軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:錬金術士アジトの探索

改めて、敵対錬金術士のアジトへと突入した僕ら。

とはいえ、姿を隠して行動しているから、ほとんど潜入に近いかな? 戦隊が多分どこかにいるから、相手に『敵がいる』って認識はされていると思うけど。

さて、僕らは今までいくつか敵対組織のアジトを経験済。

攻略した所もあれば、脱出して終わりにした所もあるけれど……今回突入しているここは、その中でもかなり特徴的というか、攻略する側にはものすごく面倒な構造をしていた。

(……こっちも行き止まりだ)

(で、パチもん転移オーブがポンと置いてある、と)

意気揚々と突入した僕らは、早々にアジトの構造っていう壁にぶつかっていた。

神経質な程に大きさを整えて組まれている石材の壁。床は幾何学模様の石畳。

等間隔に光る結晶が魔法陣を刻んだ壁に埋め込まれて灯りを提供し、地下なのに空気の流れも僅かに感じる。

扉の近くの壁には名札が貼られていたり、ゴチャゴチャとした走り書きがされた紙が貼られていたりして『アジト』というよりは『研究所』って感じの雰囲気がある場所だった。

そんなこのアジト、通路があまり長くなくて、どん詰まりにちょくちょくパチもん転移オーブみたいな物が設置されている。

多分、アジト内を移動するワープ的な物だと思う。

思うっていうのは、ジッと目を凝らしてもアイテム名とかが出ないから。

【鑑定】を防ぐジャミング的な何かがあるのかなぁ?

僕らがこれを使えるのかどうか分からないけど、どこに飛ぶのか分からないし、頭の中のマップがグチャグチャになっちゃうから、とりあえず触らずに相棒の足でアジトを周っていた。

……そしたら早々に行ける場所が無くなった。

(区画と区画をオーブで繋いで、空間としては完全に分断されてる感じかな?)

(地下でそれやられると面倒だなー)

地上の建物だったら、行き詰まったら壁をぶち破って別の建物に行くって選択肢を取りやすいんだけどね。地下だと見通せないから、それこそ結婚指輪みたいな指針が無いと目指す方向の目星がつけられない。

(外でパン屋さん大好き集団が暴走してるんでしょ? 発狂してるヒト達がこんな面倒くさいアジトにぶち当たったら、面倒くさくて全部耕しちゃうんじゃない?)

(……耕やすってここを?)

(ここ丸ごと)

(……やらないとは言いきれない)

なんてやりとりを念話でしていたら、数人の錬金術士達が荷物を抱えてバタバタと通路を通過していった。

(悩んでてもしょうがないな、適当に触ってみよう)

(だね)

相棒的に覚えやすい行き止まりを選んで、相棒がオーブに触る……と、周りの景色がゆらりと揺れて、瞬きひとつの間で背中にくっついている僕ごと別の通路に移動していた。

(おー、移動した)

(……これは使えるんだな。ピリオで見つかったやつはプレイヤーが触っても動かなかったらしいが)

(ほーん? 物によって条件が違うのかな)

場所が変わったから、僕は改めて【解析】を使って周囲を確認。すると……おやおや?

(なんか黒い魔力の線がオーブから通路の床に伸びてる)

(黒……って事は【闇属性】か?)

(たぶん?)

(……辿ってみるか。通路に沿ってる?)

(うん。通路の真ん中に黒い線が引いてある感じ)

相棒が周囲に気を配りながら【闇魔法】で消音しつつ通路を駆け抜ける。

僕はその背に掴まったまま、廊下の線に目を凝らす。

(T字路、どうなった?)

(右から来てる線と合流して、左が2本線になってる)

(OK、合流先に行こう)

追いかけていくと、さらに別の通路から来た線も合わさって、黒い線は3本になり……その先で、今度は正面から来た線と合流して、とある大きめの扉の下へと入り込んでいた。

(ここだね)

(ここか。戦闘あるかもしれないから一旦降りて)

(はーい)

僕が降りて【解析】を切ったり念のため杖の見た目を誤魔化したりしている間に、相棒が【感知】で周囲の敵の有無を確認。

(……通路にはいない。扉の中には3人。俺達から見て、右側に2人、左側に1人)

(3人かー、どうする?)

(俺がやるから援護よろしく)

(援護、とは。具体的に)

(じゃあ……左の奴の動きを止めて。手段は問わないけど、大きな音は立てないでくれると助かる)

(オッケー)

じゃあそうだなー……こんなイメージでやろうかな。

(準備は?)

(オッケー)

(じゃあ行くぞー……GO!)

相棒が合図と同時に扉を最低限押し開けた。

光学迷彩の揺らぎが中に飛び込み、右側の2人に向かって突っ込んでいく。

僕は左の1人の驚く顔を見ながら、小声で魔法を詠唱した。

「【リーフクリエイト】」

イメージしたのは、大きな花。

錬金術士の体をグルリと巻き付いて伸びる蔦。

そして頭の真横に咲いたのは、ホタルブクロに似た、ヒトの頭よりやや大きな花。

おちょぼ口みたいな花は、巻き付いている錬金術士の頭をカプッと丸ごと口に含むようにして包み込んだ。

こうやって口と視界を塞いじゃえばさ、すぐには何かしたり出来ないじゃん?

右の2人を失神させた相棒は……たぶんこっちを振り向いたんだと思う、光学迷彩の揺らぎが一瞬硬直した。

(怖っ)

(何を言う、可愛かろう)

お花ちゃんは頭を食い千切ったりしてないよ。ただの味見だよ。

相棒は、僕の花に頭をスッポリ包まれて「んーっ! んーっ!」とジタバタしている錬金術士をそっと【雷魔法】で失神させた。

(ああ、前に貰ったスタンガンみたいな事したんだ)

(そう)

さすが、カッコいい。

窒息しないように花は消して……と。

部屋の中に入って、扉を元通り閉じた。

意外と簡単に制圧できたけど……ここは何の部屋なのかな?

部屋はそれなりに広いけど、何より目立つのは部屋の真ん中にある大きな魔法陣といくつものオーブ。

パチもん転移オーブに似ているけれど少し違うそれらは、個別に小さな魔法陣が描かれた台座に置かれている。

そして【解析】の目で見てみれば、廊下から伸びてきた黒い線はそのオーブにそれぞれ繋がっているみたいだった。

(……転移の管理システム的な感じかな?)

(……まぁそう見えるな)

錬金術士の組織はアイテムの技術力が高いねぇ。

オーブや周りのあれそれを調べていると、大きな板に羊皮紙を何枚も張り合わせて大きな1枚にした物があって、それには部屋のマップみたいな物が書かれていた。

(あ、これってここのマップじゃない?)

(どれ? ……あぁ、ぽいね。こっちはオーブの使い方が書いてあった)

(お、どれどれ?)

(レベル20以上の【闇魔法】が鍵らしい。持っていない錬金術士は、オーブを動かす用の魔道具を作って持ち歩いてるって。そして近くにいればパーティ単位で一緒に移動)

(ああー、だから相棒は普通に動かせたんだ。僕じゃ無理だったね)

戦隊はどうかな……【闇魔法】持ってるかな?

とりあえず、地図と使い方をスクショに撮って、パピルスさん経由で公開してもらう事に。

戦隊も、外のパン屋さん大好き集団も、この情報があれば動きやすいんじゃないかな。

(じゃあ、次行こっか)

(だな)

探しているのは戦隊さんだからね。

気絶させた錬金術士達を簀巻きにして部屋の隅に寄せて、僕らは部屋を後にした。