軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

サンブレロ館建設

第37話 サンブレロ館建設

春の柔らかな陽光が、サンブレロの広大な空き地を照らしていた。

ヤマタニは現地に立ち、地図を片手にゆっくりと視線を巡らせる。

まだ何もない大地。だが――彼の目には、すでに“完成した城”が見えていた。

「……まずはここに本棟だ。」

静かに指を落とす。

「三階建て。指揮と居住、すべての中枢になる。」

工事人たちが一斉に動き出した。

測量棒が立ち、杭が打ち込まれ、地面に“線”が引かれていく。

やがて、トラックで運ばれてきた資材が次々と積み上がった。

木材、石材、鉄材――

それらは単なる資源ではない。

“城の骨”だ。

ヤマタニは腕を組み、淡々と告げる。

「低予算でいい。だが防御は削るな。」

「まずは土塁と堀だ。最低限でいい――だが、確実に命を守る形にする。」

その言葉に、現場の空気が変わる。

ただの建築ではない。

これは――拠点構築だ。

彼の頭の中では、すでに完成までの工程が組み上がっていた。

本棟。

土塁。

堀。

そして――いずれは石の城壁。

「一気にはやらない。」

小さく呟く。

「だが、止まらない。」

資金を分散し、段階的に強化する。

無理はしない。だが、確実に積み上げる。

それがヤマタニの戦い方だった。

ふと、視線を横に向ける。

鉄道の線路が、工事現場のすぐそばを走っている。

「……いいな。」

小さく笑う。

「これがあれば、人も物も止まらない。」

複線化が完成すれば、物流は倍以上に跳ね上がる。

王都との距離は、もはや障害ではなくなる。

――攻めにも、守りにも使える。

日が傾き、現場が赤く染まる頃。

三階建ての本棟は、すでに骨組みを現していた。

わずか一日。

だが、その姿は圧倒的だった。

「……早いな。」

誰かが思わず呟く。

ヤマタニは静かに頷いた。

「いい。予定通りだ。」

やがて夜。

館の内部に灯りが入り、骨組みの隙間から光が漏れ出す。

土塁の影が長く伸び、地面を覆う。

それはまるで――

闇の中に浮かぶ、小さな城。

遠目に見れば、もはや“拠点”ではない。

「……城、か。」

ヤマタニはぽつりと呟いた。

臆病だからこそ、守りを固める。

失うことを恐れるからこそ、備える。

だが――

(だからこそ、生き残る。)

拳を静かに握る。

「よし……。」

視線を上げると、夜空には無数の星が広がっていた。

「これで終わりじゃない。」

本棟は始まりに過ぎない。

土塁は高くなる。

堀は深くなる。

壁は厚くなる。

そして――

「いずれは、誰も落とせない城にする。」

その声は小さい。

だが、確かな意志が宿っていた。

まだ未完成の館。

だが確実に、未来へと積み上がっていく。

サンブレロ館は――

今、産声を上げたばかりだった。