作品タイトル不明
キ:チョコットファクトリー、ノーマルモード
フランゴ君が馴染んでるのも見られたし、そろそろダンジョンに入ろうか。
UFOファウンテンの入り口は、UFO部分にある大きな扉。
階段が付いているから、普通の搭乗口って感じ。ピルルルル〜って光の中を上下するんじゃないんだねぇ。
階段を上がって扉を潜ればダンジョンにイン。パーティー別の処理になる。
UFOみたいな鉄って感じの外観と違って、中は打って変わってファンシーなチョコレート店そのものな内装だった。
入って直ぐは、小さめの受付ホール。
チョコレート色とミルク色が多めな、お菓子の家のような雰囲気に、ほんのりとカカオが香る。
「わぁ〜、丸っこくて甘そうな内装」
「……これはチョコレートか? ……いや、置物か」
「かわいいです……こういう雰囲気は好きです」
「マリーは好きカァー」
「ムゥ……自分は少々落ち着きませんナ」
「……甘い匂いが強いな」
スンスンと鼻を鳴らすネビュラに気付いた相棒が、「あ」と声を上げた。
「そうだった。ネビュラ、匂いキツくないか?」
「ふむ……今は何ともないが、これが強くなるのなら鼻は効かなくなるやもしれぬな」
「了解。匂いで具合悪くなったら言ってくれ」
「そんな事があるのか……?」
精霊は……どうだろね?
鼻が良い従魔はちょっとしんどそうになるって掲示板では言ってたみたいだけど。
プレイヤーはイベントを楽しめるようにって方針からか、苦手な人はイベントオプションから匂いをオフに出来る仕様。
僕はチョコレートを溶かしたりジャムを煮たりする匂いは大好きだからそのままだけど。相棒も、特に苦手ではないからそのまま。
レースのクロスがかけられている受付カウンターへ向かうと、そこにはデカデカとした注意書きと、大きなスイッチが2つ。
「えーっと……『チョコットファクトリーでは、現在オーダーメイドショコラのキャンペーンを実施しております。』」
「はい」
「『お好みのコースを選択すると、ご希望に合わせたチョコレートフルコースがお目見え! コースの最後は、当店自慢のチョコレートファウンテンを使用した、フォンデュフィーバー食べ放題タイム! 心行くまで甘く香ばしいショコラの饗宴をお楽しみください。』」
「狂宴なんだよなぁ……」
フォンデュフィーバーっていうのが、このダンジョンのボス。
大きなチョコレートファウンテンが襲いかかってくるんだって。字面が酷いね!
そして2つのスイッチの前には、ざっくりとしたコースの説明書き。
「えー、こっちが……『お客様の好みに合わせた定番の美味しさ。──スイートコース』」
「有志wikiによれば、こっちがノーマルモード」
「こっちは……『お客様が出会った事のない未知の刺激を。──スパイシーコース』」
「こっちがハードモード」
相棒の予習によれば、プレイヤーによって出てくるモンスターが違うって話。それがオーダーメイドショコラって事なのかな?
難易度も選べるから、初心者にも安心。
「とりあえずノーマルでいいよね?」
「いいよ。……でもこっちは『ちょこっとがっかり』らしいから、ぬるすぎたら次はハード行こう」
「オッケー」
では、スイートコースのスイッチをポチッ。
すると、カウンター横に奥へ進む扉が現れた。
「これに入ったら即戦闘」
「デハ、自分が先頭で参りまショウ」
「デューよろしくね」
「頼んだ」
大きめの従魔も通れそうな、大きな両開きの扉をゆっくりと開ける。
隙間から中を確認したデューは、僕らへ向かってひとつ頷き、扉を押し開けて中へ飛び込んだ。
「突入ー!」
「オー!」
デューの後に続けー!
一斉に中へと飛び込む。
そこはファンシーでかわいいキッチンがモチーフになっている広いフロア。キッチンの物はダンジョン感を出すためかちょっと巨大で……あー、ド根性さんの体のサイズで使うにはちょうどいいかもしれない。
そこで僕らを待ち構えていたのは──
ビター・C・ツーパンベア Lv55
「何で!?」
「ああー、がっかりってそういう……」
「実に見覚えのある熊だな」
「ワァ、甘い匂いのするツーパンベアダー!」
「……あれがチョコレートですか?」
「来ますゾ!」
ものすごく慣れ親しんだ動きで突進してくる複数のチョコレート製ツーパンベア。
慣れた感じで多段ヒットを盾で受け止めるデュー。
そこへ畳み掛けるジャック、ネビュラ、相棒。
「……つまり、普段狩ってた相手がチョコバージョンで出てくるのが、『お客様の好みに合わせた定番の美味しさ。──スイートコース』って事!?」
「そういう事かな……ああ、ほら。一応ここ専用のも出てきた」
相棒が指した先には、かなりの数の群となって押し寄せてくるチョコレートのモンスター達が!
カカオマッスル Lv40
チョコットチョコチップ Lv35
カカオマッスルはカカオの形のチョコレートにムキムキな手足が生えてる厳ついモンスター。
チョコットチョコチップはポンポン跳ねながら近付いてくるチョコレートの大きな円盤型モンスター。
どっちもバスケットボールくらいの大きさなのがぞろぞろとやってくる。
「多くない!?」
「まぁ、多い分レベルは低めだから……」
チョコレート確保がメインのイベントだから数が多いのかなぁ!?
とりあえずその大群をさっさと片付けるためにも、防御を下げよう。
「【トリック・オア・トリート】!」
途端、僕の周りにザラザラザラーッ!と小さなチョコレートの粒が降り注いだ。
「ギャーッ!?」
「それはそう。贈り物だぞ相手は」