軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:不思議な街の図書室で

今日は休日。

休みの朝は、ゆっくりベッドでダラダラとしがちだが……今日は平日と同じ時間に起床だ。

「おはよ」

「ん~~……おぁよ〜……」

「トースト焼いておくから、ゴミ捨てよろしく」

「むぁ〜い……」

欠伸をしながら出て春の朝の空気を吸ってきた真紀奈は、少し目が覚めた顔で戻ってきた。

俺が目玉焼きを焼いている横で、真紀奈はトーストに、今日はピーナッツクリームを塗りながら首を傾げる。

「結局、昨日って、僕何時に寝たっけ……?」

「横になって俺の腕の中に入ったらいつも通りにすぐ寝たよ」

「そっかぁ〜」

寝付きが良くてなにより。

軽く朝食を済ませてひと息つく。

「今日は何時頃インしよっか?」

「んー……午前中に、クエストだけ済ませるのはどう?」

「ほう? ……あー、混むのイヤだから?」

「そう」

「いいよー」

今日はリアルで特に時間が決まっている用事は無い、強いて言うならゴミを出すだけだ。それももう済んでいるから、後は気の向くままに過ごせる完全フリーの休日だ。

* * *

ログインしました。

いつも通りにゲーム内朝食を済ませて、森夫婦の変装姿で出かける準備を済ませる。

目的はクエストと観光だけど……場所が場所だからな、ネビュラは留守番にしておこう。今日の俺はひたすらキーナの箒に二人乗りの予定だ。

一応、『夢繋ぎのMPポーション』を二人共飲んでおく。これで俺は箒飛行のMPタンクになった。移動は楽にはなるだろう。

拠点の皆にひと言かけて、転移オーブから『サフラン滝裏集落』へ。

転移オーブは通路から開拓地に入ってすぐの所だ。

だから転移してきた俺達の目には、昨日夕暮れの光景だった街並みが昼間の白い光に変わり、水面の模様がゆらゆらと落ちる水槽の中のような景色が映っていた。

(おー、飛んでる鳥獣人とかが魚みたい!)

(うん。昼間だとかなり印象が違う)

パッと見は鳥獣人やフェアリー以外の種族が見えないから、プレイヤーはかなり少ないはずだ。ここの住民は飛行可能種族しかいないらしいからな。

(じゃあまずはクエストNPC探そっか)

(だな)

この開拓地にいるって情報は貰っているが、ここのどこにいるのかは分からない。

探す方法は……素直に住民に訊いてみるしか俺達は思いつかなかった。

転移オーブから街の入り口に戻って、見張りをしている鳥獣人にキーナが声をかける。見張りで立っていてようこその挨拶をしてくれるヒトは、十中八九住民でNPCだろう。

「すいません、『フォースィ』さんって名前のフェアリーに会いに来たんですが、どこに行けば会えますか?」

「フォースィ……ああ、図書室の司書さんですね」

この街は、開拓主があちこちから買ってきた書籍を住民が好きに読めるように、規模は小さめだが図書室があるらしい。

「図書室は……見えますか? あっちの……少し大きくて、青い布の日除けがあるのがそうです」

「あー、見えました。ありがとうございます、行ってみます」

「……ありがとうございました」

箒に二人乗りして飛ぶと、背後で見張りが「おお」と感心したような声が聞こえた。

鳥獣人やフェアリーが飛び交う空間を、箒でゆっくりめの安全運転で進む。鳥獣人は不思議そうに、フェアリーは興味深そうにこっちへ視線を向けていた。

ピリオノートでプレイヤーから浴びるのとはまた違った注目を浴びつつ、図書室に到着。

物陰から飛び出してきた子供の鳥獣人を避けて、手すりの無い足場に降り立つ。

(危なかったー)

(小粒が飛び出してくるのはファンタジーでも一緒だな)

薄い板で作られた丸い扉は小さめで、俺も相棒も潜るのに屈む必要があったが、中の空間は普通に広かった。

……これは多分、外側に出入口と足場を貼り付けて、岩の壁を奥に掘って空間を確保しているんだな。外観はツバメの巣が並ぶ崖と見せかけて、構造は蜂の巣に近そうだ。

図書室の中は、ほのかに光る鉱石がロウソク代わりに皿に乗って置かれている。居心地の良い静かな空間。

その貸し出しカウンターに……カウンターの上に小さなロッキングチェアを置いて、落ち着いた色合いの服を着たフェアリーが1人座って小さな本を読んでいた。

「こんにちは。えっと……『フォースィ』さんですか?」

「ええ、ワタシがフォースィですよ。お二人は……どちらさまだったかしら?」

「あ、はじめましてです。えっと……エリンデルリンさんの紹介で、『魔法とは何か』っていう話を聞きたくて来ました」

そう言うと、キーナが紹介状?をフォースィさんの前に広げて置いた。

フォースィさんは椅子から降りて手紙に目を通し……上品にコロコロと笑う。

「あの子は相変わらずねぇ。構いませんよ、今はちょうど利用者もいませんからね」

そう言うと、フォースィさんは俺達に椅子を勧め、自分も再びロッキングチェアに座って、話し始めた。