軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:きちんと御用意されていた

僕は無事に召喚されたダンジョンを、『ファンタジー召喚って最高デスヨネ!』みたいな現実逃避をしながら眺めていた。

召喚された大霊廟は、大きな教会って言われたら普通に納得するような造りをしていた。

メインっぽい大きな建物と、横に一回り小さな建物。小さい方が、話に聞いていた合葬墓用の別館なのかな。

木もたくさん植えてあるし、花壇っぽい物もたくさんあるから、きちんと整備されていれば、すごく綺麗な所だったんだと思う。

……それが今は、『堕ちた』って表現がぴったり似合う有様だった。

霊廟は所々割れたり削れたりしてヒビが入っているし。植物は全滅してカサカサの枯木枯草になったり腐って黒い塊になったりしている。

ところどころからゆらゆらと立ち上ってる黒いオーラは何由来の物質なのそれ?

真昼の青空の下で召喚したはずなのに、心なしか薄暗いし! 敷地をぐるっと囲んだ檻の中だけ明度下がっていませんかねぇ!?

そんなコッテコテホラー外観にちょっと腰が引けていたのも束の間。

RPGによくある地面がズゴゴゴって揺れる演出と一緒に、霊廟の周りかつ檻の中に、ウゾゾゾゾッと大量のモンスターが現れた!

影コウモリ Lv17

ビリオンラージワーム Lv70

空間を大量に飛び回る、黒くて中型犬くらいのサイズがあるコウモリ。

そんなコウモリを掻き分けるように、ずるりと泥を滴らせながらヤツメウナギみたいな口を持つ巨大な頭を持ち上げた、レイドサイズの化け物ワーム。

……いや、ちょっとまって?

巨大ワーム、なんか表面がうぞうぞしてない?

「あー、集合体が苦手な者はあんまりワーム見ない方がええぞ」

「やっぱりー? あれってワームがいっぱい集まってデカワームになってるよねー?」

うわぁあああああああ! やだぁああああああ!

蜘蛛よりは苦手じゃないけど、あんまり見たくないなぁああああ!

プレイヤーが何人か「うげぇ……」って反応をする中。

真っ黒鎧のガルガンチュアさんが、力強く一歩前に出て喜びの声を上げた。

「ゲーマスAIも気が利くじゃねぇか! 森夫婦を見送って突入しねぇ俺達用に御用意した玩具って事だろぉ!?」

あ、なるほど?

……もしかして、クエストを受けたのが秘匿重視でパーティ組みにくい僕等だから、召喚参加者向けに沸いたモンスターなのかな?

「つまり『ここは俺達に任せて先に進めぇ!!』をやれってことか」

「そ、それは参加者としては嬉しいですけれど……っ」

「なんでクソキモモンスターをチョイスしたんですか!? ゲーマスAIぃいいいい!?」

「ホラー系ダンジョンだからね……仕方ないね……」

グロとキモとホラーは紙一重だからね……お互いがお互いを高め合うスパイスというか、御一緒のポテトみたいに『セットでさらに美味しい』みたいな扱いされがちなモノだからね……

とはいえ、そういう事なら僕らはさっさとダンジョンに入った方が良いのでは?

なんて思った所で、固まっていた同盟メンバーの中からスッと前に出たのが1人。

「──【天来インパクト】」

格子を通り抜けて飛来する、星が落ちる衝撃。

無数のコウモリを薙ぎ払い、巨大ワームの輪郭を一瞬ブレさせた【星魔法】。

周囲のプレイヤーの注目を浴びながら、僕らとお揃いの変装衣装の中で、アルネブさんが声変わりシロップを飲んだ声でくすりと笑う。

「私の魔法は霊廟内だと狭すぎるわ。こっちを担当するわね」

「うむ! 自分も全力を振るうならばこちらであろうな!」

追随したド根性さんも、ゴーレムを呼び出して乗り込んだ。

「行け! 外が無限湧きならば時間をかけるだけ不利になるぞ!!」

「そりゃそうだ……【サモンインセクト:大樹の護】」

カステラさんが呼び出した大きな甲虫が、大霊廟の入り口への道を守るように並ぶ。

「よーし、さっさと入ろー」

「は、はい!」

マイペースな夾竹桃さんに促され、ラウラさんも武器を構える。

僕と相棒も頷きあった。

(行くよ)

(うん!)

ジャック達に突入指示を出して、僕は少し離れた所にいた聖女さんとロスティさんの所へ走る。

「行こう」

「はい!」

「よろしくお願いします」

ロスティさんはテストとして一緒に霊廟へ入る事になっている。

もしもパーティ外でも一緒に入れるなら、この霊廟はオープンダンジョン。それなら、今コウモリやワームを迎撃しようとしている参加者から、希望者を一緒に連れて行く事ができる。

だから僕らのパーティに聖女さんを入れて、ロスティさんはパーティ外。

──と、そこへ吹き飛んで真横を通過するコウモリと、こぼれ落ちた単体のワーム。

どうやらこっちを狙っていたのを、参加者のプレイヤーが撃ち落としてくれたらしい。

「こっちはまかせとけぇ!」

「どうかご武運を!」

うん、皆ノリノリじゃんすか。

これはさっさとダンジョンに入っちゃった方が負担にならないね!

聖女さんの手を引いて、弓を構えた相棒とネビュラが待ってくれていた所へ走る。

大霊廟入り口は、巨大ワームの足下に向かうような位置取り。

ド根性さんと『グリードジャンキー』がそこまでの道を切り開いてくれて、その補助を『麗嬢騎士団』が。

広範囲に広がっているコウモリ達を他の参加者達が相手をしてくれている。

急げ急げー!

魔法が飛び交う戦場を駆け抜けて、僕らは大霊廟へと飛び込んだ。