軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:職人が自らの趣味をこれでもかと詰め込んだ素晴らしいボウガン

オバケの呪い効果で、俺の撃った矢が自動で矢筒に戻るようになった。

フリマで買った呪いの翼って……捨てても帰ってくる人形的な物だと思ってたんだが。よくこんな都合のいい効果になったもんだ。

……実質矢が無限になるわけだから、このままクエストを完了させずにいた方が効率が良いって考えるゲーマーもいるかもしれない。

でも俺はそういう事はやりたくない。ちゃんとクリアを目指そう。

フルダイブVRのゲームは特にNPCと面と向かってやりとりをするから後味の悪さが段違いなんだ。ゲームは楽しみたいからな。

「とにかく手掛かりが無いから……連れ歩いて見覚えのある場所を探すしかないかな?」

「それがいいかもね」

首を傾げる相棒に同意しながら、俺はゲームスレを開いて検索をかけた。

検索キーワードは『ホライゾンクロウ』

誰かがどこかで同じ種類を目撃していれば情報が載っているかもしれない。

……検索結果0

スレには情報は無いか。

なら、後でログアウトして、有志wikiを見るのも有りだな。

無詠唱クエストといい、冒険者ギルドのクエストと違ってヒント無しのクエストは難易度が高いな。

……まぁ俺達が変なクエストばっかり拾ってるだけで、街のおつかいみたいなのはもっと簡単なんだろうけど。

相棒がカラスの入った首飾りの籠を指先で持ち上げる。

「ちなみに、こことかは見覚えはあるの?」

「……この森とか山って意味なら見覚えあるわよ」

「「あるんだ!?」」

「でもあんたたちの家は初めて見たわ」

なんだ、この森でカラスなんて見た事無いから、てっきり通常フィールドが生息地だと思ってた。

……でも見覚えあるのか。そうなるとまた話が違ってくるな。

ちょっと山を登って他の島にも行かないといけないか? ……なんて考えていた時。

フレンドからメッセージが届いた。

なんだなんだ?

送り主は、上弦弧月さん。

内容は……

「……ボウガンできたって」

「おー、やったじゃん。さっそく買いに行く?」

「うん」

完成したなら早く欲しい。

相棒は籠の首飾りを服の中に隠し、他にも見られるとよろしくない物をインベントリにしまってから俺の手を取る。

転移オーブで、一緒にピリオへ飛んだ。

* * *

リアル時間が土曜日夜の露店広場だから相当の人混みを覚悟してたんだが、予想に反して人が少ない。

これはもしかして……スレで見かけたみたいに、皆仮眠取って夢の牢獄坑道チャレンジしてるのか? マジで?

まぁ人の数が減っているとはいえ、店はいつも通りずらりと並んでいる。

装備品の店は背の高い看板を掲げる店が増えたな。

『全品刻印入り』とか『レゾアニムス鉱あります!』とか、そんな文言が自己主張してる。……おい誰だ『閉店売り尽くしセール』やってる奴は。それ長い事閉店しないやつだろ。

露店広場はなんとなく住み分けが固定されてきたのか、古株の露店は場所が変わらない。

広場にかなり余裕があるから、新規の職人の店は空いてる所に新規同士で固まる傾向があるんだ。

必然、売り物のレベルも大体固まるようになる。

分かりやすくていい。

そんな露店を横目に見ながら、俺達は上弦弧月さんの店に向かう。

……今日の上弦弧月さんの店には兄貴分の小人のウェーニンさんもいた。

なんか既に上弦弧月さんの頭の上で仁王立ちしてる。

俺達が近づくと、なんとなく凄みのある笑顔をニヤーッと浮かべて俺をガン見してきた。

「クックック、待ってたぜぇにーちゃん……おいい! 無言で通過しようとすんなって!?」

「だから言ったろ兄貴。ユーレイさんにそのノリで絡むのやめろって」

いやスルーしようとしたわけじゃない、ちょっと視線の圧が強いから物陰に入ろうとしただけだ。本当本当。

気を取り直して店の前に来ると、仁王立ちしていたウェーニンさんは、おもむろに上弦弧月さんの頭の上に座りなおして深々と頭を下げた。

「この度は、誠にありがとうございました」

「いや温度差」

「兄貴、ほどほどにしとけ」

「つきましては、この御恩を究極のボウガンでお返しさせていただこうと全身全霊を込めて制作に取り組んだ次第です」

「兄貴、あーにーきー」

「……オラァ! 刮目しろぉ!! これが今の俺が作り出せる最高級且つ究極の逸品だぁああああああ!!」

最後にバネ仕掛けみたいに飛び跳ねたかと思えば、酷い温度差で叫んだウェーニンさんは、グッピーを殺す勢いで上弦弧月さんの頭をペシンと叩いた。

……ああ、品物を持ってるのは上弦弧月さんなのか。

そうだよな。自分の体より大きいもんな……どうやって作った?

上弦弧月さんはやれやれって顔でインベントリに手を入れて取り出し……その手には何も乗っていなかった。

「……えっと?」

「クックック、驚き過ぎて声も出ねぇだろ!」

「すまんなユーレイさん。うちの兄貴はちょっと迷彩好きを拗らせててな……」

「魔道具という存在が現れた事で、俺はボウガンの完成だけでなく光学迷彩の可能性にも辿り着いた!! こんなチャンスもあるかと思って光魔法を習得しておいてよかったぜ!! これが! 俺の現時点での最高傑作!! 『光学迷彩式完全透明ボウガン』だああああ!!」

「つまり、目には見えないボウガンが俺の手の上に乗っている」

「……マジですか?」

俺は恐る恐る上弦弧月さんの差し出しているっぽい所に手を伸ばした。

……うわっ、なんかある。見えないのになんかある。

「『裸の王様』かな?」

「バカにも天才にも見えねぇから安心しろ!」

相棒ののほほんとした問いに何故か自信満々で返すウェーニンさん。

何に安心しろってんだよ。

武器が見えないの普通に危ないだろ。

「大丈夫だ、ここを……こうすると光学迷彩は解除できる」

「アッハイ」

上弦弧月さんが光学迷彩を解除すると、手の上に普通の迷彩柄の長距離射程用ボウガンが現れた。

だったら最初からこの状態で出してくれ。

「……この透明化は、使ってる俺も透明になります?」

「ならない! 透明になるのはボウガンと矢だけだ!」

だけかぁー……

「……ちなみに、どういう場面で使うんです?」

「んなもんにーちゃん次第だろー? あ、見えねーからって武器持ち込み禁止の場所に持って入るなよ? 実体はあるんだからな!」

ならなんで透明化つけた???

秘密裏に持ち込む以外の用途って早々出てこない気がするんだが???

「ハンドボウガンはコレとコレだ」

「全部に光学迷彩付けといたからな!」

だから、ゴトンて音がしても見えないんだよ。せめて迷彩切ってから置いてくれ。

……ようやく見えたのは、長距離射程用と似た迷彩模様のハンドボウガンが二丁。

つまり、三丁セットの迷彩柄ボウガンだ。

【長距離用光学迷彩付ボウガン-WN012】…威力+11

仕掛けと魔法が組み込まれた長距離用の魔導弓。

付属の光魔法で魔導弓の完全な透明化が可能。

製作者︰ウェーニン

【近距離用光学迷彩付ハンドボウガン-WN013-A】…威力+8

仕掛けと魔法が組み込まれた近距離片手用の魔導弓。

付属の光魔法で魔導弓の完全な透明化が可能。

製作者︰ウェーニン

どれも光学迷彩は置いておいて、武器としては普通に性能が良い。

合計三丁だと結構なお値段になるんだが、お礼を兼ねているからってことでかなり安く購入させてくれた。

「修理とか迷彩のリチャージとか必要になったら持ってこいよー!」

「兄貴に付き合ってくれて、ありがとうなー」

兄弟に見送られながら帰路に着く。

まぁ修理はともかく……迷彩のリチャージで世話になる事はしばらくないだろう。