軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ピリオノートでアヤカシ探し

笹のオバケを確保した夾竹桃さんは、イタコの仕事を果たしたグミを散々撫で転がすと、満足して帰って行った。

……うん。とりあえず俺達はこの後の用事は無い。

「どうする? グミのレベル上げ行くか?」

「んー……それより、ピリオのアヤカシ確認クエスト先にやっちゃいたいかな」

「そっちか」

日ノ出桜の都からピリオノートに来ているはずのアヤカシが、元気に過ごしているかの確認だったな。

「じゃあピリオ行くか」

「うん。……変装はいらないよね?」

「……日ノ出桜の方では変装してなかったし……無しでいいんじゃないか?」

「オッケー」

変装してると逆に目立つしな。

スヤスヤと昼寝モードに突入したグミをキャトナに預けて、俺達はピリオノートへと転移した。

* * *

ピリオノートの転移広場に降り立って、まずは【感知】スキルで周りを確認する。

最近の習慣というか、癖みたいなものだ。

キャトナ達がうちに来てそこそこ経った。

森夫婦の変装状態で街に行ったのは数える程しか無いが、今の所は次の刺客がこっちに敵意を向けていた事は無い。

そしてもちろん、今のように変装無しの状態でそんな気配を感じた事は一度も無い。

安全確認は良し、と。

とりあえず転移広場はヒトが多いから、さっさと広場の外へ移動した。

「さて、どうやって探す?」

「んー、教えて貰ったおまじないを使って痕跡を探すんだろうけど……とりあえずプレイヤーの少なめな所に行ってみよう」

ピリオノートでプレイヤーが少なめとなると……NPCの住宅街あたりか。

「じゃあそっちの方ふらっと歩くか」

「うん」

手を繋いで、細い路地の方へと足を向けた。

ピリオノートの雪はほとんど溶けていて春が近い。風も柔らかくて涼しい。

そろそろ防寒装備が必要なくなりそうだな。

ゲーム内時刻は昼食の支度をするような頃合いで、あちこちの民家から食事の香りが漂ってきた。

「……昼どうする?」

「どうしよっか? パン屋さんで買って食べる?」

「それもいいか」

何も考えずに出てきたが……料理をするのに自宅に戻っているNPCが多いんだろう、住宅街は道行くヒトが少なめだ。

「とりあえずこの辺でやってみる?」

「いいよ」

両手で『コンコン窓のおまじない』を作り、そこを通して周りの景色を見る。

……特に、変わったモノは見えない、か?

いや……待て。

コンコン窓を通した時だけ見える、糸のようなモノを見つけた。

近付いて、そっと手を伸ばす。

道から外れた木の下。足首くらいの高さに、横に張られた蜘蛛の糸のような物。

……そっと指先で弾いてみる、と……大量の葉っぱがバサッと頭めがけて降ってきた。

「ウブッ……」

「え、どしたの?」

「……許さん」

「何が??」

まぁ許さんは冗談だが……しょっぱいトラップに引っかかってしまった。

気を取り直して探索を続けると、キーナが「あ!」と声を上げる。

「なんか小さい足跡みたいなのあった」

「どれ? ……ああ、それ。追いかけるか」

頭の葉っぱを払い落として、コンコン窓の中で光って見える足跡を追跡する。

途中に何度か同じ糸のトラップが仕掛けてあるのを飛び越えて避けた。

……これがあっちの街から来たアヤカシの仕業なら、だいぶ元気にやってるぞ。安心していい。

二人で小さな足跡を追いかけると……いつの間にか、図書館近くの記念公園までやって来ていた。

そして聞こえてきた、聞き覚えのある声。

「だぁーから、順番だって言ってんだろ! 描いてるのは俺しかいねぇんだって。二つも三つもいっぺんに仕上げらんねぇの!」

思わずキーナと顔を見合わせた。

(本屋の声だ)

(あー、青い鳥の本屋さん?)

(そう)

声の方向は、足跡の向かう先。

目で追いかけると、すぐ前にある太い木の向こう側らしい。

俺達は、なんとなく木の陰からそっと向こう側を窺った。

本を満載した屋根付き荷車。

その横にいる、軽装の鳥獣人。

青い翼を持つ店主は、ずり落ちかけた眼鏡を直しながら渋い顔で折りたたみ式の作業台に向かっている。

「何? 自分はもっとムキムキだって? お前、どう見ても表面ツルツルの完全球体だろうがよ?」

店主がそう言うと、作業台の隅に乗っている黄色の球体が抗議するようにポヨンポヨンと跳ねた。

他にも、たぶんアヤカシなんだろう変わった形のモノが周りにゴロゴロいる。

……今はこの辺りは閑散としているとはいえ、屋台の周りにヒトっぽいのが2、3人いるのにそんな堂々と出てきていいのか?

と、思ったが。

(……桃騎士がいる)

(ん? それって絵本の?)

(うん、屋台のあたりに……赤リボンちゃんもいる)

(んん?)

そうやってコソコソと観察していると……小人のようなアヤカシが1体、店主に紙巻きタバコを差し出し、そのついでのように俺達の方を指差した。

「ああ? ……なんだ客か。前に来たことあるな? こいつらの事は気にすんな、買い物なら遠慮なく見てけ」

……いや、たぶんその周りの方に用事があるんだよなぁ。