軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 浮浪者孤児狩り暗躍

閑話 浮浪者孤児狩り暗躍

この街には、孤児が多い。

経済は歪んでいた。

金持ちはさらに富み、貧しい者は働いても底から抜け出せない。

子は生まれる。

だが、育てられず、捨てられる。

子供は親を選べない。

それだけが、残酷な平等だった。

朝になれば、路地の隅で目を覚まし、

昼には空腹に耐えながら街を彷徨い、

夜には身を寄せ合って寒さをしのぐ。

名前を持たぬ者もいる。

昨日まで隣にいた者が、今日はいないことも珍しくない。

だが、それに理由を求める者はいない。

理由を考える余裕すら、この街の底には存在しなかった。

最近、孤児の間で噂が広がっていた。

南区に、炊き出しをする商会がある。

うまくすれば、日雇い仕事ももらえるらしい。

最初は誰も信じなかった。

だが、実際に腹を満たした者が現れると、噂は一気に広がった。

「本当にもらえた!」

「パンが柔らかかったんだ!」

「スープもあったぞ!」

それは、彼らにとって奇跡に近い話だった。

「今日は炊き出しだってよ!」

「急げ!遅れたらなくなるぞ!」

子供たちは一斉に駆け出す。

鍋の前にできる列。

押し合いながらも、誰も文句は言わない。

パンの匂い。

湯気。

温かいスープ。

それだけで、子供たちの目は輝いた。

列の中に、小さな少年がいた。

痩せ細り、服は擦り切れている。

だが、その目にはわずかな期待が宿っていた。

パンを受け取ると、少年はそれを両手で包み込むように持った。

まるで壊れ物のように、大切に。

一口、かじる。

ゆっくりと噛みしめる。

その顔に、かすかな笑みが浮かんだ。

「……うまい。」

誰に聞かせるでもない、小さな声。

「明日も来ような。」

隣にいる別の子供に向けたのか、

それとも自分に言い聞かせたのか。

その言葉は、湯気の中に溶けていった。

仕事もある。

掃除、荷運び、草むしり。

簡単な作業だが、先に食べさせてもらえる。

それだけで十分だった。

「マルペン社長は天使さまだ。」

そんな声まで聞こえる。

笑い声が、広がる。

ほんのひとときだけ、

この街の底に、穏やかな時間が流れていた。

その様子を、少し離れた路地裏から眺める男たちがいた。

壁にもたれ、影に紛れるように立つ。

「兄貴。またガキが集まってやすぜ。」

「……ああ。今日は当たり日だな。」

「いつもの手はずで?」

「やるぞ。」

声は低く、無駄がない。

視線は、列の中をなめるように動く。

誰が弱いか。

誰が一人か。

誰が消えても騒ぎにならないか。

選ぶ。

ただ、それだけの作業だった。

炊き出しが終わる。

満腹とまではいかないが、

それでも腹が満たされた子供たちは、散り散りに帰っていく。

帰る場所などない者も多い。

だが、それでも人の流れに紛れるように歩き出す。

人気のない裏路地へ入った瞬間を狙う。

足音が一つ、増える。

気づく前に、距離は詰められていた。

布を口に押し当てる。

少年の目が、大きく見開かれる。

何が起きたのか理解する前に、

意識が遠のいていく。

悲鳴は出ない。

手足を縛り、麻袋へ。

軽い。

あまりにも軽い。

袋ごと、丈夫な荷箱に押し込む。

他にも、いくつか同じ袋が積まれていた。

馬車の扉が、静かに閉まる。

ガタン、と小さな音がした。

それだけだった。

誰も気づかない。

誰も振り向かない。

孤児が一人、消えた。

「一人、金貨一枚だ。」

「へへ……やめられねぇな。」

男たちは笑う。

それは商売の会話だった。

罪悪感の欠片もない。

だが――

その背後で、さらに冷たい目が見ていることを、

男たちは知らない。

路地の奥。

闇に紛れる影。

その足元は、汚れていない。

指先には、光を弾く指輪。

一瞬だけ、月明かりを反射した。

その頃。

マルペン商会では、子供たちが笑っていた。

空になった鍋。

積み上げられた空の皿。

働いた子供たちは、満足げに息をつく。

社長は忙しく帳簿をめくる。

紙の上に並ぶ数字。

日付。

人数。

炊き出しの量。

配った食料。

働いた子供の数。

すべて、きっちりと記されている。

規則正しく。

正確に。

まるで、何かを測るかのように。

知らない。

ほんの数百歩先で、

また一人、街から消えたことを。

あるいは――

知っていて、なお目を向けていないのか。

それを確かめる者はいない。

夜の空気は静かだった。

静かすぎるほどに。

まるで何も起きていないかのように、街は、いつも通りの顔をしている。

だがその裏で、確かに何かが動いている。

音もなく。

気配もなく。

ただ一人、また一人と、痕跡すら残さずに消えていく。

そして明日もまた――

同じように、列ができる。

同じように、パンの匂いが漂う。

同じように、子供たちは笑う。

何も知らないまま。