作品タイトル不明
キ:作戦、捕虜のロールプレイ!
こんにちは。
現在、紐で縛られた状態で子猫ちゃんに運ばれています。キーナです。
あ、大丈夫。説得には成功したよ。
相棒を襲ってきた子猫ちゃんの名前は『キャトナ』ちゃん。
両親が事故で亡くなって、弟の『サナ』君と妹の『ナナ』ちゃんと一緒にこっちの孤児院に来るはずが、ちょうどよろしくない組織がこっちの世界に来る所に鉢合わせしちゃって、兄弟揃って捕まってた子。
『パパもママも……もういないから……アタシがふたりを守んなきゃって……アタシが、がんばらなきゃって……』
夢から起きたキャトナちゃんは、夢に僕らが乱入した事を覚えていて、グスグス泣きながら事情と知っている事を話してくれた。
キャトナちゃん達を捕まえたのは、獣人達が集まって何か企んでいる感じの組織。
そしてその組織と手を組んでいるっぽいのが、例の骨の籠を持っている組織。こっちが死霊使いの集まりだね。
で、その二つが手を組んでなんかやってる企みの実験で、キャトナちゃんが被検体にされちゃった、と。
絶対に許さん。
……と、怒りの炎は燃え上がってるわけだけど、なによりもまずは、人質になっている弟妹ちゃん達を取り戻さないといけない。
じゃないと、結局身動き取れないキャトナちゃんと戦う事になっちゃうからね。あの夢を見た後でそれはご勘弁だよ。
『……たすけて』
──クエスト『囚われの猫獣人』を受諾しますか?
受ける一択じゃんよこんなのさぁ!
そんなわけで、作戦会議をした結果、僕がこうやってハンターに仕留められた熊よろしく運ばれているのだ。
「おねぇちゃん、体いたくない?」
「大丈夫よー」
ヒソヒソと小声で会話を交わす。
被検体にされて、よくわからんけど蛇の力が混ざったキャトナちゃんは、その蛇のパワーなのか子供なのにかなり力が強い。だからこそ、僕を拉致する命令を出されたっぽい。
そのパワーで2人を連れて逃げられたら良かったんだけどね……1人ならともかく、2人抱えて逃走は無理だって思ったんだって。
なので、まずは相手の思惑が成功したフリをして、僕を敵のアジトに運ぶ。
キャトナちゃんをパーティに入れて、相棒の光学迷彩マントとマフラーをそれぞれ借りて使いながら、ピリオノートへ転移した。これで、他のプレイヤーやNPCに見られる事を防ぐ。
そして姿が見えない状態で街の外へ出て、ある程度アジトの近くまで移動。
ある程度近くなった所で、適当な草むらに隠れて透明化を解除してマントとマフラーは共有インベントリへ。
そこで僕を縛られた状態にして、キャトナちゃんが運んでいく。
アジトの場所は、ピリオノートの東方向やや南寄り。ブリックブレッドから見ると南西のあたり。
……とは言っても、残念ながら、そこが謎の組織の本拠地ではないらしい。
僕を取っ捕まえるため、出張所みたいな所に弟妹達と一緒に目隠しして運ばれたんだって。
まぁ腹立たしいけど、キャトナちゃんは使い捨てても構わない駒なんだろうね。最初に捕まった時も麻袋に詰め込まれてて何処にいたのか分からなかったらしいし。下っ端も下っ端な子供から情報が漏れないようにしてるんでしょうよ。
まぁでも、おかげで命令してる数人を張り倒せば弟妹ちゃん達は奪還できそうではある。
さてそんな感じで運ばれて来ました、川辺のちょっと崖になっている所に半分埋めて隠すように建てられた小屋。
「……いくね」
「いいよー」
僕は改めて体の力をだらんと抜いて、意識が無い状態でキャトナちゃんに背負われているフリを装う。
変装状態で顔が隠れているからね、目を閉じなくても大丈夫。だから周りの様子がよくわかる。
(とりあえず目的地には着いたよ。なんか小屋みたいな所)
(了解)
念話で相棒に状況を伝えながら機を窺う。
キャトナちゃんが入り口の戸をノックすると、僕の顔の角度だと見えなかったけど、カタッと小さな戸を開けたような音がした後で戸が開かれた。
僕を担いだキャトナちゃんが中に入ると、すぐに戸が閉じられる。
小屋の中には……大人が3人かな?
「……よしよし、人相書きの通りだな」
顔見えてないけどね。
これでオッケー出しちゃうあたりはゲームだなぁ。
「ちゃんとつれてきたから、サナとナナにあわせて」
「おうよ、そいつ持ったままこっちに来い」
男の声がした1人がそのまま小屋の奥へとすすんで、キャトナちゃんは僕を担いだままその後に続く。
さらにその後ろから、残り2人の大人も続いた。……背後を取られないようにって事かな?
(中は大人が3人。前後挟まれながら奥に進んでる)
小屋の奥は壁が途切れて洞窟のような状態になり、下り坂になった。
かなり深そうだねぇ……わざわざ掘ったのかな?
外見は本当にこじんまりとした木こりの休憩所みたいな雰囲気だったから完全に隠しアジト。
(奥が洞窟になってる。下に向かってる感じ。自信ないけど、たぶん一本道)
しばし進んで、少し広い部屋に出た。
ある程度の広さに整えてあって、カンテラに照らされた地面には魔法陣が描かれている。ヒトが何人かいて、魔法陣を囲んでいた。
そして魔法陣の上に、気を失っているサビ猫の獣人の子供が2人、転がっている。
「っ、なんで!? ふたりに何したの!?」
「お前が言ったように、お前にしたような事はしてねぇよ」
「ミャァッ!」
視界が揺れた……と、思ったら服を乱暴に掴まれて、弟妹ちゃんと同じ所へ投げられた。
あっぶない、声が出る所だった。
キャトナちゃんも同時に投げられたのかな。
僕らは全員、怪しい魔法陣の上に転がった。
(地下に魔法陣。その上に転がされてる。大人がもっと増えた)
(何人くらいかわかる?)
(ちょっと無理)
「元々お前らは贄にする予定だったんだ」
「こっちの領分を荒らしたそいつを始末するのにちょうどよかったから使っただけ」
「ちゃんと約束は守っただろ? お前の弟と妹には、お前みたいに呪いを埋め込んだりしてねぇよ」
そう、呪いだったの。
それが分かれば、もういいや。
(相棒! 今! 来て!)
(はいよ)
下卑た嗤いを浮かべる、魔法陣を囲んだ大人達。
その魔法陣の上に……風が吹いた。
僕の目の前で、水面のように人型に揺らめく光学迷彩。
それは周囲の人々にも見えていたから、嗤いは凍りつき、驚きに目を見開いた。
僕らには、妖精女王に貰ったコレがある。
【巡る想いのペアリング】
深い絆で結ばれたパートナーを繋ぐ、妖精女王が編んだペアリング。
2人が指輪を身に着け、指輪の花が咲いていれば
対となる相手の所へ転移する魔法を使う事ができる。
※使用すると、再使用にはゲーム内で3週間のクールタイムが必要。
戦闘準備万端の相棒が、完全に不意打ちの状態で乱入だぁ!