軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:ゲコゲコ鳴り響く田舎の村

空飛ぶドラゴンタクシーに乗って、やって来ましたゲコリン村。

……違った、えっと……『ゲコリン沼の船村』

絶対カエルがいる。

僕はそう信じてここまで来ました。だってゲコリンだよ?

バッサバッサとドラゴンが羽ばたく音を聞きながら、乗っていた繭がモフッと地面に着地する。

……あー、もう聞こえる。

ゲコゲコケロケロ鳴いてる声が聞こえるー。

カワイイカエルにいっぱい会えるかなー、楽しみ。

繭からよいしょっと外に出ると、そこにはもうパピルスさんがいた。

「お疲れ様でした」

「楽しかったです」

「おや、それならば是非こちらのアンケートにお答えください」「あ、はい」

すかさずアンケート用紙が出てきた! すごい!

そして僕らがアンケート用紙に気を取られてる内に、パピルスさんが角刈り雀さんにドラゴンタクシーの料金支払ってた!

「えっ、あっ、僕らが払いますよ?」

「いえいえ、今回の作戦の必要経費ですからお任せください」

「うええー!?」

「……さすがに心苦しいんですが」

「でしたら今後ともうちの店をご贔屓にお願いします」

「諦めとけ。これがパピルスのやり口だ」

「「ええ〜」」

こうやってお得意様を増やしてるんだ!

やり手の商人怖い!

「またお願いします」

「時間が合えばな」

「ありがとうございましたー」

「……ありがとうございました」

角刈り雀さんは、再びドラゴンにまたがって去っていった。

「では、村に向かいましょうか」

* * *

ドラゴンの着陸地点は沼のほとり。

パピルスさんが出してくれた小舟に乗って沼の上を進んでいくと……そう遠くない所にマングローブみたいな木が群生しているエリアに入った。

リアルのマングローブは海水と淡水が混ざる所に生えるはずだから、形をモチーフにしてるだけの別物なんだと思う。 サイズもそこそこ大きいし。

やがて森の中に、ひときわ大きなマングローブっぽい巨木が現れた。

「わぁー、でっかい」

「……すげぇな」

「あの木を中心にした一帯が『ゲコリン沼の船村』ですよ」

あ、本当だ。

大木の周りに舟がいくつも浮かんでいる。

舟は上に茅葺き屋根の家が建てられていて、住民は船の上で暮らしていた。

「……防壁は無いんですね」

「はい、ここは防壁の無いタイプの開拓地です」

へぇー、面白ーい。

感心して見ていると……沼の上をスイーッと近付いてくる舟がひとつ。

舟……舟? どう見ても木製のタライに乗っているそのヒトは、虚無僧と神主を足して二で割ったような格好をしたエルフの男性だった。

なんでエルフって分かったかっていうと、頭に被ってる籠みたいなやつの左右に穴があけてあって、そこからエルフの耳が飛び出てるから。

タライの上であぐらをかいているそのヒトの前には、大きな木彫りのカエルが置かれている。

「お邪魔します『 節奏(せっそう) レンジュ』さん」

「ようこそいらっしゃいました……パピルスさん、森夫婦さん」

「えっと、お邪魔してます」

「……はじめまして」

淡々とした男性の声は、丁寧に挨拶をしてくれた。

「何やら不穏な御用向があるとはいえ、拙僧の開拓地へようこそ……ここは『守り神ゲコリン』を崇めて暮らす村でございます」

「『守り神ゲコリン』!?」

「はい、これです」

そう言いながら、節奏レンジュさんは木彫りのカエルにポンポンと手を当てた。

守り神!

なんか田舎の村の土着信仰って感じ!

「やっぱりここってカエルいるんですか?」

「あー……いるといえばいますし、いないといえばいませんな」

「?」

どういう事?

僕が首を傾げていると、節奏レンジュさんは袖を左手で押さえながら右腕を沼へと突っ込んで……ズボッと丸っこい魚のような生き物をひっぱりあげた。

「この沼にいるのはこちらになります」

ゲコポウル Lv25

それは、カエルにオタマジャクシの尻尾が生えたままのような……でもカエルの成長過程と違って前足はあっても後足が無い、カエルの上半身とオタマジャクシの下半身をくっつけたようなモンスターだった。

「……なんだこれ」

「カエル……じゃない!?」

「左様。カエルのようで、カエルでないのです」

「結局、ここからカエルに成長したんですか?」

「拙僧の知る限り、しませんでしたなぁ」

節奏レンジュさんはビチビチしていたゲコポウルをそっと沼へ戻した。

「鳴き声もカエルですし、カエルのように虫を食べるのですが……カエルでない」

「8割くらいカエルなのに……」

「……哲学か?」

「なので、拙僧が『ゲコポウルが完全体になった存在』という言い伝え、『ゲコリンの伝説』を作り、沼と村の守り神として祀ってみました」

「あ、そういう?」

「……ゲコリンが実在するわけではない?」

「伝承の類ですな。ゲコポウルがいる限り、いるかもしれませんし、いないかもしれないのです。住民NPC達が守り神として崇め、村の名産として木彫りのゲコリンを作っております。ここはそういう村です」

話をしながら、節奏レンジュさんのタライと一緒に舟を進めて大木へと近付いていく。

住民NPCの住む舟に近付くと……舟に彫られたカエルの模様がハッキリと見えるようになってきた。

んー、割とシンプルな住民の服にも水とかカエルをモチーフにした刺繍がされてて雰囲気が統一されてる。面白い。

家が無い舟に乗ってるヒト達はカエルモチーフが無いから外からのお客さんなのかな。分かりやすいね。

そして舟とかマングローブっぽい木の根っことかに、ゲコポウルが乗り上げてのんびりと過ごしているのがチラホラ見えた。

水から出ても平気なんだ……猫だらけの地域の野良猫みたいな勢いでゲコポウルがいる……そしてゲコゲコ鳴いてる……煩くないのかな? もう慣れちゃってるのかな?

「……ゲコポウルは獲って食べたりします?」

「いえ、ゲコポウルは食肉をドロップしませんでしたので……ノンアクティブな事もあり完全に共生しております」

試しはしたんだ。

でも食べないならゲコポウルがこんなにのんびりしてるのも納得。……たまに村の子供に水に向かってぶん投げられてるけど。

村の食料は沼で釣れるジェントルヒゲナマズ、野菜はマングローブみたいな木に依存して育つヤドリアケビの実と、レンコンみたいな野菜がメインらしい。

そんな観光案内を聞きながら、僕らは村の舟が集まっている大木の側までやってきた。

「転移オーブはこちらです、どうぞ」

節奏レンジュさんに促されて、大木につけられた足場を上る。

転移オーブは、開拓主の節奏レンジュさんがエルフだからなのか、大木に半分埋まった状態で、周囲を木彫りのカエルに囲まれ祠のようになっていた。

「……建物の中じゃなくて大丈夫なんですか?」

「ええ、いざとなれば住民は家ごと避難できますので。オーブが壊れた所でそこまで困らないのです」

「へぇ~」

「突然使えなくなると仕入れや商品の搬入の時に驚きますけどね……」

苦笑いするパピルスさん。

でも住民が家ごと避難出来るのは面白い運営方針だね。

家の舟にはちゃんと帆があって、住民NPCはみんな【風魔法】と【水魔法】を習得しているんだって。

「このくらいの規模で穏やかに暮らす分には問題ありません。拙僧の村は、これでよろしいのです」

うーん、穏やかな田舎の村って感じ。