軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:トリガー担当は即一戦

さて。

ワールドアナウンスが流れて、皆でヒト族をフランゴ君に認めさせようクエストが発生した今現在。

僕らは、『かかってこいや』と言わんばかりの状態のフランゴ君の前にいる。

「あ、この流れ……もしかして僕らって自動的に戦闘に入る?」

「あっ、えっ、そ、そうなんですか?」

「……そうっぽいな。ラウラさんは準備とか大丈夫ですか?」

「は、はい! あ、荒ぶるフランゴさんを物理で鎮めるクエストかと思って準備して来ましたので!」

「なるほど、これが天使の思考回路」

と、なると残る不安要素はゲストNPCの存在だけ。

「夢の幻獣ちゃん達はどうする?」

「沙汰が下ったからモモンは帰るモン」

「………………」

「こっちも適当な安全地帯で終わるの待ってるらしいモン」

「はーい、じゃあバイバイ」

そしてウニ先輩は……

「新入りの指導も上位天使の務め。ヒトの子が上下関係を叩き込むというのならばちょうど良い。共闘させてやろう」

参戦決定。

よろしくお願いします。

僕らがその気になって武器を手にしたのを見ると、首がたくさんある巨大な姿となったフランゴ君は洞窟に響き渡る咆哮を上げた。

それに応じて、最初に飛び出したのはまさかのウニ先輩だった。

「遅い!」

そのまんまるボディからは予想出来ない速度でウニ先輩は飛び、フランゴ君の背後に回り込む。

そして細い触手がウネウネしている背中に向かって、ウニにしては大きな口の歯をギラリと光らせながら飛びついた。

「ガァアアッ!?」

ブチブチブチッ!と触手が千切れる音がする。

背中に思いっきり噛み付いたらしいウニ先輩は、突き立てた歯を離さないまま不敵に笑い声を上げた。

「威勢だけで上位天使を食えると思うな新参が、骨の髄までこそぎ落としてくれるわ!」

「ほざけ!」

自分に噛み付くウニ先輩に噛み付き返そうとするフランゴ君は、けれど噛み付いた状態のまま棘を伸ばしたウニ先輩の防御の姿勢に防がれた。

……フランゴ君、天使に成り立てで本調子じゃないのかも? 使徒だった時のフランゴ君なら棘ごと噛み砕いてそうな気がする。

そういう設定で弱体化してないと、新規さんとかフランゴチャレンジ出来なくなっちゃうもんね。

ゴリゴリと背中からウニ先輩に削られるフランゴ君に、正面からは剣を構えたラウラさんが斬りかかる。

うーん、ラウラさん慣れてるなぁ。あれがウニ先輩の常套手段なんだろうなぁ。

さて、感心してもいられない。

相棒は既にせっせと矢を撃ってるから、僕も仕事をしないとね。

霊体化、からのぷかりと浮遊。

ここは洞窟内だから日光を気にしなくていい。霊体状態の方が僕の防御は高いしね。

じゃあ、まずはデバフからいきましょうか!

「【トリック・オア・トリート】!」

対象が1体だからMP少な目で済むの助かるぅ。

声が届いたフランゴ君は、明らかに青筋が浮かんだような反応をした。

「貴様にくれてやる物など無いわぁ!!」

はい防御低下ー。

てかフランゴ君、相手が僕じゃなくても贄として渡すモノなんて持ち合わせなさそうだなぁ。

今のでフランゴ君が僕の方をグルリと向いたから次の手を打つ。

「【だーれだ?】」

フフフ、何度か使って登録しておいた、オバケの目隠しの魔法です!

今回の目隠し要員はー?

おおーっと、メンダコだぁ! メンダコのオバケが何匹か出てきてたくさんあるフランゴ君の頭部に張り付いたー!

「っ!? ……ええい、この世界の獲物の名前など知るかぁ!!」

フランゴ君! フランゴ君!! 正解を考えちゃった時点で君の負けだよフランゴ君!

思わず吹き出しそうになるのを抑えて、小声で次の魔法を唱えた。

「【サモンネクロマンス:ポルターガイスト】」

洞窟のあちらこちらに、小さなシーツオバケがポコポコと出現する。

そして呼び出されたイタズラっ子達は、それぞれがてんでバラバラに好き放題適当な物を投げて音を立て始めた。

ふっふっふ、視界を塞ぎながら聴覚もめちゃくちゃにしてやろうというわけだよ!

(お祭り騒ぎだな……)

(すごく楽しいです)

フランゴ君はウザさMAXだろうけどね。戦闘なんて相手の嫌がる事してなんぼだから。

なんて思ってたら業を煮やしたフランゴ君が、頭のメンダコを叩き落とした。

「邪魔だ!!」

『ああん』って感じでベシッと吹き飛んで消えるメンダコ達。

残念、まぁ可愛かったからよし。

でもそっかー、流石にイベントボスみたいなのは性格的に通用しても途中でキャンセルされちゃうかー。

そこへ飛んできた相棒の念話。

(相棒、ペタは?)

(あ、そうだったそうだった)

そうだよここは夢の領域。

インベントリからペタちゃんの卵を出すと、ズルリと現れる黒い夢守のペタちゃん。

「ペタちゃん、フランゴを倒して」

「受諾」

夢領域のペタちゃんは文字通りの専門家。レベルも結構上がったから強いぞー!

グワッと影のように広がり、鋭い爪で斬りかかるペタちゃん。

……と、ダメージが蓄積されていくフランゴ君が、ズンと岩盤を踏み鳴らした。

弾ける衝撃波。

そんなに痛くは無いけど、ノックバックで全員が後ろに軽く飛んだ。

齧りついてたウニ先輩も弾き飛ばされている。

バサリ、フランゴ君の背中の翼が打ち鳴らされた。

黒い翼が、羽毛の繊維を煌めかせるように光沢が走る。

「……翼、光……こうだな!」

羽根の間から溢れ出す閃光。

うーん、当たったらヤバそう。

「ネモ」

ネモを、初めて会った時みたいなコウモリの姿で呼んで、俊敏の低い僕を引っ張って光を避けてもらう。

閃光は、洞窟の壁に当たると煙が上がるから熱線で間違いなさそうな感じ。

フランゴ君、すっかり光属性になったんだねぇ。

……光ならアレ効くのかな?

「【ミラークリエイト】」

イメージは、相棒が超カッコよかったラリーストライクの試合会場。

球を跳ね返してたフィールドのように、フランゴ君を囲んで内側に鏡を向けたドームを作る。

フランゴ君が大きいから、作るだけでそこそこMPは持っていかれたけど、それだけの価値はあった。

光線を反射する鏡。

翼から放射線状に放たれた光が、鏡によってフランゴ君に跳ね返る。

一部の光が強い部分は鏡を貫通して僕のMPが更に削れたけど、それでも光線の8割はフランゴ君に返った。

ふふふ、やってやったぜ。

今日は魔法の想像力が調子良い日だ!

そしてやっぱりまだ本調子じゃないのか、それなりにレベルの高い僕らが袋叩きにしていると、割とあっさりフランゴ君は倒れてしまったのだった。