軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:突発カミングアウト

ログインしました。

シャーロットお嬢様とロナウドの披露宴は無事に終了。

拠点に帰還した後は、興味津々な小粒達とジャック達に披露宴の様子を聞かせてログアウト。

そして今日は、パピルスさんと色々相談する予定の日……なのだが。

「ねぇ相棒、そろそろパピルスさんには僕らの正体教えてもいいんじゃないかな?」

ゲーム内朝食の席で、キーナが藪から棒にそんな事を言い出した。

「……その心は?」

「クエスト関係とかNPC関係で関わること多いし、今日の相談次第じゃもっと関わる頻度上がるだろうし。……ってなったらフレンド登録してないと面倒くさくない?」

まぁ、確かに。

今後クエスト関係で緊急事態になったりしたら、店に連絡してアポ取りとかしていると間に合わない場合があるかもしれないか。

「相棒はヤダ?」

「いや別にいいよ」

今までのやり取りで信用は積み重なっているから、特に教える事にも抵抗は無い。パピルスさんはこの期に及んで俺達のアバター名を大々的にばらすような人じゃないだろう。

「じゃあ今日の相談ついでにカミングアウトする方向で」

「了解」

最初はいつも通り変装していって、後はキーナがカミングアウトしたらその場で普段の装備に着替える事にする。

声変わりシロップは効果時間が切れるまでどうしようもないけどな。

* * *

最初はパピルスさんの店で相談するつもりだったんだが、内容が内容だからと言う事で、場所はピリオノートの闘技場個室に変更になった。

まぁシステム的に部外者が入ってこれない且つ盗み聞きできない環境の方がアイテムを広げるのも安心だ。

俺達にとってはすっかり密談の場となったピリオノート闘技場で、受付NPCに部屋の鍵を貰い入室する。

先に来て部屋を作って待っていたパピルスさんは、わざわざ部屋の中にソファとローテーブルのセットを持ち込んで俺達を待っていた。

「おはようございます。本日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いしまーす」

「……よろしくお願いします」

会釈に会釈を返す。

手土産はいつもの知恵の林檎盛り合わせ。

林檎の種をアニバーサリー景品の万能ミニ植木鉢で育てても良いか訊かれたから、気にしないから好きにしてくれと返事をする。売ったり譲渡したりした林檎をどうしようと、それは各自の自由だ。

全員がソファに座って……まずキーナが切り出した。

「えっと、今日はパピルスさんに自己紹介をしようと思いまして」

あ、早速なのか。

キョトンとしたパピルスさんの前で、キーナはインベントリからいつもの装備に切り替える操作をして、三角帽子にケープとコルセットスカートを身に着けたいつもの魔女姿になった。

俺もそれにならい、インベントリから装備を変更。

いつもの黒い暗殺者スタイルになる。

「『キーナ』です、よろしくお願いします」

「……『ユーレイ』です」

突然のキーナの変身に驚いてフリーズしたパピルスさんは……次に俺を見ると、「ああ!」と納得した顔でポンと手を叩いた。

「ラリーストライク大会ベスト8のユーレイさん!」

「……あ、はい」

「なるほど貴方でしたか! 候補の1人として考えてはいましたが……そうか、やっぱり」

「あ、候補ではあったんですね」

謎が解けてスッキリした顔をしているパピルスさんは、達成感のある笑顔で頷いた。

「条件が近かったので」

「条件?」

「森夫婦さんは『仲の良い夫婦プレイヤー』で『旦那さん側は弓使い』『奥さん側は魔法使い』。ユーレイさんは俊敏100超えの思考加速と思われる動きをしていて、奥さんと仲良く一緒に会場を後にしたのが目撃されていますから。もしかしたら……と」

「あー」

なるほど。

俊敏特化になる職業に弓職があるから、候補には上げられていてもおかしくはないか。キーナは見ての通りの魔女ファッションだし。

「とはいえ エフォ(EFO) ですから、本気の隠遁勢でまったくピリオノートにすら出てきていない可能性もありました。……むしろ、そう思っている方の方が多いんじゃないですかね?」

「あー、それなら安心かな?」

「……まぁ」

結局、ラリーストライク大会の後に『森夫婦ですか?』なんて凸されたりはしなかったしな。ゲームシステムがストーカー防止で止めてくれただけかもしれないが。

俺達が少しほっとしていると、正面のパピルスさんが一転心配そうな顔になった。

「ところで……良かったんですか? 私にお名前と姿を教えていただいて」

「まぁ、パピルスさんは大丈夫かなーって」

「……信用に足る人だなと思いました」

「ずっと気を使ってもらってたしね」

色々やりとりするのにフレンド登録がしたいと言えば、パピルスさんは、それはそれは嬉しそうな笑みを浮かべて「ありがとうございます!」と頭を下げた。

「あ、でも周りには内緒にしてくださいね」

「もちろんです」