軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:商談と経過確認

無事にパピルスさんにカミングアウトを終えた僕ら。

まぁ特に問題は無かったから、予定通り色々と相談をしよう。

「声変わりシロップは効果切れるまで時間かかるんで、このままですけどね」

「薬の効果を消す薬は論丼も研究していますが、まだ実用品には至っていませんね。昨日もせっせと『キツネの葡萄』を鍋に放り込んでいましたよ」

「……あ、錬金術のレシピ本に毎回『キツネの葡萄』の注意書きがあるのはそういう……?」

「ええ、効果キャンセルに使えるのではと新しい素材が手に入る度に試した結果ですね」

鍋に入れると、中身をもれなく酸っぱい葡萄汁にしちゃう『キツネの葡萄』。その素材の可能性を、論丼ブリッジさんはまだ諦めていないらしい。

さて、まずは予定通り、新しい木材を使ったベッドの注文をする。

「新しい木材でベッドを作りたくて、オーダーメイドとかってパピルスさんの所にお願い出来ますか?」

相棒が共有インベントリから揺り籠の木の木材を取り出して、応接セットの横に置くと、木材の見た目とアイテム名を確認したらしいパピルスさんはビジネススマイルのまま一瞬フリーズした。

「……んんっ、失礼しました。色はいつも卸していただいている 微睡(まどろみ) の木と似ていますが、別物なんですね」

「揺り籠の木です。たぶんベッドに向いてると思うので、腕の良い職人さんにお願いしたいなーと」

「なるほど、承知しました」

料金はリリーと揺り籠の木材とどっちがいいか聞いたら、パピルスさんは輝くような笑顔で揺り籠の木材を所望した。思った通りだったね。

そして次に、フリマで売る予定で考えている物について。

「披露宴で少し話した件なんですけど……【封印魔法】を広めたいなーと思ってまして」

「ええ、仰っていましたね。パズル?を売る予定だとか」

パピルスさんに、【封印魔法】の仕様と、レベルが20以上にならないと属性と混ぜて封印する事が出来ない事を伝える。

つまりは、広めるにも誰かがレベル20にならないと伝授用のパズルの作り手が増えないって事だね。

うーん、こうやって改めて説明すると、使いこなす難易度が高い魔法だなぁ、封印魔法って。

パピルスさんはその仕様を確認すると、少し考え込んで僕に訊いた。

「……『封印を作る魔法』を籠めた魔道具は作れませんか?」

「……あ!」

あー、そっか! 魔道具は『どんな効果のある魔法』かを決めて『何をキーに発動する』かを考えて『石に籠める』物だった。

だったら、『簡単な封印を作る魔法』を籠めちゃえばいいのか!

「そっか! そっちの魔道具も一緒に売ればレベル上げ用の封印を自分で作り直せるんだ!」

「ええ、スキル習得用の封印を売ってリリーを稼ぎたいのなら悪手ですが、使い手を広めたいのであればこちらの方がキーナさんの負担は減ると思います」

なるほどねー、これは採用しない理由が無いよ!

「フリマまでに色々試してみますね!」

「お役に立てたならなによりです」

フリマが終わった後は、パピルスさんのお店で売ってもらうのはオッケーを貰った。

ある程度【封印魔法】持ちが増えるまでは定期的に作ってパピルスさんの所に卸しに行こうかな。魔道具作りをシステムで魔法登録しちゃえば量産の手間は減らせるからね。封印の入れ物はパピルスさんの所で買ってもいいし。

封印の中身にちょっと嬉しい物を入れるとやる気が出るかもしれないってアドバイスも貰ったから、拠点で採れる物で何か考えてみよう。

披露宴でちょっと話題に出たストロングベリーをいくつかパピルスさんに売ったりしていると、相棒が「……そういえば」とパピルスさんに問いかけた。

「……ゲコリン村で見た錬金術士のNPC、その後どうですか?」

ああ、そういえばそっちも時間かけて探す感じの話だったね。

僕らは住んでるフィールドがそもそも違うから、噂とかが入ってくる頻度が低くて実感が薄くてつい忘れちゃう。

そもそも僕ら夫婦が噂を集めるのに向いてないってのもあるんだけど。

パピルスさんは軽く頷いて手帳から1枚の似顔絵を取り出した。

それはゲコリン村で見た錬金術士のNPCにそっくりなイラストだった。

「こちら、スクショを元にイラストが得意なプレイヤーに描いてもらった人相書きです」

「おおー」

「……似てるな」

「これを色んな地方にいる我が社の従業員に渡して来店情報を集めています。今の所、この女性はゲコリン村周辺で『過去に来店があった』という目撃情報が少し出ているのですが……」

「ですが?」

「『この女性ではないが、服の雰囲気が似ている』という情報が、それなりにあちこちの地方から上がっていまして」

ほほう、服の雰囲気が似ているとな。

「なんかゲームだとあれだね、組織としてお揃いっぽい雰囲気の衣装にしてるのかなって感じだね」

「そう。そうなんですよ」

うん? パピルスさんがなんかしみじみとしながら僕らを見た。

僕と相棒は魔女と暗殺者だからそこまでお揃いじゃないけどな?

「その情報から考えますと、やはりこの錬金術士達も何かしらの組織と考えて良いのではないかと。まだ、その拠点を絞り込めるような情報は出ていませんが」

「……なるほど」

見せてもらった似顔絵は貰っていいって言われたから、ありがたく貰う事にした。

服の雰囲気ねぇ……あぁ、確かに。

「そういえば、夢の中で見た錬金術士も、イベント開会式の日にピリオノートでぶつかったヒトも、雰囲気似てるかも」

「……うん、そういうのは早く言おうか」

「……ちょっと詳しくお願い出来ますか?」

いやぁ改めて視覚情報として見返すと発見がありますね。

僕らもゲコリン村でスクショ撮ってあったんだからじっくり見返せばよかったよ。失敗失敗。