軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:隣の隣の隣の島で

パピルスさんとの相談を終えて、俺達は拠点へ戻って来た。

いつもの青みがかった緑色の森を見渡してひと息つくと同時に、キーナがグルリと俺を振り仰ぐ。

「相棒、今日ってこの後やりたい事とか予定とかある?」

「……特に無いけど、何かやりたい事あるの?」

「夢の幻獣、誰かと契約したいなと思って」

「ほう?」

キーナは、パピルスさんと話をしていて、NPCからの噂集めはあまりやる気が無いが、夢を渡り歩いて情報を集めるのは俺達向きなんじゃないかと考えたらしい。

「ああ……夢魔は夢の中の戦闘が強いだけで、夢の行き先を選ぶ事は出来ないんだっけか」

「そうそう。夢の案内が出来るのは夢の幻獣」

以前に魔術師団長の睡眠不足の原因を知ったのも、最近怪しい錬金術士の存在を知ったのも、どっちも夢の中だった。

確かに、街にあまり出ない俺達が手がかりを得るなら、夢の中の方が気楽かもしれない。効率はともかくレベル上げにもなるしな。

「じゃあモモンガあたりに声かける?」

「まぁそうだね。モモンガちゃんがイヤだったら、他を当たる方向で」

* * *

「うーん、ピンとこないモン」

「そっかー」

早速訪れた『揺り籠の森』で、残念ながらキーナはモモンガ幻獣にお断りされた。

「モモンはこう……ヒトの子とは1対1の契約をしてみたいモン。ヒトの子は結晶の猫幻獣と契約してるモン? だからノーセンキューだモン」

「あー、それなら仕方ないねぇ」

へぇ、そういう希望をする幻獣もいるんだな。

キーナは駄目なら駄目でスッパリ諦めたらしく、それはそれとしてモモンガ幻獣にイチゴを渡しながら相談を始めた。

「じゃあ、僕と相性が良さそうで契約してくれそうな夢の幻獣ちゃんに心当たりは無いかな?」

モモンガ幻獣は「モンモン」言いながら心付けのイチゴをモヒモヒと食べ尽くすと、ケプッと息を吐いてからピシッと一方向を指差した。

「それなら『夢のミミズク幻獣』が良いかもしれないモン」

ミミズク。

鳥が好きなキーナはそれを聞いて目を輝かせた。

「え、その子どこにいる? 近くにいるの?」

「ここから島を3つ渡った先だモン」

「相棒! 行きたい! すぐ行ってもいい!?」

「好きにしなー」

俺が駄目って言うわけないだろ。

* * *

面倒見のいいモモンガ幻獣の案内で、俺達は山頂の光のアーチを渡り、海を3つ越えた先の島にやって来た。

「「うわぁ〜……」」

「モモン」

俺達が入植したフィールド、『終焉の夢想郷』は基本的に山の形がファンタジーを極めているんだが、この島は特にすごい。

山頂の着地地点こそ平らなんだが、その着地地点のすぐ下から虹色の水が大量に湧き出てデカい滝になっている。

滝壺の部分は地面がかなり深く抉れているようで、底が見えなかった。

「ここは『墜落の滝』だモン。なんか高い所から落ちる夢はだいたいこの島で見るモン」

「へぇ~」

「……ああ、体がビクッとなって起きるやつ」

「それは落ちて一気に死の海の水に近付いちゃって魂がビックリして目覚めるモン。他の島みたいに、やんわり隣り合ってじっくり馴染めないのがこの島の眠りだモン」

エフォ(EFO) の落ちる夢はそういう理屈なのか……

とにかく夢の幻獣に会うにはここから下山しないといけないわけだが……この山、登り降り出来る所あるか? 足場の下がグルッと滝なんだが?

「この滝に飛び込んだら降りられる?」

「降りられるけど死の海に直行だモンねぇ」

だろうな。

うろうろと回って、一箇所ギリギリ降りられそうな場所を見つけた。……とはいえ、登山家でもない俺達には厳しすぎるな。いくらゲームでも慣れないフリークライミングは出来る気がしないぞ。

「僕の箒に二人乗りして一緒に降りようか」

「頼んだ」

ネビュラを呼んでもいいんだが、モモンガの後に着いていくなら箒の方が良さそうだ。

フッシーの力を借りて、箒に翼が生えて宙に浮かぶ。

その横に、膜を広げて滑空するモモンガ幻獣が並んだ。

「ヒトの子は不便だモンねぇ。多分こっちだモン」

モモンガ幻獣の後に続いて、滝を背にゆっくりと飛んで降りていく。

滝のためにあるような山だな……あの細さであの水の量はおかしい。中にパイプでも通ってるのか? 噴水みたいだな。

そして滝の水が虹色をしているから今まで訪れた島の中でもダントツの派手さだ。

俺達はゆっくりと降下して、森が広がる山裾へと向かう。

森と言っても、島としてはかなり小さいからそれほど深くはない。

俺達の拠点がある島の半分も無いな。本当に滝のためにある島なのかもしれない。

植生も少し違うな……木々の色合いは俺達の島の物と近いんだが、なんかどの木も傾いて生えている。しかもてんでバラバラな方向に傾いていて、たまに途中でぶつかって迷惑そうにこんがらがっている木があった。

モモンガはスイーッと木々の間をすり抜けて、やや大きめの木にペタッと着地した。

俺達も近くの地面に降りる。

「いつもはこの木の洞に……あ、いたモン!」

モモンガがちょいちょいと手招きするのに応じてそっちへ回り込むと……木の洞の中に、周りの木の葉と同じ青緑色をしたミミズクが寝ぼけたような顔で座っていた。