軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:怖い夢の中で告げる。

落ちるような感覚から、フワリと足が地面を踏みしめる。

……うん? 思ってたのと違う雰囲気の場所に出たな?

今回捕獲に使った粉の原料のキャベツはこういう説明だった。

【迷宮夢のキャベツ】…品質★★

食べると葉の間を彷徨う夢を見る。抜け出せるまで目覚めない。

だからてっきりキャベツの内側みたいな緑々しい所に出るかと思ったが……俺達が降り立った夢の中は、薄暗い土壁の通路のような場所だ。

……他のアイテムと混ぜて【調合】した事で変質したか?

確か作った粉薬の説明は……

【迷宮夢の粉薬】……品質★★★

吸い込むか飲むかすると睡眠の状態異常にかかり、迷う夢から抜け出すまで目覚めなくなる粉薬。

ああ、うん。こっちには『葉の間』とは書かれてないな。

隣のキーナも首を傾げていたが、誰かの声が聞こえた気がして、すぐにインベントリからペタの卵を取り出していた。

(とりあえずおチビちゃん探して進んでみる?)

(だな)

卵から出てきたペタには反撃だけ指示をして、見通しの悪い道を進んだ。

夢だからなのか、光源がなくても少し薄暗いだけで視界に支障はない。

……少し進んだ所に、鉄格子付きの扉があった。

中から、ヒソヒソと話し声が聞こえてくる。

俺は念の為、光学迷彩マフラーのスイッチを入れてから、格子窓を覗き込んだ。

中は……整えていない荒い石材に囲まれた小さな空間。

そこに……小さな子供が3人。大きいのと小さいのが2人。

3人とも、サビ猫の耳と尻尾が生えていて、ミィミィと泣いている。

──『パパァ……ママァ……』

──『おねぇちゃん……ママはぁ?』

──『……大丈夫、大丈夫だよ』

それだけ見ると、瞬きする間に部屋と扉が消えた。

中を見なくても声が聞こえていた相棒が、慌てたように扉のあった所に手を当てる。

(今の誰だった?)

(……顔は見えなかったけど、たぶん捕まえてる刺客の子供と、その兄弟?)

これは……刺客の子供の過去でも夢に見てるのか?

ゲーマスAIがこれ幸いとイベント演出を差し込んできたのかもな。

部屋は扉ごと消えてしまったので通路を先へ進む。

すると、また同じような扉があったから、今度は二人で中を見た。

……骨で出来た籠の中に、赤黒いオーラを持った蛇の霊。

その手前に、俺達が覗いている扉に背を向ける形で2人の男。

どちらも暗い色のローブ姿で、片方は腰に小さな骨の籠を吊り下げ、もう片方は獣人なのかローブの頭が耳っぽい形に盛り上がっている。

──『ガキにこいつが耐えられるのか?』

──『確かに少々幼いが……必要なのは意志の強さである』

──『ふん……なるほど、確かに噛み付いてくるほど気が強いガキではあったな。……なぁ?』

──『コレなら試すにはちょうどよかろう?』

不愉快な嗤い声を上げながら、また部屋が扉ごと消える。

『なぁ?』と声をかけるように、獣人かもしれない方が部屋の隅へと目をやったから、そこに刺客の子供がいたのかもしれない。

(とっても胸糞の気配がします)

(はい)

まぁこの展開で穏便に済むわけがないだろうな……

そして三つ目の部屋は……覗き込んだ時には、もうそれが終わった後だった。

扉へ背を向けて倒れている小さな体。

剥き出しになったその背中には、禍々しい蛇の鱗が食い込んでいる。

『フーッ……フーッ……』と、必死に耐えるような荒い呼吸をしながら、サビ猫の獣人の少女はそれでも前へ出ようとしていた。

部屋の奥には、直前に見た二人のローブ姿。

そしてその足元に転がっている、縛り上げられ気を失っている小さな兄弟。

──『……お願い』

食いしばった歯の間から絞り出したような、涙交じりの少女の声。

──『アタシが……ぜんぶがんばるから……サナとナナにはこんなことしないで』

ああ……そういう事か。

それを見ていたローブ姿が面白そうに嗤って……

……何か言う前に、キーナがペタに扉をぶち破らせて飛び込んだ。

「死にさらせ虐待野郎ー!!」

……うん、まぁ情報はほぼ出ただろ。

悪夢のボスを夢魔でぶっ飛ばす相棒に続いて部屋に入って、気絶している弟だか妹だかを確保する。

振り向くと、ポカーンと口を半開きにして俺達を見ている刺客の子供。

そこへ二人を連れて行き、縛られているロープを切ってやれば、ポロポロと泣きながら小さな二人を、少女の方が縋り付くように抱きしめた。

「……ちゃんと現実で助けに行こうな」

そう告げると同時に、周囲の景色が白んで消えていく。

驚いた顔でこっちを見上げる刺客だった少女。

……夢での出来事をどこまで覚えているか分からないが、ここで見た兄弟の話をすれば、味方だと分かってもらえるだろう。

猫耳の生えた頭を撫でる。

悪夢の終わりだ。