作品タイトル不明
大盗賊団来襲③
第42話 大盗賊団の来襲③
事務所の金庫が開けられた――その報告を受けた瞬間、ヤマタニの表情が固まった。
――これは、一大事だ。
金塊が偽物だと気づかれれば、どうなるか。 答えは明白だった。報復は避けられない。
(……万が一に備えて、“アレ”を用意しておくか。)
背筋に冷たいものが走る。 自分で仕掛けた罠だというのに、その結末を想像すると心臓が嫌な音を立てた。
ヤマタニは即座に騎士団長と警備員たちを招集する。
「盗賊団が報復に来る可能性が高い。今夜、動くかもしれない。」
その声には、わずかな緊張が滲んでいた。
もともと臆病な性格の彼は、内心では恐怖に震えている。 だが――だからこそ、判断は早かった。
工場は16時で操業停止。
従業員には「危険のため。」とだけ伝え、早めの帰宅を命じる。
そして騎士団には、夜襲に備えた厳戒態勢を敷かせた。
静まり返る工場。 嵐の前の、不気味な静けさだった。
◆
大盗賊団・斥候部隊のリーダー、オルミは自ら潜入を試みた。
部下では無理だと判断したからだ。
だが――
「……なんだ、この警備は。」
工場周辺には騎士団が配置され、巡回も途切れない。 灯りの配置、死角の潰し方――素人ではない。
「くそっ、これでは手が出せん……!」
オルミは歯噛みする。
本来なら、ボスへ報告する前に財宝の所在まで突き止めるつもりだった。 だが、この厳戒態勢では近づくことすら難しい。
(警備が緩むのを待つしかないか……。)
焦りを押し殺し、オルミは一歩、また一歩と闇へ後退する。
やがてその姿は、夜の闇に溶けるように消えた。
――そして、嵐はまだ始まっていなかった。