軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:新しい街への旅路

(こうなると、アニバーサリー景品の【開拓神のミニ転移オーブ】が欲しくなるねぇ)

(だなー)

MMOによくあるおつかいクエストを受けた俺達は、指定された開拓地へ向かって、ネビュラに二人乗りして森を駆け抜けていた。

NPCに渡された紙には、会いに行くNPCの名前と住んでいる開拓地。そして『私だ。この者に講義を頼む』という簡単過ぎる紹介状(?)の一文が書かれている。

それを片手に、開拓地がどこにあるのかを調べて辿り着き話を聞くのが今回のおつかいクエストだ。

目的の開拓地、『サフラン滝裏集落』の場所はすぐに分かった。

冒険者ギルドで今も拡張を続けている世界地図に書いてあったからな。

場所はピリオノートから見て北。

大街道が繋がる『☆フェアリータウン☆』を越えて、以前『因果の黒鳥幻獣』に会いに行った『湖畔のミストタウン』より北東の方角。

有志が作ったらしい石畳の道をずっと進むと川があり、その川を遡って行くとたどり着くらしい。

久しぶりの長旅だ。

拠点の小粒達が心配だからあんまり長く留守にしたくないんだが、まぁ仕方ない。

【開拓神のミニ転移オーブ】があれば、途中でちょくちょく様子を見に戻れるから、やっぱりアニバーサリー景品は必須アイテムだな。早めに欲しい。

(でも二人乗りの遠出デートは久しぶりだから嬉しい)

(……そうだっけ? ……そういえばそうか)

なんか最近バタバタしてたもんな。

すぐ前に乗っているキーナの頭に軽く顎を乗せると、嬉しそうに笑う声が聞こえてくる。

そんな俺達を、馬に乗った誰かがしょっぱい顔をしながら追い抜いて行った。

(ヒトそこそこいるねぇ)

(みんな一斉に無詠唱クエスト始めたんだろうな)

【刻印】がすっかり広まっている今なら、俺達と同じく最初の刻印NPCへのおつかいをスキップしているプレイヤーはそこそこいるだろう。

と、なれば、指定された開拓地のオーブを登録していなければ、こうやって走る事になる。開放されたばかりのコンテンツにプレイヤーが集中するのは当然の事だ。

(……混んでそうだなぁ)

(混んでたらオーブ登録だけして1回戻ろうよ。明日は休みなんだし)

(そうするかー)

キーナの休みは平日だから、昼間にインすればヒトは少ないだろう。多分。

そんな事を考えている間に、ネビュラは有志が工事した道を駆け抜け、川にかけられた橋の所までやって来た。

ここからルートは遡上だ。

石畳の道はこのまま北東へ続いているが、川に沿った獣道のようなルートも分岐している。俺達はこっちだな。

「じゃあネビュラ、こっちの道でよろしく」

「うむ……それは構わぬが、何か川上から流れてきたぞ」

「ん?」

そこそこの幅がある川の上流から……見覚えのある検証勢の誰かが流れてきた。

「……あ、森夫婦だ」

「……どうも」

「……え、何してるんです?」

「ちょっと、乗ってた従魔が途中でやられちゃいまして……俺も忍者のレベリングブートキャンプやっときゃ良かったなぁーって思ってるところです〜……あ、襲ってくるのはデカいバッタですよ〜」

「ご丁寧にどうも……?」

そう言いながらも、検証勢の誰かはちゃぷちゃぷと川を流れていく……

「えっと……ポーションいります?」

「お気遣いなく〜、このままかえるんで〜……」

検証勢の誰かは流されていった……

(……この川流れていって、どこに帰るんだろ?)

(……さぁ?)

この川、流れる先はジャングルだった気がしたけどな……ワニと凶暴なゴリラがいたジャングル。

(……まぁいっか)

(……だな。救助を拒否したなら俺達に出来る事は無い)

(あ、もしかしたら、ジャングルで野生に還るって意味だったのかもしれない)

(その選択肢は考えてなかった)

『ヒトの子よくわからん』って顔をしているネビュラに指示を出して、俺達は川を遡り始める。

……すると、そう長く進まない内に、さっきの検証勢を川流れにしたバッタのモンスターがネビュラに並走し始めた。サイズがヒトの頭くらいある厳ついバッタだ。

吸血バッタ Lv32

(……そこそこの数いるな。囲まれると面倒そうだ)

(んー……ネモの足場で川の上走ろうか。それで【火魔法】で僕らを囲めば組みつかれはしないんじゃない?)

(なるほど、やってみよう)

「ネモ」

キーナの呼びかけで、ネモがケタケタと笑いながら川の上に足場を作る。

ネビュラに指示を出してその上を駆けると、タイミングを計っていたようなバッタが接近を踏みとどまった。

続けて、間髪入れずにキーナが左腕を前に出す。

「【フレイムクリエイト】!」

腕に巻かれた蛇型バングルの赤い宝石が光り、俺達の周りを蛇のような炎がグルグルと旋回する。

一か八かで飛びかかったバッタは、炎に巻かれて焼け落ちた。

(うん、行けるね)

(OK、後は伏せてて。MPだけ気を付けて)

キーナが姿勢を低くしてポーションを飲み始めた後ろで、俺はハンドボウガンを装備。バッタを撃ち落としにかかる。

クエストでヒトの通行が多い道だ。

片付けておいて悪い事は無いだろう。