軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:危険はこれにてフィニッシュですわ!

正直、期待していなかったと言えば嘘になる。

相棒からシェイプシフターとの戦闘がどんなものだったか聞いた時、僕の脳内を駆け巡ったのは古今東西の伝説やおとぎ話の類だった。

目に、視線に、特別な力を持つ怪物を、あの手この手で打ち倒す物語。

そう、鏡。

ギリシャ神話のメデューサは、鏡のように磨かれた盾で自分の姿を見て自分が石になった。

じゃあ、シェイプシフターが姿を写し取るその時に鏡を見せたら、一体どうなるんだろう?

『お前は誰だ』と問う瞳に、己の姿を見つめさせる。

まるで、『鏡に向かって「お前は誰だ」と問い続けると発狂する』なんて都市伝説めいた噂のように。

グルリと僕の方を向いて、真っ直ぐに飛び掛ってくるシェイプシフター。

僕は俊敏が死んでいるから、自分から試しに行くつもりは無かったけど、向こうから来てくれたなら話は別。

ちょっと僕をコピーしようとしてくれないかなーなんて、期待していなかったと言えば嘘になる。

額の目に、目を逸らせない距離で鏡を突きつけるイメージで!

「【ミラークリエイト】」

……効果は劇的だった。

声にならない悲鳴を上げて、黒い影のような体が形を失いのたうち回る。

おお……こんなにクリティカルするとは思わなかった。

でも、疑問は確信に変わる。

シェイプシフターは、鏡が弱点なんだ。

以前、鏡の中にいたシェイプシフターは、きっと今みたいにして誰かが鏡を見せて戦闘不能にした。でも強くてトドメを刺せなかったから、そのまま鏡の中へ放り込んで終わりにした。

そうやって、僕が考察に思考を割いている内に、事態はピエロさんが収めてくれていた。

シェイプシフターが鏡で自分を見てのたうち回った所は、皆バッチリ見ていたからね。

「皆様、覚えておいてくださいねー! シェイプシフターには鏡を見せろ! この学びを持って、本日のショーの締めといたしましょーう!」

鮮やかにトドメを刺すピエロさん。

消滅するシェイプシフター。

観客からは拍手喝采。

そして反対側にいた相棒が、僕の方へと駆けつけてくれた。

(大丈夫だった?)

(うん、ガン見されただけで攻撃されてないから、なんともないよ)

(良かった。魔眼間に合ってなかったからちょっと焦った)

あ、使わないつもりだった魔眼、使ってくれてたんだ。

嬉しい、好き。

* * *

シェイプシフターを無事に倒して、僕らは再び子爵家の屋敷の中へと戻って来た。

「実に良い余興であったぞ! 企みなどお見通しで対応出来る伝手もあると知らしめ、尚且つ披露宴に招いた親しい者達への注意喚起も出来た! 言う事なしじゃ!」

上機嫌なグリッタランスお爺ちゃんに、お茶とお菓子をご馳走になりながらお褒めの言葉を貰った。

お爺ちゃんは思惑が上手くいった事ももちろんだけど、今回パピルスさんが呼んだサーカスの2人が相当お気に召したみたい。

なんといっても傭兵が兼業だから、芸人でありながらこういう不測の事態へも対応してくれるという、貴重な人材なんだって。

「予約は早めに入れていただけると助かります」

「遠征と被る事もありますんでー」

「うむ、覚えておこう」

おおー、人脈が繋がった。

繋いだ当人のパピルスさんは満足そうに後方腕組みで頷いてる。パピルスさんは一体どこを目指しているんだろう。

そして今回はクエスト扱いの依頼だから、もちろん報酬がやってくる。

「先程ロナウドと話をしてな、後で改めて挨拶はするが、まずは先にお主らへ渡しておいて欲しいとコレを預かった」

【バークル子爵家の小勲章】…品質☆

バークル子爵家に多大なる貢献をした証。

受け取った本人の所有扱いになっていれば、一部を除くNPCの好感度が僅かに上昇する。

手放すとバークル子爵家からの好感度が大きく下がる。

あ、お貴族コレクション。バークル子爵家もゲットだ!

そして、披露宴の問題を対処したって事でバークル子爵家からは以上だけど。お爺ちゃんの御要望にパーフェクトな対応が出来たからか、もうひとつお爺ちゃんからの個人的な報酬が貰えるみたい。

「最初はこれを引き出物にする予定だったんじゃがなぁ……儂の目が光っとると分かるようにしたら、ちと若い2人の結婚には似合わん代物になってしまってな……せっかくじゃから受け取ってくれ」

【祖父の横顔のカメオ】…ユニークアイテム

孫馬鹿と言うなかれ、聖人の系譜は注目を浴びるものなのだ。

所持していると、開拓神からの好感度が僅かに上がる。

お爺ちゃーん! 流石にお爺ちゃん本人の横顔カメオは孫の結婚の引き出物には向かないよ! 作る前に気付いて!

ユニークアイテムとしては珍しい事に、なんと参加した全員がひとつずつ貰えたのは嬉しい誤算。

……でもコレ持ってたら、お爺ちゃんの強火ファンみたいにならない? 変な誤解を生みそう。

──クエスト『結婚祝いの検品依頼』をクリアしました。

うん、システムでもクエスト完遂が出たね。

これでめでたしめでたし……の、はずなんだけど。

さっきシェイプシフターと戦ってた時に、パピルスさんが気になる物を見たらしい。

「以前そちらの森女さんに作っていただいた『変身看破の手鏡』を使い、招待客に成りすましがいないか確認をしまして……招待客は問題なかったのですが……その時、敷地の外に怪しいモノを見たような……」

「怪しいモノ?」

「……人形、のようでした。ヒト……ヒューマンと同じくらいの大きさの。それが道を歩いているように見えた気がしたのです」

パピルスさんが言うには、等身大の球体関節人形っぽかったらしい。鏡に映った姿は、服を着ていなかったとか。

それが一瞬チラッと見えただけで、鏡から視線を上げた時にはもう見失っていたんだって。

鏡に映った遠くの景色って、同じ場所探すのにちょっと手間取りそうだもんね。

「貴族街で服も着ていない人形が歩いている所など見たことが無いぞ?」

「ええ……その時も、特に通りが騒ぎになったりはしていませんでした。なので、鏡を介さなければ普通の姿なのかもしれません」

見間違いじゃなければ、確かにめちゃくちゃ怪しい。

でも残念ながら、一瞬見えただけの事だと、それ以上の情報は出なかった。

これもまた、地道に情報集めないといけない内容なのかな?

と、なると『変身看破の手鏡』も増やしたい所。

これは早めにパピルスさんのお店で相談した方がいいかもね。

この後は、披露宴会場に戻って、お祝いの続きを楽しんで終了。

終わってから少しお話したシャーロットお嬢様とロナウド君は、とても幸せそうだった。

なお、引き出物は可愛くて高級感のある花籠と焼き菓子でした。

こういうのでいいんだよ、こういうので。