作品タイトル不明
貴族を金づるに莫大な利益になった
閑話 貴族を金づるに莫大な利益になった
「これは――金になる。」
ヤマタニは、山のように積まれた手紙を見て笑った。
送り主はすべて貴族。
内容は一つ。
――工場を見学したい。
工場ツアーは、すでに連日大盛況だった。
売店や食事の収益自体は微々たるもの。
だが――
従業員のモチベーション向上。
新規受注の増加。
ブランド力の上昇。
サンブレロ工場群そのものの宣伝。
それらすべてが重なり、結果として莫大な利益を生んでいる。
(やめる理由がないな。)
ヤマタニは確信していた。
だが今回の手紙は――別格だ。
「貴族相手なら、桁が変わる。」
ヤマタニは、ゆっくりと口角を上げた。
◆
隣町には、豪華な蒸気バスが並んでいた。
貴族専用の工場見学バスである。
外装も内装も豪華仕様。
もっとも、中身は通常と変わらない。
だが、それでいい。
重要なのは“特別扱いされている”という事実だ。
専用待合所には、多くの貴族たちが集まっていた。
「フレイル男爵、貴殿もか。」
「おお、ホイットニー子爵。噂を聞いてな。」
貴族たちは楽しげに会話を弾ませる。
そこへ、豪華な衣装を身にまとった少女が一礼した。
「本日は、サンブレロ工場見学へお越しいただき、誠にありがとうございます。」
「案内役を務めます、ミモリと申します。」
ゆったりとした丁寧な口調。
それもまた“演出”の一つだった。
「こちらは貴族様専用の蒸気バスでございます。」
「安全のため、走行中は席をお立ちにならないようお願いいたします。」
バスが出発すると、騎馬の護衛兵が並走する。
これもまた、ヤマタニの指示だった。
(安心と特別扱い――この二つで満足度は跳ね上がる)
やがて一行はサンブレロ工場へ到着する。
見学ルートは完全に管理され、安全も徹底されていた。
「こちらが蒸気トラック工場です。」
各工程を順に見ていくことで、
一台の車が完成していく様子が自然と理解できる構造になっている。
「おお……!」
「これは見事だ。」
貴族たちの目が輝いた。
さらに発電所や各施設を巡り――
数時間後。
サンブレロ高級ホテルでの食事。
そして帰りには、高級ワインや菓子、カタログが入った手土産。
徹底された“満足体験”。
貴族たちは上機嫌で帰っていった。
その対価は――
「桁違い、だな。」
ヤマタニは報告書を見て呟いた。
一般ツアーとは比較にならない利益。
だが、それ以上に価値があるのは――
(これで、貴族同士が勝手に宣伝する。)
(しかも、こちらに恩を感じた状態でな。)
金。
名声。
そしてコネ。
すべてが一度に手に入る仕組みが完成した。
「これで終わりじゃない。」
ヤマタニは静かに笑う。
「次は――もっと搾り取る。」
その目は、すでに次の獲物を見据えていた。