軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:サフラン滝裏集落

川の上を走るのは、MPが許すなら割と有りかもしれない。障害物が少ないから。

昔は大きな川に浮かぶ舟が重要な運搬手段だったって理由がわかるね。

……なんて思っていたけど、川からピョインとアメンボみたいなモンスターが跳びかかってきて、その考えはちょっと軌道修正された。

エフォ(EFO) では、川の上はモンスターがいなければ楽。いいね?

そして辿り着いたのは、大きな滝の前。

崖がまず大きい!

そして滝も横幅があって水量も多い!

崖は下の方が少し奥に抉れてて、上がちょっとせり出してる状態だから、水は真っ直ぐに滝壺へ向かって落ちている。

(おおー、キレイだねぇ)

(まぁ、うん……滝はね)

滝(・) は(・) 。

相棒がそう言ったのは……たぶん、滝の中の暑苦しい光景が原因かな。

「ぬぅおおおおおおおおお!!」

「うるぁあああああああああ!!」

「のぼれぇええええええええ!!」

なんということでしょう。

滝の中には、力任せに泳いで滝を遡ろうとしている人魚達の姿が!

(う〜ん、自然溢れる景色が雄叫びで台無し!)

(脳筋だなぁ……)

なんか、『サフラン滝裏集落』は入り口が滝の裏にあるらしいんだけど……ただの裏側じゃなくて、かなり高い所の裏側にあるって話なんだよね。

そしてこの滝は開拓地の範囲内に入っているから、魔法とかで勝手に地形を変える事は出来ない。

だからプレイヤーがこの開拓地に入りたかったら、飛ぶか跳ぶかして入り口の洞窟に入る必要がある。

(有志wikiには、プレイヤーが売ってる【風魔法】使った短時間飛行の魔道具を買って行くのがいいって書いてあったけど……そこを泳ぎでゴリ押しするつもりなんじゃない?)

(そっかー……逆に上から流れてきて穴に飛び込むのじゃダメなのかな?)

僕がそう言うと、ちょうど川の上から人魚が1人流れてきて……勢いを殺せないまま「ああ〜〜〜〜〜!!」って悲しい叫びを上げながら滝壺へと落ちてきた。

(……ダメそうですね)

(ですねぇ)

そこそこ流れ早いもんね、滝の上って。

まぁおつかいクエストのちょっとした試練としてはちょうど良さそう。ちゃんと情報とアイテムを揃えれば通れる道だし。だからこの開拓地なのかもしれない。

(じゃあ行こっか)

(うん)

僕らは簡単。

ネビュラは小さくなって相棒が抱っこ。あとは僕の箒に二人乗りするだけ。

ふよよよよ〜っと飛んで入り口へ向かうと、人魚達から悲鳴のような羨ましがるような声が上がった。

「ああっ!? 森夫婦があああああ!!」

「あの夫婦地味に踏破力高いですよねぇえええ!!」

「キィイイーッ!! 羨ましいですわぁあああー!!」

そんな声を聞き流しながら、僕はもうひとつ方法を思いついた。

(滝壺からさ、【水魔法】で大砲撃ち出すみたいにして跳んだら入れるんじゃないかな?)

(ああ……行けるんじゃない?)

まぁ人魚は泳いでなんぼみたいな不文律があるのかもしれないけどね。その辺は、人魚じゃない僕らには分からない。

* * *

滝の裏、ド根性さんも身をかがめればギリギリ通れそうな洞窟を進む。

緩やかに地下へ降りるような階段を進んで行くと……見張りっぽい鳥の獣人さんが二人立っていて、「ようこそ『サフラン滝裏集落』へ!」と挨拶をしてくれた。

「「おおー」」

『サフラン滝裏集落』は地形を活かして活かしきった、ロマン溢れる開拓地だった。

通路を抜けた途端に広がる大空洞。

入り口が入り口だから当然のようにここは地下なんだけど、天井から光が差し込んでいて木漏れ日の中くらいには明るい!

今はもう日が暮れてきたから、差し込む光は夕日のオレンジ色。

その光も、なんだかゆらゆらと揺らいでいて、幻想的!

「え、光源どうなってるの?」

「……天井の岩盤が所々水晶みたいになってるな」

「あー……本当だ! その上は……水?」

「滝の上が湖だから、その下……かな?」

えー! すごいすごい!

天窓になってる結晶は、結晶の幻獣ちゃんに作ってもらえるような規模のサイズじゃないから天然物って事だよね!

エフォ(EFO) は水の透明度が高いから、ここまで光が届くんだ!

「え、すごい。こんな場所見つけたら入り口がどんなに不便でもここに街作るわ」

「……あの入り口はあれだからモンスターが入ってこないんだと思うよ」

「あ! 確かに!」

地形にめちゃくちゃ恵まれてる場所なんだねここ!

中心には、3本の大きな黄色い石の柱。

なんの石かは分からないけど、床から天井をささえるようにそびえ立っている。

そんな開拓地の家や店は、大空洞の壁一面にツバメの巣みたいに貼り付けるようにして作られていた。

枯れ草とか藁を何かで固めて作った家と、布のテントみたいな家とがあって、それぞれが色とりどりの鳥の羽で装飾されている。

そして……この開拓地には通路って物が無かった!

行き交う住民が全部鳥の獣人かフェアリーかの二択!

外側が居住エリアで、真ん中の大空洞をたくさんの飛行種族が飛び交っているのは、かなり特徴的で面白い光景だった。

「えー、面白ーい!」

「……なるほど、これは飛べないと住めない」

すごく面白い街だからゆっくり観光したいなぁ! 別に急ぐクエストじゃあないからね!

……と、いうわけで、名残惜しいけどリアル時間がそろそろ就寝時間だから、オーブ登録だけしてログアウト。

明日は休みだけどね! ゴミ捨てとか朝の用事はあるからね!

「……ワクワクして眠れないかもしれない」

「遠足かな?」

ファンタジーの観光は、いつだって楽しい遠足だよ。