軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:呪術士が語る、ある蛇さんの話

黒マントについての話をひと段落させて、俺達はもう一度キャトナを部屋に呼んだ。

呪いの声を聞く……ようは、呪いの元になっている想いがどんな内容なのかを確認するって事だ。

その想いを解消させてやれば、呪いは呪いとしての力を失う。

生まれなおす前のベロニカがそうだったな。

あの時は願いを叶えた事で、呪いが祝福に反転した。

それと同じ事が出来れば、キャトナは呪いから解放される。

「何回もごめんねー、じゃあちょっと詳しく確かめるからねー……【もしもし、ご用件は?】」

死者の呪いを相手にした時の【死霊魔法】と【呪術】の違い。

【死霊魔法】は悪霊として呼び出した後に、プレイヤーが自分で説得をして話をしてもらわなければ事情が分からない。そして悪霊本人も、記憶が朧気で肝心な事を忘れている場合がある。

だが呪術士は、問答無用で呪いの声を聞けるし、【呪術】のレベルが上がれば呪いのきっかけとなった過去を見るような事が出来るらしい。

「ふむふむ……」と背中の鱗を見ていた夾竹桃さんだったが……唐突に「ブハッ!」と吹き出した。

「そっかー! うん、まぁそーだよねぇええー! ……はい、じゃあ今から、とある蛇さんの昔話を始めまーす」

なんだその反応……

困惑する俺達を気にせず、夾竹桃さんは話し始める。

「えー、ある所にー、そこそこ大きく立派に育った蛇さんがいましたー」

キャトナがふんふんと頷く。

「蛇さんは、ある日とっても大きくて美味しそうな卵を見つけましたー。大きさは、自分が丸呑み出来るギリギリのサイズかなー? 近くに親の姿も見当たらないし、蛇さんはこれ幸いと卵を食べてしまいましたー」

夾竹桃さんが手をパクパククネクネと蛇っぽく動かすから、キャトナはそれをソワソワと目で追いかける。

「ところがー……その卵はー、見た目と大きさに見合わず、めっちゃ重かったのです! それはもう、岩のように重かったのです! あんまり重すぎて、蛇さんはそこから動けなくなってしまいましたー」

腹を膨らませてジタバタする蛇の姿が脳裏に浮かんだ。

「そこへ卵の親が帰ってきましたー。……なんという事でしょう! 卵の親は、相手を石にする能力を持つコカトリスだったのです!」

あー……だから卵が重かったのか……このゲームのコカトリスは、卵が岩みたいになってるんだな。

「コカトリスは当然ブチ切れてー、蛇さんを石にして倒してー、お腹を割って卵を助け出しましたー。当然蛇さんは死んでしまいましたー」

アチャーって顔になる俺達。

「死んでしまった蛇さんは思いました。『チクショウ、よくもやったなー! お腹が重くなければお前のことだって食べてやったんだからなー!』、蛇さんはコカトリスを恨みました」

「逆恨みじゃん!」

「アヒャヒャ! そーだねー!」

これはひどい。

「『コカトリスを食べないと死んでも死にきれない!』、そんな未練を抱いていた蛇さんは、悪い死霊使いの魔法に捕まって隷属させられてしまい、悪霊の呪いとして可愛い女の子に埋め込まれたのでした。いまここ!」

うわぁ……

なんとも、しょーもない経歴の呪いだ。

キーナは苦笑いしているし、キャトナも複雑そうな顔で自分の肩の後ろに目線を向けている。

「でも恨みの対象がコカトリスで良かったよー? だって『ヒトの子許さん』ってタイプをヒトの子に埋め込んだりしたら、タダでは済まなかっただろうしさー。このくらいの相手だったからこそ、この子は無事だったわけでー」

まぁそうなんだよな……しょーもない呪いだからこそ、子供でも耐えられたんだろう。

……かつてのベロニカの願いと比べると温度差が酷い。

「と、いうわけで……この呪いを解くには『宿主がコカトリスの肉を食べる事』が必要になりまーす」

「思ったより簡単!」

「……コカトリスは探さないといけないけどな」

「まぁでも解呪方法としてはベリーイージーだよー、良かったねー」

そうだな、分かりやすいし。

そして呪いが安定している理由もなんとなく分かった。この蛇……いつかコカトリスを食ってくれるならマジで誰でもよかったんだろう。

だから子供にも力を貸したんだ、『強くしてやるから、いつかコカトリス食えよ』くらいの感じで。

「じゃあコカトリス探そっかー」

「あ、素直に狩りに行く感じー?」

「だって、キャトナちゃんを苦しめたりせずに力を貸してくれたのは事実だし……そのおかげでこうやって助かったんだから、『死ぬ前にあれが食べたい』って願いくらいは叶えてあげるよ」

「……俺達冒険者が依頼を受けて獲物を狩って肉を取ってくるのなんて普通の事だしな」

「そーそー」

そんな俺達の会話を聞いたキャトナは、少し驚いた顔をした。

なんだ、モンスターの肉だから無理だと思ったか? そんな事はないぞ。

呪いの安定と詳細が知れたから後は俺達でどうにか出来る。夾竹桃さんはこれで帰る事になった。

「……ありがとうございました」

「お仕事の依頼料は何がいい?」

「あ、じゃあ前にフリマで安眠グッズ売ってたよね? あれあったら少し欲しいなー。呪われてるNPCって、悪夢にうなされて寝不足になる事が多いみたいだからー」

なん……だと?

俺達は撤収する夾竹桃さんへ、ドリームキャッチャーと安眠のお香を大量に持たせて送り出した。

夾竹桃さんはその量に『田舎のじーちゃんばーちゃんの土産野菜かよ』とゲラゲラ笑っていた。

そしてその後で、子供たちの寝室にドリームキャッチャーとお香を設置。さらにジャックへ、俺達がいない間は夕食後にオヤスモーミルクを温めて飲ませるように頼んでおいた。