作品タイトル不明
ユ:命が軽い熊チャレンジ
「……マジかよ」
「ぐぇ〜……」
フォーパンベアに挑んで数分後。
俺達は拠点の転移オーブで死に戻って倒れていた。
カステラさんはこっちで復帰登録をしていなかったから、多分自分の開拓地に戻ってるんじゃないだろうか。
……と、考えたのと同時にカステラさんが俺達の拠点へ転移して戻ってきた。
「ちょっと待て」
「……はい」
「おかえり〜」
「何だあの熊!?」
「……何と言われても」
「ワンパンベアの系譜……?」
まぁ言いたい事はわかる。
フォーパンベアは、シンプルに速くて堅くて痛かった。
複雑な事をしてくるわけじゃない。純粋な暴力と回避とレベル差。巨体でその仕様となると、それはもう死にゲーのボスなんだよな。
「ちょっと、もう1回行こうぜ。次はガチのボスだと思って行くから」
「……まぁ、いいですよ」
「オッケー」
「お、夾竹桃もログインしてるな。巻き込んでいい?」
「……どうぞ」
「いいとも〜」
そして俺達は、ちょうどインした同盟仲間をメンバーに加えて、再びフォーパンベアの住む島へと繰り出した。
* * *
「……はい」
「2Dead!」
フォーパンベアに挑んで十数分後。
またも俺達は拠点の転移オーブで死に戻って倒れていた。
死に戻る寸前に聞こえた夾竹桃さんの「キョェエーッ!?」って悲鳴が耳にこびりついている。
今度はうちで復活登録を仮にしていたから、全滅した面子は全員すぐ近くで転がっていて……カステラさんは「うがぁーーっ!」と声を上げてピョンと起き上がった。
「なんなんだよあの熊!?」
「……何と言われても」
「フォーパンやばいね」
「アッヒャッヒャッヒャッ! ヤバいってあの熊! ちょっと間合いミスったら即乙ったー!」
キーナが色々試していたが、どうやら弱点属性も特に無いらしい。いや【光魔法】だけは試せていないが、ここまで来るとそれも望み薄な気がする。
強いて言うなら、あの熊達は精神ステータスだけがやけに低い。
だから精神デバフはほぼ確でかかるんだが……フォーパンベアは、何の精神デバフがかかっても怒り狂って暴れ始める厄介な性質を持っていた。
あの巨体、あの速度、あの威力でそれをされると、それはもうデバフじゃない。ただの発狂モードだ。
「もう1回だ! もう1回! 次は全員マナの果実な!」
「あ、セイレーンがログインしたよー。連れてくー?」
「呼んじゃえ呼んじゃえ!」
「……さてどうなるか」
* * *
「いや、アレ相手にオレっちが増えて何が変わると思ったんスか!?」
「……ダメかー」
「ヤバい、死にすぎて面白くなってきた」
「わかるー、笑えてくるよねー」
堂々の 三乙(さんおつ) 。
カステラさんはついに奇声を上げながらゴロゴロと地面を転がり始めた。
「あーちくしょう! 何が足りないかなんてわかってんだよ! タンクだよ! 熊の攻撃をメインで引きつけて沈まないヤツが必要なんだよ!」
「……まぁそうですね、俺達全員、フォーパンベアに一撃貰ったら沈むんで」
なお、ジャック三兄弟はまだ連れて行っていない。
レベルが俺達より少し低いので、デューも耐えられなさそうな気がするからだ。
そして同盟で遊んでいるなら、体格もあの熊にピッタリなタンク担当はちゃんといる。
「ド根性ー! こんな時こそお前の出番だろうがぁー! 来い来い来い来い! 今すぐログインしろおおおお!!」
「あ、マジでログインしたじゃん。ウケるー」
「タイミング神かよ」
「……もうこうなったら行ける所まで行きますか」
「ゴーゴー!」
* * *
「ハッハッハッハッハ!! 実に戦いがいのある熊である!!」
「アアー!! 今回は行けるかと思ったのにー!!」
異郷同盟が 四乙(よんおつ) 。
もうそれだけでフォーパンベアは俺達の中では伝説だ。
「でもド根性さんが熊の前に来てくれて、手応えはあったよね」
「だねぇー、後はいかに死なずに削り切るかの戦いかなー」
「……もうボス戦ですね」
「え、あれクエストのボスモンスターとかじゃないんスか!?」
車座になって作戦会議を始めた所で、開きっぱなしだった同盟メンバーのリスト、最後の二人がログインする。
「……ラウラさんとアルネブさん、ログインしましたよ」
「よっし! 同盟全員揃った! 全員で行こう!」
「うむ! 総力戦であるな!」
「本気出すのここなのウケるー」
「二人とも予定は大丈夫かな……?」
「……大丈夫そうッスね。ラウラさんめっちゃ乗り気ッスよ」
まさか異郷同盟総力戦になるとは思わなかった。
ボスでもクエストでもない所で何故か本気で戦う事になるのが世間からズレている俺達らしいといえばらしいか。
「こんにちは、楽しそうなことしてるのね?」
「そ、そんなに強い熊さんなんですか!? 楽しみです!」
ゴリゴリの殺意を笑顔に宿した二人が合流し、俺達は全員で山を超え、フォーパンベアへ5回目のリベンジ戦へと向かったのだった。