軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:悪意を逆手に取る作戦ですわ!

「このまま済ませてはいかん!!」

贈り物の検品を済ませて、最終的に見つかった危険物は……呪物が3個、魔導具は候補も含めて7個、そして封印が1個と、ミミックの卵が1個。後は開けてみたら中に死骸とかが入ってた嫌がらせ系が2個。

ううーん、多いね!

パピルスさんとグリッタランスお爺ちゃんが言うには、なんと言っても若くて人気のある二人だから、嫉妬とかライバル派閥の牽制とかがあるんだってさ。そこへ昨今の敵対組織関係が混ざってきたら、まぁこうもなるよね。

しかもまだ貴族の大人の仲間入りをした直後みたいな年齢だから、舐められてるわけですよ。

なので。

「年若い夫婦であろうと、こんな物を贈ろうが何の効果も無いのだと知らしめねばならん!」

と、お爺ちゃんは言う。

ようはバックに心強〜い味方がいるんだぞ、後ろ盾も伝手もあるんだぞ、って見せてやれば今後が少し安心になるだろうって話らしい。

「お主ら、何か良い案は無いか?」

これもクエストの一環なのかな?

お爺ちゃんの相談に僕ら一同は「うーん……」と頭をひねって……パピルスさんがスッと挙手をした。

「そうですね……後ろ盾と言う意味ではグリッタランス殿が既にいらっしゃいますから充分だとは思いますので、何かあった時に我々冒険者の中でも有力な者が味方になるのだと見せつけてやりましょうか」

どうしてその流れで僕と相棒を見るんだいパピルスさん。

確かにあの二人になんかあったら僕らは飛んでくるとは思うけど、別にトップ層の戦闘勢でもないからそこまで強くないよ。

そんな僕らの内心を華麗にスルーして、パピルスさんはにっこりと笑顔を見せた。

「私からのお祝いに盛り上げ役として手配していた人物ならば、披露宴の雰囲気を壊さずに上手くやってくれるかと。なので、まずはそちらへ協力を要請しましょう」

そうして屋敷へやって来たのは、僕らも知っている人達だった。

* * *

「御紹介に預かりました、本日皆様の御前に出る栄誉を頂きましたのは、『ハニカムサーカス団』より『スペードの道化師』と『蜂のクイーン様』でございます!」

そう、サーカスのピエロさん夫婦が、パピルスさんが手配していた盛り上げ役の人達だった。

『ハニカムサーカス団』は、ピリオノートで人気のエンターテイナーになっていて、こうして呼ぶには伝手とお金がかかるんだって。

ピエロさん夫婦は、今回の作戦への参加を快諾してくれた。後でお礼に知恵の林檎を渡そう、そうしよう。

会場は人気の芸人がやってきたとあって、招待客達は大喜びの拍手喝采。

うん、これなら上手くいきそうかな。

ピエロさん達に協力してもらって、僕らがやろうとしているのは……見世物としての戦闘。

結婚へのお祝いをひと通り述べてから、ピエロさんは検品した贈り物のひとつを取り出して観客へと掲げて見せた。

「さて、皆様。実はこの晴れの日にですね、実に無粋な代物が先程バークル子爵家へと届きまして。高貴なる血を守る役目を持つ方々は特に日頃から警戒されている事でしょう……贈り物を装った、罠の類でございます。……おっと、ご安心下さい。こちら、開けなければ!まだ危険は無い類の物ですので」

普通の贈り物となんら変わらない見た目の包みを、招待客達は『あらあら』という様子で見る。

それは『へぇ~初めて見た』という雰囲気であったり、『こんな所でそんな物を見せて、どうするつもりかな?』という雰囲気であったり、色々。

そんな観客へ、ピエロさんは笑顔の仮面で、悪戯っぽい声色を出して見せた。

「まぁつまり、開けると危険な代物。恐らくは、中からモンスターの類が出てくると思われます。……そして今回はですね、これを、余興として、開けてみたいと思います!」

どよめく会場。

そこへすかさずピエロさんから説明が入る。

子爵家と伯爵家の庭が隣り合っているこの会場。

メインのパーティ会場は伯爵家側の庭で行われているから、柵を挟んだ子爵家側の庭で封印を開ける事。

パピルスさんが持つ強力な防壁を張れる魔道具を使う事と、僕の【鏡魔法】とで中から出てくるモンスターを逃さないようにしつつ、柵の前に城の兵士と冒険者を兼任するゲオルクさんが立つ事で披露宴会場の安全を確保する事。

そして出現した危険な存在は、ピエロさん夫婦と相棒が速やかにこの場で処理する事。

中身が分からないからちょっと危ない賭けではあるけれど、傭兵やってるサーカスさんが二人いて倒せないモンスターは、それこそダンジョンのボスランクになってしまう。

そんな規模のモンスターを若輩夫婦程度には使わないだろうってグリッタランスお爺ちゃんも判断した。

「お若い方も多いので、こういう罠にはどのような脅威が入っているのか、実際目にして知るには良い機会かと思います。話の種にもなりますでしょう」

説明している間に、ピエロさんの後ろ……柵の向こうの子爵家庭では着々と準備が進んでいる。

パピルスさんが魔道具を配置して、僕と相棒が配置についた。

ゲオルクさんはもう仕事モードの顔になって、武器を片手に柵の前にいる。

「さーらーに! この道化! そして麗しきサーカスの団長! さらに噂の謎多き夫婦の本物の戦いを、目のあたりに出来る絶好のチャンスでございまーす!」

自信満々に『ワタシかっこいい人気者です!』みたいな動作をするピエロに、会場からクスクスと笑いが溢れる。

うん、この雰囲気なら大丈夫そうだね。

後は僕らが失敗せずに、中のモンスターを倒せればオッケー。

準備完了。

配置について、パピルスさんは魔道具を発動。

僕は【鏡魔法】をマジックミラーのイメージで内側へ向けて展開しつつ、封印を開封するために小さなテーブルに置いた封印へと近付いた。

「では……イッツショータイム!!」

打ち合わせ通り、ピエロさんの掛け声に合わせて僕は封印を解いた。

弾けるように開く、贈り物の皮を被った悪意。

中から出てきたのは──

シェイプシフター Lv45

よりにもよって、悪意の塊みたいなモンスターが、何の因果かデジャヴを感じる面子が揃った会場に現れた。