軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:再びの図書館裏で

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第二のフランゴイベントが始まって数日。

エフォ(EFO) のプレイヤー達は謎のフランゴフィーバー状態に陥り、動画投稿サイトの エフォ(EFO) 界隈は新着の8割がフランゴ関係になっていた。

初心者向け初期フランゴの攻略解説動画に始まり、高難易度フランゴ攻略解説動画、最高難易度を目指すチャレンジ動画、有効な攻撃を探る検証動画、フランゴRTA動画……そして、餌付け動画。

そんな中でも断トツで再生数が多いのは、1番最初に投稿された餌付け動画だ。

戦闘の前なのか後なのかは不明だが、フランゴに料理を提供しているその動画は、フランゴが困惑した顔で料理を眺めている様子から始まる。

どうもフランゴは、料理を『顎や胃腸が大して強くないヒト族が、動植物を食べられるようにするための行為』という認識しか無かったらしい。強い生き物をそのまま咀嚼できるフランゴには必要の無い物だった。

そんなフランゴが、料理とは味を楽しむ物でもあると言われて、半信半疑で食べてみた様子が動画には映っている。

フランゴは料理をひと口食べて……何度か噛んで一瞬フリーズし、しばらく目を輝かせてモグモグと口を動かし……それが徐々にしかめっ面に変化して、最後には苦虫を噛み潰したような顔で料理を飲み込んでこう言った。

『……オレ様は…………今まで、なんと勿体ない事を……っ!』

今まで捕食してきた世界で、料理を完全に無視してきた事を思い出し、心の底から後悔したらしい。

「フランゴ君が『勿体ない』を覚えた」

「これが原因で餌付け動画が溢れてるんだな」

なお、餌付けした所でクリア回数にカウントはされないが……好感度的な物が上がっている手応えは感じられるそうだ。

* * *

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さて、今日の俺はやりたい事がひとつある。

「俺は今日図書館に行くけど……相棒も行く?」

「行くー」

「じゃあ一応変装しておいてね」

「はーい」

即答したキーナと2人で、転移オーブでピリオノートへ。

クリスマス1色な街を横目にしながら、喧騒から少し離れた図書館へ向かう。

フェスティバルももうすぐだな。

記念公園と図書館はそんな季節行事とは無縁の静けさで、うっすらと粉雪を被った神秘的な雰囲気を漂わせていた。

中に入る。

図書館の中は、クリスマス関係の飾り付けは特に無い。

ただ、本棚にはいくつかクリスマスっぽい絵本が何冊かある。キーナが嬉々として写本を作ってインベントリに入れていた。

キーナはついでに、デミ・レイスになった事で消えた【光魔法】の代わりに、【闇魔法】の本を読んだ。

(……で、相棒は読書じゃなさそうだけど、何しに来たの?)

(裏図書館に用がある)

(ああ、あっちかー)

例の、反応しない使徒がいる場所だ。

鏡をノックして、裏側へ飛ぶ。

……相変わらず粘液が広がる部屋の中。

倒れた本棚の上に着地した。

(来るの久しぶりだね……あの子どうなったかな?)

(さぁ……ちょっと見てみるか)

【感知】には、例の使徒以外の反応は引っかからない。

相棒が作ったネモの足場を渡って、俺達は使徒の前までやって来た。

……と、使徒が緩慢な動作で顔を上げる。

緩慢と言っても、初めて見た時よりは動きが幾分早い。

そしてガラス玉のような目で俺達を見て、使徒は不思議そうに首を傾げた。

(……あ、そっか。僕ら、初めて会った時は変装して無かったよね)

(ああ)

そういえばそうか。お嬢様とカステラソムリエさんを連れてきた時は俺達を認識してたかどうか怪しいし。

とはいえ……ほんの少し見ただけの俺達を覚えているかはわからない。

「えっと……こんにちは」

「…………」

若干の迷いを見せながらキーナが告げた挨拶に、使徒はこくりと頷くように応えた。

(おお……理解して反応している感じがする)

(だな)

明らかな意識の改善を感じた。麗嬢騎士団すげぇな……

(……どうしよう、何したらいいのかな?)

(……さぁ?)

俺達だとこうなるんだよなぁ……

まぁ、改善が見られたって事で良しとする。

「じゃあまたね」

特に何を話すわけでもなく、キーナはバイバイと手を振って、俺達は再び本棚の陰に戻った。

(そんで……相棒はあの子の様子見が目的だったの?)

(いや、コレ採取しにきた)

コレ。

そう言いながら俺は、インベントリから取り出したいつもの片手鍋で、部屋いっぱいに溜まっている粘液をすくい取った。

(あ、それ採れるんだ?)

(採れたら色々使えそうだなと思って)

鍋の中身を確認すれば、他のアイテムと同じように情報が見えた。

【滅びの雫】

溢れた滅びの一欠片。

……まぁ、そのまんまな説明だな。

俺は用意してきた大瓶を取り出し、そこへ小鍋の粘液を注ぎ入れる。

何度か繰り返してある程度の量になったら、こぼれないようにしっかりと蓋をした。

(……よし)

瓶をインベントリに収納。

瓶が滅びないかどうかは……時間が経たないとわからない。本もゆっくり溶けてたからな。

……そしてキーナを見ると、キーナは何か考えるようにして粘液溜まりを見ていた。

(……どうした?)

(ん? ……うん……サルベージするなら、海じゃなくてこっちだったなーって)

(サルベージ?)

疑問に思う俺の前で、キーナがスッと粘液溜まりに指先を向ける。

そして──

「……【ツリークリエイト】」

小声で唱えた【木魔法】

粘液溜まりから、メキッと伸び上がり急速に成長する木。

「……っ、MPキッツ……」

そりゃそうだろ。

滅びの粘液から木を生やそうとするとか、普通に枯れそうだ。

木は、それほど大きくならない内に赤い花がひとつ咲き……辛うじてといった感じで、赤い実をひとつ付けた。

(……あれ? 林檎じゃない)

キーナは大きく息を吐きながら、実った果実をもぎ取る。

……すると小さな木は、即座にカサリと枯れて倒れた。

【忘れ物の 柘榴(ザクロ) 】…品質★★

ひとつ食べると忘却に溶けていた断片を垣間見る。

何を見るかは、食べてみないとわからない。

(……思ってたのと違う)

(どうなると思ってたの)

(え……普通に知恵の林檎?)

不思議そうにザクロを眺めるキーナ。

(本を溶かしてたでしょ? だから……溶けた本の知識を吸い上げるかなーって思ったの)

(なるほど)

でも出来上がったのは『忘れ物の柘榴』だ。

(……まぁ、食べてみるしかないんじゃない?)

(だねぇ……)

(貸して)

キーナから柘榴を受け取って、ナイフを当てる。

確か……中の粒を食べる果物だったな。

切り込みを入れて、赤い実を割り開いた。

(はい、どうぞ)

(ありがとう)

キーナは恐る恐る粒を口に運び……肩を落とした。

(……どうした?)

(…………美味しくない)

(あー……)

(何、この……めっちゃ大味というか、ボケてるような味……食感も微妙……)

(魔法で成長させた植物って美味しくないらしいよ)

(ええ~、マジで〜……)

でも林檎と同じなら、ひとつ食べきらないと効果が出ないからな。

(がんばれー)

(うぅ~、他人事だぁ〜)

今から俺が食べるわけにもいかないしなぁ。

キーナはモソモソと食べ続けて……どうにか1個分を腹に収めた。

……すると

「……あ、れ?」

ぐらりとキーナの体が傾く。

(っ!?)

そのまま脱力して倒れ込むのを慌てて抱きとめた。

(キーナ!?)

規則正しい寝息……キーナのフルダイブVR機器のエラー通知は来ていない。

断片を垣間見るっていうのは、夢の中でなのか? そのために強制的に意識が落ちる? ……さすがに期間中とはいえ特殊なイベントっぽいからフランゴに直行させられるって事は無いだろうが。

……なんにせよ、ここで起きるまで待つのは得策じゃないな。

風切羽を使って、俺は意識の無いキーナを連れて拠点へと撤退した。