。」

意を決して、領主様へ直談判した。

数日後。

信じられないことに、ヤマタニ領主様ご本人が村に来られた。

「すまなかった。」

深く頭を下げ、謝罪金まで渡してくださった。

さらに煙の改善も約束してくれた。

――なんてお方だ。

村の誰もが、そう思った。

一方――同じ頃。

とある溶鉱炉の街。

ゴホン、ゴホン――。

ここでも咳は止まらない。

夜も眠れず、子供も女房も弱っていく。

昼間でも黒い煙で空は暗く、

洗濯物は外に干すことすらできない。

「……もう限界だ。」

周囲の者たちと話し合い、工場へ向かった。

せめて夜だけでも止めてほしい。

そう頼むためだった。

だが――

「帰れ。」

門前で追い返された。

それでも引き下がらず中へ入ろうとすると、

警備員に棒で殴られ、叩き出された。

地面に転がりながら、歯を食いしばる。

それを見ていた若者たちが立ち上がった。

「俺たちが行く。」

今度は領主へ直接訴えるために。

――これで、変わるはずだ。

誰もがそう思った。

だが。

数日後。

帰ってきたのは――

希望ではなかった。

布に包まれた、いくつもの影。

静まり返る人々。

誰かが、震える手で布をめくる。

そこにあったのは――

冷たくなった、顔。

見慣れたはずの顔が、もう動かない。

「……なんでだよ。」

声にならない声が漏れる。

答える者は、誰もいない。

ただ一つ、分かることがあった。

――ここでは、声を上げた者は死ぬ。

黒い煙が、空を覆う。

まるで、この街の未来のように。

重く、暗く、どこまでも――。