軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:王様チャレンジ千本ノック

騎士団長との試合を終えると、そこからは国王陛下によるプレイヤー千本ノックが始まった。

「ぐわー!!」

『一本!』

「あぎゃー!?」

『一本!』

「イヤー!」

『一本!』

レベルが50以上限定とはいえ、ガチの戦闘勢でなくても、俺たちくらいのペースで初期から遊んでいればそのくらいには到達しているプレイヤーが多い。

観客に囲まれる上に動画まで残るから挑戦者はそれほど多くはないが、それでも参加したエンジョイ勢は実力差がハッキリとわかる形で王様に吹っ飛ばされていた。

(でも瞬殺はしてないね)

(最低3分は打ち合う決まりでやってるっぽいな)

3分きっかりで吹っ飛ばされても、負けたプレイヤーは『え、すげぇ』みたいな顔でシステムウィンドウを見ているから経験値はよっぽどおいしいんだろう。

「のわーっ!?」

『一本!』

「ちょ、うえぇえっ!?」

『一本!』

「アイヤーッ!!」

『一本!』

闘技場は相手の名前もレベルも見えない。

だから王様のレベルがいくつなのかは分からないが、少なくとも現時点での戦闘ガチ勢よりもかなり高いのは違いなさそうだ。

「噂に違わぬ腕前だな、『無尽の 牙槍(がそう) 』よ!!」

「そいつぁどうも!!」

今の挑戦者は、ガルガンチュアさん。

俺達みたいにアバター名を伏せてるわけでもないのに称号で呼ばれているのが強者感あるな。

ガルガンチュアさんの戦いは豪快だ。

突いて、斬り裂いて、薙ぎ払う。

床も壁も縦横無尽に駆け回り、ゴツい槍斧をぶん回しているとは思えない速さで連撃を畳み掛ける。

よっぽど槍斧が性に合うんだろう、リーチの長さを活かした範囲攻撃が止まらない。確かにこれは台風だ。

そしてガルガンチュアさんの装備は、武器にも鎧にも目玉のような石がついていた。

魔武器に加えて魔防具も覚醒している。

魔武器はギョロリと常に相手の王様を見据えたまま、以前のフランゴ戦で見た時のように刃先に光る刃が追加されていた。

魔防具は、ここぞって所で手足が光る時があるから、ダメージ強化でも入っているのかもしれないな。

だがそんなガルガンチュアさんさえ王様は下して見せた。

あれに真正面から殴り合って、笑いながら勝つ姿は中々に狂っていた。

(王様すごい動きするねぇ)

(積んでるAIがガチすぎる……)

格ゲーのAIでも引っ張ってきたのかよ……

ガルガンチュアさんは負けたものの、楽しそうな声で「また頼むぜ!」と王様に言っていた。

不敬とかには……ならないんだろうなぁ。ゲームだし。王様も楽しそうに笑って頷いてるし。

そうやって、知らないプレイヤーと見知ったプレイヤーの試合が続く。

「あっ、くそっ!!」

『一本!』

カステラソムリエさんは変装していない状態での参戦。

虫たちを召喚して挑んだが、隙間を魔法で撃ち抜かれて落ちた。

「ありがとうございまーす!!」

『一本!』

お嬢様の所の番犬ジョンは……いつもの狂犬スタイルからスパーン!と綺麗な放物線を描いて吹っ飛ばされて、お礼を言いながら撃沈。

「くっ……このっ……わっ!?」

『一本!』

ラウラさんは変装状態での参戦。

武器と魔法で戦い、危なくなったら飛行して距離をとっていたが……王様が物理攻撃の衝撃波でそれを許さず、旋回先に回り込まれてとどめ。

(アルネブさんと夾竹桃さんは結局予定合わなかったんだよね)

(リアル都合はしゃーない)

その分まで大暴れしたのはド根性さんだ。

「フハハハハハハ!!」

「良いぞ! デカブツを相手にするのは久しいわ!」

ド根性さんのゴーレムは動きこそそれほど速くないんだが、その分、範囲攻撃を常に振りまいているような状態で戦っていた。

脚部に何か仕込んであるんだろう、足踏みする度に地面に衝撃波が迸る。うかつに近付けない。

拳を繰り出しても衝撃波が飛ぶから遠距離もいける。

だが、勝利したのは王様だった。

衝撃波に衝撃波をぶつけて正面から相殺して接近、ゴーレムと直接殴り合う暴挙に出て……なんと最終的にはゴーレムを投げ飛ばした。

(ゴーレムって投げれるんだ!?)

(筋力ステいくつなんだ……)

ガルガンチュアさん並みに接戦を繰り広げたのは僅か数人。戦隊のレッドもその1人。

巨大なハンマーと戦隊衣装には目玉の石、当然のように魔武器魔防具は覚醒済。

レッドは範囲攻撃を使わない戦闘スタイルだった。

離れず、回り込み、ぶん殴る。

重量のある両手武器を確実にぶち当てるために、無駄のない動きで接近戦に持ち込み鎚を振るう。

「『赤の破砕執行者』、噂通りの良い腕だ!」

「……」

集中しきっているのか、王様の言葉にも反応せずに淡々と攻撃を続ける様はまるで殺戮機械のようだ。

それに笑いながら対応する王様もだいぶヤバいけどな。

レッドは王様とほぼ相討ちのような状態で終了した。

判定は引き分け。

(見て見てー、垂れ幕掲げてた戦隊が大喜びしてる)

(相変わらず仲いいな戦隊)

唯一王様に勝利したのは……去年の夏に、スイカを切った爺さんだった。

袴に刀を装備した和風プレイヤー。

武芸之翁(ぶけいのおきな) 。

まず開戦からして様子が違った。

両者、合図からしばらく武器を構えて動かない。

そして同時に地面を蹴り、そこからは目にも留まらぬ斬撃の連続。

……なのにどちらも無傷のまま、一歩も引かず、ひと言も発しないまま、ただただ張り詰めた糸のような攻防が続く。

王様が、壮絶な笑顔でこそいるが、戦闘中に口を開かなかったのはこの試合だけだった。AIにも喋る余裕が無いのか、そこまで処理に割かせる武芸之翁は本当に中身人間なんだろうか。

観客も余りの様子に息を呑み、誰もが呼吸を潜めて目が逸らせない。

本当に命のかかった戦場のような緊張感に包まれた一戦。

決着は一瞬。

何が決め手だったのかも分からない。

ただ気付いたら、王様の首筋で刀が寸止めされていた。

『……い、一本! それまで!』

終了宣言と同時に、会場中が安堵の溜息と爆発するような歓声に包まれる。

(ほわぁ〜……あー、なんか見てるだけなのに緊張した!)

(うん、なんでか疲れた)

あの爺さん、リアル達人っぽいもんな……格の違いみたいなモノがある試合だった。

そんな爺さんも、孫が頑張って出した声が届くとデレッと相好を崩して手を振っていて、それを見た王様は愉快そうに笑っていた。