作品タイトル不明
キ:スペシャルゲストと緊急事態
王様vsプレイヤー達の手に汗握る戦いが続いて……ついに挑戦者が途切れたらしき間があいて、司会進行の兵士さんが改めて声を張り上げた。
『冒険者の皆様の挑戦はここまでとなります! ……それではここで、最後を飾るに相応しいスペシャルゲストを御紹介いたしましょう!』
お、きたきたスペシャルゲスト。
誰だろう? 開始を待ってる間に軽く掲示板を覗いてみたけど、誰も知らない感じだったんだよね。
観客達がワクワクソワソワし始めると、高らかに二度目のファンファーレが鳴り響いた。
『ククロスオーヴ王国国王陛下の旧友にして、今代の獣人闘王継承者! ──ロアヴァルド・ブレイズ様です!!』
((誰?))
キョトンとするプレイヤーに対して、観客の……主に獣人達が立ち上がって両手を掲げながら雄叫びを上げた。
獣人闘王……つまり妖精女王様みたいな、種族の1番偉い人かな?
世界観的には知ってて当然な扱いなのかもしれない。
すぐ近くの席から、知らないヒトのそれっぽい会話が耳に入ってきた。
「おいおいにーちゃん、あんた獣人のくせして反応が薄いじゃねぇかよ!」
「え、えっ? あー……獣人闘王、様? だっけ?」
「おうよ! あんたも見たところ冒険者だろ? 戦いに身を置く獣人なら、目指すところはあそこだろうがよ!」
へぇ~、強いNPCなんだね。
なんて思っていたら、楽隊の演奏が流れる中、通路を通って立派なマントを羽織ったライオンの獣人がフィールドへ現れた。
(わぁー、ゲームにありがちなライオンキングだぁ!)
( おおー(王) )
(ベッタベタだねぇ!)
(……もしかしてクソギャグ気付かない?)
(クソギャグ???)
(……ううん、なんでもない)
うん??? まぁ後で聞けばいいか。
兵士さんは、たぶんプレイヤーに向けてなのかな? 獣人闘王の説明を始める。
獣人の長は『獣人闘王』
『闘』と名に付く通り、代々最も強い獣人が受け継ぐ称号であり、その強さでもって大切なアーティファクトを守る守護者でもある……って事らしい。
うんうん、妖精女王様もアーティファクトがお城にあったから、獣人が上位種族になるために必要なアーティファクトを持っているヒトって事になりそうだね。
フィールドでは、国王陛下と獣人闘王が嬉しそうに笑って握手を交わしている。
「久しいなロア!」
「お主も変わりないようだな」
『獣人闘王様は国王陛下が冒険者として活動されていた際、共にパーティを組んでおり──』
……さて、そんな感じの説明がされている最中。駆け出しっぽい、たぶんプレイヤーかな? って感じの装備のヒト達が数人、立ち上がって会場を後にした。
あー、そうだった。『巻き込まれたくない場合は、スペシャルゲストとの試合が始まる前に会場を出るように』って話だったね。
確かに、まだそこまで世界観に馴染んでない初心者さんはデスペナもらう方が嫌かもしれない。
……あれ? でもここ闘技場だよね? 死なないのでは?
今更な僕の疑問に対する答えはすぐに出た。
示し合わせたように立ち上がって何かを投げたのはフード付きマント姿の獣人NPC達。
フィールドへ向けて投げられた複数のそれは、戦場と観客席を隔てる魔法の防壁にぶつかり、激しく光と音を発して反応した。
あれは──使徒の結晶!?
悲鳴の上がる会場。
驚き、防壁から離れようとするNPC達。
防壁は、数秒と間をあけずに砕け散り、結晶は宙に浮いたままさらに禍々しい光を発する。
すると──
『警告します!! 闘技場の魔法が打ち破られました!! 現在この会場は、外と同じ状態になっています!!』
外と同じ、それはつまり闘技場専用の仕様が無しになっているって事。
『加護の無い一般人は、今ここで致命傷を受けるとどうなるかわかりません!』
死亡無効の解除、そして防壁の崩壊。
一般NPCの守りが無くなった!
そこでテロ行為に走った獣人達が、マントを取り払って声を張り上げる。
「獣人闘王! 貴様が我らを認めなかった事、今ここで後悔させてくれる!!」
途端、敵対獣人達の体から、赤黒いオーラのようなモノが立ち上った。
うん、どれが敵なのか分かりやすくて助かるね!
立ち上がり、武器を構えるプレイヤー達。
けれど、敵対獣人は観客の間に散っていて迂闊に手が出せない。一般人NPCに相打ち無効の加護がそもそも無いから。
パニックになり逃げ惑うNPC達の間を縫って、敵対獣人を追いかけるヒト。
麗嬢騎士団を筆頭に、非戦闘員の避難を優先するヒト。
僕らも、先ずは人員増やしましょうか!
「ネビュラ」
相棒はまずネビュラを呼び出し。
そして僕は、敵の姿によっては紛らわしいかな?と思って連れてこなかったうちのオバケ三兄弟達!
「カモン……【ハロウィンパーティ】!!」
フッフッフ、こんな事もあろうかと、三兄弟をまとめて召喚する魔法を登録しておいたのだ! もちろんMPは三人分まとめて減るけどねぇ!
グワッと展開した魔法陣から現れる、ジャック、デュー、マリーの三人。
「ハイハーイ!」
「デュー、ココニ!」
「参りました」
「逃げるヒト達を守って、誘導して!」
「「「了解!」」」
先に呼ぶかもしれないって話はしておいたから、三人とも迷わない。
赤黒いオーラを立ち上らせる獣人達は、それぞれがオーラを爆発させるようにして暴れ始めた。
僕らの前にも、血走った目で鼻息を荒くした牛の獣人が立ち塞がる。
さぁ、戦闘の始まりだー!