軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:チャーター便で行く空の旅

「……連絡つきました。今日は時間があるそうなので、すぐに行けます」

「おおー、ありがとうございます」

「……すいません」

俺達は、『ゲコリン沼の船村』っていう開拓地に行くことになった。

……とはいえ、かなり遠い所らしくて、地図を片手に陸路を行くと数日かかってしまう。俺達夫婦だけならそれでもいいんだが、パピルスさんと合同でちょっと実験みたいな作戦を試してみるだけで、そこまで日数をかけるのはちょっと割に合わない。

なので、パピルスさんの伝手で空路を行くことになった。

「まずは『サウストランク』へ行きましょう。そこで送ってくれる方と落ち合います」

「はーい」

「……了解」

勝利の女神の聖女さんには、作戦完了後に結果を伝える事になった。

パピルスさんの街へ転移して、案内されるまま街の外へ出る。

すると……

「よう」

「『角刈り雀』さん、今日はよろしくお願いします」

防壁の外、背の高い森の木々に囲まれた広場には、そこそこサイズのドラゴンと……髪型が角刈りの、デカくて厳つい男の雀獣人がいた。

雀獣人は見た事がある。秋のラリーストライク大会の優勝者だ。って事は、一緒のドラゴンはその時の景品か。

ドラゴンは緑色のオーソドックスなドラゴンで、1人乗り用の鞍を背負っている。リアルな感じの厳ついドラゴン。大きさ的には3人までなら背中に乗れそうだ。

角刈り雀さんは、俺達に顔を向けて軽く手を上げた。

「森夫婦はお初だな、『角刈り雀』だ。ピリオ住みの戦闘メインでそこら辺飛び回ってる事が多いからあんまり会わないかもしれんが、まぁよろしく」

「はーい。森女です、よろしく」

「……森男です」

「おお、マジで匿名プレイしてんだな」

パピルスさんは、謎の感心に頷く角刈り雀さんに苦笑しながらインベントリから大きな虫の繭を取り出した。

アイテム名は【大繭の運搬袋】。

繭はワゴン車くらいのサイズをしている。

「森夫婦さんはこれに乗ってください」

「それをうちのドラゴンが掴んで飛ぶ。そんで現地まで連れて行く」

「おおー」

「……なるほど」

ドラゴンは慣れているのか、置いてある繭を色んな角度から眺めて掴む場所を確かめているようだった。

その仕草が琴線に触れたのか、キーナがそわそわとドラゴンを見つめながら角刈り雀さんに質問する。

「ドラゴンちゃんはなんて名前ですか?」

「ん? ああ、『ライス』だ」

「「ライス」」

……ドラゴン、食べるのか? 米。

* * *

繭の中は特に何も無い、ふかふかの壁に包まれた白い空間だった。

綿のような糸を掻き分けて中に入れば、入り口は自然に閉じた。

隙間から差し込む日の光で中は明るい。

壁の一部を少し掻き分ければ外も見られる。

「面白い! 柔らかいゴンドラって感じ!」

「これなら揺れても安全だな」

パピルスさんは先に村へ転移したから、繭の中は俺と相棒だけだ。

「じゃあ出発するぞー」

「お願いしまーす!」

「……お願いします」

返事をすると、繭の近くで大きな質量が動いた気配。

そして、繭の一部が少し歪んだ。

ドラゴンが繭を鷲掴みにしたんだろう。繭の中の空間にあまり影響が出ないように手加減されてるのがわかる。

そして、バサッと羽ばたく音と同時に浮遊感。

「わー、飛行機みたいな感じがする」

「おお……結構傾くな……」

キーナが繭の一部に手を差し込んで、小さな隙間から外を窺う。

「わぁー、飛んでる飛んでる!」

「……どれ」

俺も同じように外を確かめた。

……結構高空を飛んでるな。かなり下、森が緑色の絨毯みたいに見えた。

そして速い。

やっぱり空路は出せる速度が違う。

「この繭いいねぇ〜、ドラゴンに運んでもらうのに最高じゃない?」

「うん。何かで大きく揺れても、壁も床も天井も柔らかいから安全だ。NPCを運ぶにも良いかもしれない」

「何の繭なんだろうね?」

「……さぁ?」

そういえば何の繭なんだろうな?

繭って事は、このサイズの芋虫がいるって事か……

「パピルスさんが持ってたって事は、どこかで売ってるのかな?」

「かもしれない」

「あ、なんか大きな花が見える!」

「どれ? ……ああ、あれか。……デカいな」

「あっちは火山かな?」

「ぽいね」

「何あのプリンみたいな山ー! めっちゃ大きくない?」

「……おおー」

のんびりと会話をしながら、ドラゴン鷲掴みの空の旅はあっという間に過ぎていった。

* * *

「……デート、だな。確かに」

「グゥン……」

繭を鷲掴んだドラゴンとその主の角刈り雀さんの呟きは、俺達には聞こえなかった。