軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:呪いの元の無念との約束

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休み明けの平日は、どうしてこんなにダルいんだろうね?

ゲーム内で朝食を取った後、僕はのんびりと豆ヒヨコちゃんがピヨピヨしているのを眺めている。

僕らがいる環境は、海が死で、島が夢。その認識はあってると思う。

だからこの島の植物は夢とか死の要素を根っこから吸収してるんじゃないかな。それであんな睡眠系とか即死系とか精神デバフになるような成分になるんだと思う。

この島の動物はそれを食べてるから、うたた寝してたり夢喰いだったりするんじゃないかなぁ。ただしワンパンベアは除く。

……そこで思い出すのは、覚醒コケッコに進化したヒヨコちゃんの事。

念のためにって貼った床板の隙間から伸びた雑草を摘まみ食いして進化した子なんだけど……ね。

覚醒してるのよ。

目覚めてるの。

特技は【おはようコケッコ】なのよ。

……勝ってるよね?

あの子、摂取した夢要素に打ち勝ってるよね?

「……つよい」

「ピヨッ」

なんとなく、生命の無限の可能性を垣間見た気分だった。

* * *

カーンカーンと鎚の音が響く。

ジャックが鍛冶仕事をしている音。

鉱石を持ち帰った事でそわそわしているデューに早く鎧を用意してあげたいらしく、ジャックは僕らがログアウトしている間にもせっせと鍛冶場と山を往復していたんだって。

プレイヤーと会ったりもしたらしいけど、同じ場所での採掘を頼まれる事が多くて会話が楽しかったらしい。ジャックは灯り代わりになるもんね。個人情報云々の注意を念の為しておいて良かった。

その甲斐あってジャックの鍛冶スキルはメキメキと上達している。

納得のいく鎧が出来上がるのも、そう遠くないかもね。

そんな音を聞きながら、僕はフリーマーケットで入手したとあるアイテムを取り出して相棒に見せた。

「今日はこれを材料にアイテムを作ろうと思ってました」

「ほう?」

【回帰する翼】…品質★★

何があろうと必ず巣へ舞い戻る翼。

呪いのごとき執着は死した事すら気付いていない。

「呪われてるが?」

「僕は考えました。必ず帰ってくる翼の羽で矢を作ったら、撃っても矢筒に戻って来る矢が作れないかなと」

「……それって、撃ったら俺に向かって飛んでくる矢にならない?」

「やっぱりそう思う?」

撃った矢がクイッてUターンして相棒を追い回し始めたらとんでもないからさ。一応思いとどまったわけよ。

「なので僕は考えました。僕がこの翼の持ち主ちゃんを死霊魔法で呼んで、説得を試みるのはどうかなって!」

「……どんな風に?」

「撃った後、矢筒に戻る矢になってくれませんかって」

「なるほど?」

相棒は、僕の言葉を聞いて、しげしげと翼を見つめた。

「……この翼、死んだ事に気付いてないが?」

「それも含めて説得を……こう……呼び出してから『あなたは死にました』って……あんまりだ! ダメダメ可哀想! やめよう!!」

「これはヒドイ」

『ホアー!』ってショックを受ける鳥さんしか頭に浮かばなかったよ! こいつぁひでぇや!!

リアル説得スキルの才能が無い!

自分で想像して自分でダメージを受けている僕に、相棒は苦笑いしながら言った。

「とりあえず未練がある事は間違いなさそうだからさ、死霊魔法で呼んで話を聞くのはいいんじゃない? 矢の事は別にしてさ」

「なるほど!」

さすが相棒だよ。

真っ先に使い道を考えた僕とは一味違うね、好き。

作り置きしてあった魂籠を用意。中に翼を入れる。

フッシーの時みたいに骨で籠を作るにはちょっと体が足りないからね。これでなんとか、御指名扱いになってほしい。

「じゃあいくよー」

「うん」

「【住居登録】!」

いつもみたいに風が渦を巻く……んだけど。

なんか、風が赤黒くない?

これは呪われてるからかな?

そして籠の中に現れたのは……カラスみたいに真っ黒な鳥だった。

……なんだろう、ちょっとあちこち欠けてる?

いつものオバケみたいに、全体がスッキリしてないと言うか。黒い姿が煤けてる? 掠れてる? そんな感じ。

僕がそうして見た目に驚いて観察していると、カラスっぽい鳥はキョロキョロと周りを見渡してから僕に目をやった。

「ちょっと! アタシをこんな所に閉じ込めてどうしようってのよ! タダで済むと思うんじゃないわよ、こんのエルフがぁ!」

「すーごい悪態つくじゃん」

……でもおかしいな?

籠の中の刻印は『保護』と『尊重』と『癒し』、相変わらず『捕縛』だの『隷属』だのは使ってないから、ここに入ってるのはこの子の意思のはずなんだけど?

僕が疑問に思っていると、カラスっぽい鳥ちゃんは急にボヤッと焦点が合わなくなった。

「アタシは帰らないといけないのよ……帰らないと……帰……アレ? …………ドコに?」

そして、途方に暮れたような顔で、僕を見る。

「……ねぇ、アタシもしかして……死んだ?」

……ごめん。

こういう時、咄嗟に優しい嘘がつけるような才能は持ち合わせてないんだ。

「……えっと、うん。残念ながら」

『ホアー!』ってショックを受けるカラスっぽい鳥ちゃん。

想像通りの様子に頭を抱える僕を、相棒は優しく肩ポンして慰めてくれたのだった。

* * *

「もういいわよ! 死んでるものはしょうがないじゃない! あんたらに協力してあげるわよ!」

「うん、ありがとう」

「か、勘違いするんじゃないわよ!? あんたらの為じゃなくて、これは利害の一致なのよ! 協力してやるんだから、代わりにアタシを元の居場所に帰してちょうだい!」

「うん……その元の居場所って、どこ?」

「それが分かれば苦労しないのよ!」

「……クロウだけに?」

「やっかましぃわ! それを探すところまであんたらの仕事よ! いいわね!?」

──クエスト『無念の翼の帰る場所』を受諾しますか?

「「はーい」」

「よろしい!」

ホライゾンクロウって種類だったらしい鳥ちゃんは、開き直ってカァカァカァカァとすごい勢いでまくし立てて僕らとの契約を取り付けた。

『ユーレイの使う矢に宿って呪いの力で使用後矢筒に戻るようにする。その代わり、鳥の生前の居場所を見つける事』

クエストって形で決まった契約は、僕と相棒両方が対象となっている。

このクエストが継続する間、僕が首から下げてる籠には常に鳥ちゃんが入りっぱなしになる事になった。本鳥が見ないと目的地がわからないからね。

ちなみに、当然のように呪われた装備になったので、僕はしばらくコレを外せません。仕方ないね!

その代わり、相棒は矢がリサイクルされるから矢筒への矢の補充が必要なくなる。ただし通常の矢だけね。特殊な矢は対象外。

絵に描いたようなツンデレカラスちゃんは、名前をつけるのは拒絶した。

生前、大切な名前があったんだって。

だからその名前を思い出すまでは、新しい名前はつけられたくないって。

それならそれを尊重しよう。

「よろしくねカラスちゃん」

「………………す、少しだけならよろしくしてやってもいいわよ!」

う~ん、清々しい程のツンデレ。