軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:妨害を受けて立て

出 た。

そ(・) い(・) つ(・) を見て、率直な感想が落ちた。

フード付きの黒いマントを着た、暫定使徒のニヤニヤ野郎。

お馴染みの顔になってきたのがなんとも不本意だが、今しがた聞こえた発言からして、コイツが碌でもない事をしに来たのは確かだ。

発言と同時に現れたそいつは、天井近くの岩の出っ張りに立ちこっちを見下ろしている。

周りのプレイヤー達も驚いた顔でそいつを見上げた。

「おい、あれムービーに出てきた……」

「ウッソ! 使徒と一緒にいた多分使徒じゃん!?」

一斉に臨戦態勢に入る俺達プレイヤー。

最初に険しい顔で問いを投げたのは、麗嬢騎士団のお嬢様。

「……面白くない、とは?」

問われたニヤニヤ野郎は、軽く肩をすくめて言う。

「言った通りだよ? そこのドラゴン諸共に崩れ落ちてグチャグチャになるのを期待してたのに、綺麗に仕舞われて終わりなんて、実に、実に、つまらない」

だから──と、ニヤニヤ野郎は、スゥッと、魔法陣の中心に置かれた結晶の中の『滅び』に指先を向けた。

「起きなよ“崩壊”のひと欠片。抵抗出来るようにしてやるから」

──ド クン

と、空気が脈打った。

鼓動の元は結晶の中。

さっきまでピクリともしなかった赤黒い『滅び』が、まるで生き物のようにブルブルと震えて、【封印魔法】の光を押し返そうとしている──!

「貴様ッ!!」

激昂してニヤニヤ野郎へ飛びかかったのは骨ドラゴン。

煌めく巨体を振りかざし、鋭い爪で薙ぎ払う。

ガラスのように砕け散る岩壁。

しかし降り注ぐ岩石の中に黒いマントの姿は無い。

「アハハハハハ!!」

「おのれぇ!!」

スルリと凶爪から逃れて、壁を這うように移動する。

……その、ヒラヒラと風に舞うマントの裾から……虹色にテラリとした光沢の黒い粒がボロボロと振り撒かれた。

黒い粒は、真下の結晶の山にに降り注ぎ、取り憑いて煌めきを黒い体で食い殺し、ヒビ割れて肥大化、歪な手足を生やしてガチガチと無機質な鳴き声を上げる。

「ヌァーーーッ!? 何するトゲェエエエエエッ!!」

「その数の結晶! どれだけの損失になると思ってるんですかぁーーーっ!?」

商人と幻獣から声高に上がる苦情。

ニヤニヤ野郎はその悲鳴にゲラゲラ笑いながら洞窟の壁を走り抜ける。

それは対使徒の防衛戦で出てくる敵となって、洞窟の壁一面を埋め尽くし始めた。

混沌の種 Lv65

「さぁさぁ、負ければここは崩壊だ。君らがどこまで足掻けるものか……じっくり愉しませてもらおうか」

そう言い残して、追いかけるドラゴンの顎をかわし、クルリと回って消えるニヤニヤ野郎。

「そーいうキャラだと思ってたよアイツは!!」

「クソがぁー! 誰が優良エンタメコンテンツだ! 金取るぞ!!」

「とりあえず使徒は確定でいいな?」

「異議なし」

「使徒の敵を放ったって事は決め打ちでいいっしょ」

急いでバフをかける待機要員。

ザワザワと蠢く敵の群れ。

それらが上げる耳障りな音。

その音を叩き割るように、キーナの声が響いた。

「ごめんトゲちゃん、結晶使うよ! 【ダブルクリエイト】!」

キーナの視線は、『滅び』の入った結晶にだけ向けられていた。

周囲の結晶のひとつがキーナに使われて【封印魔法】となり、外へ出ようと突出しようとした『滅び』の先端を殴りつける。

「ええい覚悟は決めたから情けは無用! 好きに使うトゲェ! ここが全部崩壊するよりマシトゲェ!!」

「ありがとう! ──【ダブルクリエイト】! 【ダブルクリエイト】!」

ガッツンガッツンとハンマーで鍛造するかのように、【封印魔法】で叩きまくるキーナ。

その勢いに若干唖然としていた魔法陣の魔法使い達は、1人がハッと我に返って慌ててMPポーションを飲み始めた。

「やっべぇ、森女さん滅茶苦茶MPに物言わせた魔法の使い方するタイプだ……タンク役、全員伏せてポーション飲め!」

ああ、うん。やっぱりキーナの魔法の使い方ってMP消費多いよな……そんな気はしてた。

俺もボーッとそれを見守っているわけにはいかない。

封印の方は担当に任せて、周囲の敵から魔法陣の全員を守り切らないと勝利はない。

……そうだな、守る頭数は多い方がいいだろ。

俺は最近作った新しい犬笛を仮面越しにくわえる。

仕込んだ刻印は【召喚魔法】の無詠唱。

鋭く息を吹き込めば、チーム・ベラドンナがまとめて戦場へと現れた。

「えっ、なんだあの犬」

「狼じゃね?」

「茄子っぽくね?」

「どっちでもいいよかわいいから」

そうだろうかわいいだろう。

チーム・ベラドンナはあっという間に大きくなって、今や立派な狼の群れだ。

あとはせっかくだ、先輩にも御助力願おうか。

「【サモンサーヴィター:ポメベロス】」

流石に告死獣の先輩を犬笛で呼びつけるのは気が引けたから、こっちは普通に詠唱だ。

展開される魔法陣から、三つ首のポメラニアンがワンワンと出現する。

「呼んだか後輩!」

「ついに先輩の威厳を見せる時!」

「相手にとって不足なぁし!」

スッと俺のすぐ横にネビュラもやって来る。

ジャック達三兄弟もとっくに戦闘態勢だ。

よし、呼び出すのはこんなもんでいいだろう。

「うわー、ワンワンパラダイスじゃんすか」

最高だろ?

「来るぞぉおお!!!」

グワッと動く敵の群れと、グランド爺さんの雄叫び。

「ゆくぞヒトの子ら! 滅びになぞ遅れをとるな!!」

力強く吠える骨のドラゴンに、俺は念のため、フレンドリーファイア防止にそっとパーティ申請を飛ばす。

チラリと骨ドラゴンの頭骨がこっちを向いて、パーティに加入処理がされた。

その顔が、どこか満足そうに笑った気がしたが……流石に骨しかないから気のせいだったかな。