軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ちょっと危険な戦闘ショー

最初に出た感想は『うわ』だった。

よりによって シェイプシフター(それ) かー……

前に戦った奴よりもレベルは低いからなんとかなる……か? まぁ傭兵なんてやってるサーカスの夫婦は俺達よりもレベルは高いだろうから、なんとかなると思いたい。

経験済みの面子がいなかったらどうするつもりだったんだと思うが、 エフォ(EFO) はそういう展開をするゲームだったなと改めて思い出す。

シェイプシフターは額の第三の目で見た相手をコピーするモンスター。

だから、一瞬、魔眼封じの方の魔眼を使おうかと考えて……やめた。

『魔眼封じの魔眼』は、相手の視界を妨害する代わりに、使っている俺の姿が仮に透明化していようと浮き上がって見える仕様だ。って事は、使うと間違いなく俺をコピーしに来る事になる。

つまり……有志wikiにも未掲載な『告死の魔眼』を敵に使われる、それはマズイ。

俺が刹那の合間にその判断を下すと同時、ピエロがおどけた調子を崩さない口調のまま前に出た。

「こりゃまたとんでもないのが入っていたもんですねぇ! お客様方、是非とも瞬きせずにご覧ください! このモンスターの名は『シェイプシフター』。額の目で凝視した相手の姿と力を写してしまう、厄介極まる相手でございますよ!」

細いドレスを着ているピエロの奥さんが、自分も後ろへ下がりながら俺達にも手振りで下がるようにと指示をした。

任せられる……任せた方が良いって判断か。特に反対する理由も無いから頷いて軽く下がる。シェイプシフターとピエロを挟んで反対側にいるキーナも、数歩後ろに下がったのが見えた。

シェイプシフターが第三の目を開く。

視線の先には派手な道化師。

黒一色のヒトガタだったそれは、あっという間に道化衣装へと姿を変える。

湧き上がる、悲鳴混じりの歓声。

即座に短剣を抜く2人のピエロ。

逃げ場のない結界の中で、アクロバティックな打ち合いが始まった。

「さぁ諸君、歴史の復習をしようではないか」

よく通る落ち着いた声は、ニヒルな笑みを浮かべたグリッタランス爺さんの物。

「過去のククロスオーヴ王国、王城において。モンスターが城の者に成り代わり、猛威を振るった事件があったな?」

問いかけに、招待客達が何人も頷く。

「ええ、確かそのモンスターこそ、シェイプシフターだったはずですわ」

「では、これが?」

「確かに一瞬でそっくりに……」

「なんて恐ろしい……」

そんな観客の反応が一段落した所で、ピエロがキーナの方へと声を上げた。

「森女さーん、秋イベントのラリーストライクってやりましたー?」

「え、あ、ちょっとだけ?」

「オッケー、じゃあラリーストライクのコートみたいな壁って【鏡魔法】で作れます?」

「……ちょっとやってみる」

ああ、そういえばラリーストライクのコートも球が内側で反射する壁だったな。

あれを再現するなら【鏡魔法】か。

「【ミラークリエイト】!」

キーナが今まで置いていた【鏡魔法】を解除して、新たに掛け直す魔法の詠唱。

中が見える、大きな円柱状の壁が、魔法によって構築された。

いざという時ヘルプに入れるように、俺達ごとまとめて壁の中だ。

「ありがとうございまーす!」

おかしなイントネーションの謝礼。

その手には、いつ出したのか鮮やかで派手なステッキ。

そしてピエロがステッキをクルリと回しながら踵を打ち鳴らすと、数個の火球が周囲に出現した。

「道化はね、ナイフ投げよりもボールジャグリングの方が得意なんですよねー」

言いながら、ビリヤードの動きを真似て、ステッキで火球を打ち飛ばす。

「森男さーん」

ん、俺?

「矢よりも魔法、球で撃ってもらっていいかなー?」

「……了解」

リクエストに応えて【雷魔法】を球の形で放つ。

ピエロは軽快なステッキ捌きでその雷球を上から叩き……ラリストの試合動画で見た上下に反射し続ける障害物として配置した。

「さぁさぁ、ショーはここ一番の大盛り上がり! 貴族の皆さんは真似しちゃダーメよ! 怪しい物品を見つけたら、必ず城へ通報一択! そしたらピエロみたいな強い冒険者が、こうやってカッコよく片付けてくれますからね!」

高らかな宣言をして、ピエロは歓声の中、シェイプシフターと激突した。

すげぇなあのヒト。レベル差があるんだろうけど、自分をコピーしたシェイプシフター相手に魅せプが崩れないのか。

貴族もピエロが相当余裕があるって分かったんだろう、悲鳴のような声が消えて、やんややんやと極上のエンターテイメントを前にした歓声が上がる。

……と、時折魔法を撃ち込みながら戦闘を見ていると、俺のすぐ横にパピルスさんが滑り込んできてしゃがんだ。

「すみません、ちょっと目隠しになってください」

「……どうぞ?」

目隠し……って事は、位置的に招待客達から姿を隠したいのか。

パピルスさんはインベントリから、素朴な雰囲気の鏡を取り出した。

「シェイプシフターを見て気付いたんです。あれがもしも、新郎新婦のどちらかに成り代わる予定だったなら……既に他の貴族が成り代わられていてもおかしくない」

うわ……確かにそういうパターンもあるな。

俺の体を影に、完全には隠れないにせよある程度隠すようにしながら、パピルスさんは鏡を通して招待客達を確認し始めた。

……それはアレか、キーナが頼まれて作ったっていう、変身を看破する鏡か。

「……ん?」

招待客を端から端へ、じっくり見ていたパピルスさんが……その一点で訝しげな顔になった。

その時──

「ちょっ、それはダメですってぇ!?」

焦ったようなピエロの声に顔を上げる。

戦場の向こう側。

再変身を始めたシェイプシフターが……まっすぐキーナへ顔を向けて、飛びかかっている姿が目に入った。

やっべ!

既にシェイプシフターはキーナの目の前だ。

やむをえん。

魔眼の発動、間に合うか?