軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:バレンタインイベントならではの

ログインしました。

休日昼間のログイン。バレンタインダンジョンに遊びに行く日でございます。

ポップな雰囲気のダンジョンらしいから楽しみ。

エフォ(EFO) のダンジョンは今の所、大自然に満ち溢れた野生の楽園か、砂漠の魔法塔か大霊廟か、後はオープンダンジョンだけど鏡地獄かだけだからね。

ファンシーなダンジョンは、実は初めてなのだ。

準備をしたら、ジャック達を連れてピリオノートへ転移する。

平日昼間だからヒトは少なめだけど、少ないだけでピリオノートの転移広場はそこそこプレイヤーがいる。

ジャック達をゾロゾロ連れて歩くと目立ってしょうがない。

だから僕らはさっさと移動して、四方大街道に繋がる大きな馬車道……の、1本外れた道に入った。

あんまり裏も裏な方に行くと……今度は別のクエスト始まっちゃいそうだからね。

メインストリートの人気店の裏側を通るみたいにして、バレンタインダンジョンの方へと向かう。

バレンタインダンジョンは、ピリオノートの南側。

街の外、プレイヤー居住区のさらに外、防壁と大森林との間の草原に出現している。

初心者も上級者も参加するイベントだから、最初の街であるピリオのすぐそば。

でもそのままだと混みすぎるから、夏のイベントで出来たサウスサーペント港の方にも、ダンジョンの入り口が配置されてるんだって。

そっちの港の方では、人気投票イベントのV配信者達がイベント用のステージでライブとかトークイベントとかをやっているらしい。

あのステージはダンジョンみたいに複数部屋だから何人押し寄せても大丈夫だし、外にライブの大音量が漏れないから住み分けにはもってこい。

イベントメインの2人がいない時間は、同じ事務所の他の配信者がやって来たりもしてるみたいだから、配信者のファン達はサウスサーペント港に入り浸る事で、ピリオノートの混雑を緩和出来る。

これを機に エフォ(EFO) を始めたファンとかの為に、サウスサーペント港行きの馬車とかもあるみたいだよ。配信者のライブにちょっと興味がある人なんかも便乗してたりするんだって。

……そんな事を思い出しながらピリオノートを歩いていると、進行方向に、溜め息を吐く鎧姿の男性がいた。

(あの鎧は兵士さんかな?)

(だな)

兵士やってるプレイヤーもいるらしいから、あのヒトがプレイヤーかNPCかは分からない。

だからいつもなら素通りするんだけど……最近の僕ら、お城に色々情報提供してるからなぁ〜……もしかして、その関係でゲーマスAIがNPCを配置した可能性もあるかも? なんて思い付いてしまった。

(声かけてみていい?)

(……プレイヤーかもよ)

(かもだけど、お城関係のイベントかもしれないなーって)

(あ〜……まぁいいよ)

相棒がジャック達にストップをかけて立ち止まったから、僕は一歩前に出て兵士さんの前に立った。

声変わりシロップを飲んで、声をかける。

「あの……何かありましたか?」

僕が声をかけると、兵士さんは顔を上げて……僕らを見て慌てて姿勢を正して敬礼した。

「こっ! これは、『鎮魂の魔女』様! 『死の導き手』様も! お疲れ様です!」

あ、この反応はNPCですね。

これでプレイヤーだったら僕はスタンディングオベーションしちゃう。

そしてNPCなんだったら、これはもうクエスト的な誘い受けの可能性が大ですよ。遠慮はいらねぇ。

「お疲れ様です。何か悩んでいたみたいですけど、何かありましたか?」

「ああ、いえ……大した事では……」

ゴニョゴニョと言葉尻を濁しながら、兵士さんは僅かに頬を赤らめた。

そんな様子に、僕はティンと来ました!

今はバレンタインイベント期間中ですよ!?

それでこの反応!

これはもう!

ラブコメとかロマンス系のクエストの気配がするじゃあありませんかぁ!!

「まぁまぁ、遠慮なさらず。言うだけ言ってみてくださいよ」

「そ、そうですか……? で、ではその……完全に、私事なのですが……」

兵士さん曰く。

プレイヤーにはバレンタインイベントって認識されているダンジョンとチョコレートは、NPCの間では『降って湧いた特殊で危険な場所』で、『そこで手に入る貴重な御馳走』って認識になっているみたい。

「その話を聞いた甘味を好む女性の同僚が……『食べてみたいなぁ』と溢していまして……」

なるほどそれなら、と、こちらの兵士さんは、仕事の合間の休憩時間に店を巡ってイベントチョコレートが手に入らないか探していたらしい。

「ですが……一般の店には無いようですね。戦闘で有利になる効果があるとくれば冒険者の方々は自分で使いますし。僅かに店に卸された分は、ほとんど貴族が確保しているようですので……」

なるほど。

確かにバフアイテムでもあるし、投票イベントなんて物もやってるから、NPCに店売りする事って全然無いのかもしれない。

「そ、その……『あの場所で手に入るチョコレートを渡して想いを告げると成就する』なんて噂もありまして……乗っかってみようかとも思ったのですが……まぁ、無いものは仕方ありません」

ほっほーう!

ほら来た! 来ましたよ!

バレンタインらしいクエストが来ましたよー!!

「……実はですね兵士さん。我々、これからそのチョコレートを取りに行くところなんですよ」

「えっ」

「取ってきたら、少しお裾分けしましょうか?」

「えっ、あっ……よ、よろしいのですか?」

兵士さんの目が輝いた。

いいねぇ、ゲームのクエストだから分かりやすくて。

──クエスト『恋する兵士のチョコレート』を受諾しますか?

──このクエストはイベントポイントが加算されます。

イエス!

光の速さで受諾を押した僕に、相棒が苦笑いした気配がした。

なんだよぉ〜、楽しいでしょNPCの恋模様!

「で、では……よろしくお願いします」

「任せといてください」

兵士さんの名前は『デビット』。

チョコレートを手に入れたら、勤め先のお城へ持って行く事と、チョコレートは無料で上げるとプレゼント扱いになってしまうから買い取る事で話がついた。

いやぁこれですよこれ!

せっかくMMOのバレンタインなんだから、こういうクエストが無いとね!