作品タイトル不明
キ:ぶっきらぼうなパパ
「お初にお目にかかります。吾輩は『バトルブーツを履いたニャンコ』にございます。吾輩が生まれるきっかけとなられたお二人には、是非一度お会いしてお礼を申し上げたいと思っておりました」
「「……わぁ」」
深々と僕らに向かって頭を下げた、トゲとか刃とかがついた金属製ブーツを履きこなしている厳ついニャンコ。
この子は、僕の問い合わせを受けて青い鳥の本屋……『ロワゾ・ブルー』さんが描いた『長靴をはいた猫』のアレンジ作品に出てくるニャンコがアヤカシとして生まれた姿なんだって。
「書き上げて製本した所で『ゲーム内で出版すると、公式や他プレイヤーが使う可能性があります』みてーな承諾確認が出たからおかしいとは思ってたんだがよ……」
ロワゾさんは、僕らがアヤカシの依頼で来たとわかると、渋い顔をしながら色々と話してくれた。
「和風の街がムービーに出た直後に、わらわら出てきやがって……いきなり『パパ』だぞ? 身に覚えもねぇのに認知迫られるとかマジでビビんだよ」
「またまたぁ〜身に覚えはあるでしょお? 丹精込めて描いてくれたんだからさぁ〜」
「そうですよお父様」
「我々も描いてくださいよパパー」
「パパー」
「パパはやめろ」
なるほどね~、和風の街からやって来たアヤカシちゃん達も、絵本っていう媒体が羨ましくてロワゾさんにくっついてるわけだね。
僕が本を書いた時にそういう注意事項が出なかったのは、ゲーム内に実在してる子を書いただけだったからかな?
フッシーは僕の所にいるし、結晶の猫幻獣ちゃんは洞窟でのほほんとしてるだろうし、ホライゾンクロウとフクロウちゃんは生まれ変わって元気にやってるからね。
空想に命が宿ってアヤカシになってる感じだから、その辺は除外されたんだと思う。
そうじゃなかったら、ここにデフォルメフランゴ君がいないとおかしいからね。
……たぶん、リアルの童話をそのまま使っても流行らないのは、この仕様が理由かな? 著作権切れのモノでも、一応モチーフ扱いでオリジナルを作ってねって事なのかもしれない。
エフォ(EFO) に関係ない他作品の使用とかは、たぶん書いた時点で警告が飛びそう。
そういえば、MMOによくある完全にそっくりな他作品なりきりって エフォ(EFO) で見てないし。公式ムービーでそんなの出てきたら困るもんね。
そんな感じで、童話をアレンジしていたロワゾさんは、作品がピリオノートの子供達にかなり人気があって、それでアヤカシがそれなりに生まれているみたい。
日ノ出桜の都から来たアヤカシ達とも意気投合して、洋風なアヤカシ達はそれなりの数になっていた。
ロワゾさんの作品から生まれた、子供っぽい容姿の童話のキャラクター達。
和風の都からやってきた、『洋風文化から生まれましたー』みたいなアヤカシは、妖精と妖怪の中間みたいな容姿をしている子が多い。ネグリジェみたいなドレスに蛇の髪をした子とかね。
僕は妖怪にあんまり詳しくないんだけど…… エフォ(EFO) の妖怪はオリジナルが多そう。全然仕様がピンとこない子もちらほらいる。
「僕らは日ノ出桜の都のアヤカシ達から、こっちのアヤカシが元気にやってるか見てきて欲しいって言われて確認しに来たの」
「おお! さようでしたか」
「元気でやっておりますよぉ、このように、頼りに出来そうなヒトの子も捕まえましたし」
「なんでだよ。和風の方みてぇに街の裏側作ってそっちでのんびりすりゃいいじゃねぇか」
「我々ではまだ知名度が低くて、力が足りないのですぅ」
そんな洋風アヤカシ達の目下の悩みがコレ。
大親分になれるようなアヤカシがこっちにいないから、落ち着ける住処が無いんだって。
「『アヤカシが住む裏ピリオノート』みたいな物語を広めたら出来たりしないの?」
「……あ」
「おい」
「あ、それだ!」
「ヒトの子ナイスアイデア!」
「パパー! それ先に書いてー!」
「パパー!」
「あーもう! わーったから! リクエストは順番にしろって言ってんだろ!」
……いらんこと言ったかな?
でもロワゾさん、渋い顔で頭掻きむしってるけど、やらないとは言わないんだよね……
でもあんまりちょっかいかけられ続けたら執筆が進まなさそうだったから、こっちのアヤカシちゃん達にも『誘拐事件が多いから、それを助けるアヤカシ!みたいな事をすれば知名度が上がるかも』って提案をしてみた。
……そうしたらアヤカシちゃん達の……特に童話モチーフのヒーロー達の目が輝いた。
「素晴らしい!」
「それですよそれ!」
「助けて活躍して人気もアップ!」
「そしたら強さもアップ!」
「人気のあるヒトの子も我々を欲しがってさらに人気がアップ!」
「ついでにパパの名誉もアップ!」
「パパはやめろ」
アヤカシちゃん達は屋台の影で固まってゴニョゴニョと作戦会議をすると、ワーッと走り出すようにして姿が消えて行った。
コンコン窓のおまじないをしたら、キャッキャとはしゃぎながら遠ざかる後ろ姿がチラッと見えた。
「はー……やっと静かになったな。今の内に書くか……あんたらありがとな」
「いえいえこちらこそ」
「……固まってたおかげで見つけやすかったですし」
「そうかい。……よければたまにあいつらとも遊んでやってくれ。さぁて……裏側だったか? どんな感じにしてやろうかね……」
言葉と声色とは裏腹に、ロワゾさんはなんだか楽しそうな顔をして作業台に新しい紙を広げていたのだった。
「あ、すいません。絵本持ってないやつ買います。『バトルブーツを履いたニャンコ』とか」
「……全部そこだ、探して持ってこい」
「……コンプするつもり?」