軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ガリスメリア大霊廟

大霊廟に滑り込んだ途端、戦場の喧騒がピタリと止んだ。

一緒に突入したメンバーを確認する。

キーナ、聖女、ネビュラ、ジャック達オバケ三兄弟、夾竹桃さん、ラウラさん……これで全員。

パーティ外のロスティさんはいない。

……ということは、ここはオープンダンジョンじゃない。

パーティ毎に専用フィールドが構築される、通常のダンジョンだ。

「……お、思ったより静かですね」

「だねー、岩ちゃん入れないかもって連れてきてなかったからー、初手モンハウじゃなくて助かったー」

飛び込んだ大霊廟の中は、不気味な程に静まり返っている。

激しく争った痕跡、破損した石碑や燭台、剥がれて土が露出した石畳。神や天使を彫ったのだろう石像は、ことごとく首が無かった。

不思議と死体は無い。壊れた武器や鎧はちらほら落ちているんだけどな。

天井近くの大きなステンドグラスは黒く汚れて、光を取り込む役目を果たしていない。

貰った魔道具で灯りをつけるが……暗がりに浸食されているように光が不自然に狭い。

ホラーによくある雰囲気だな……キーナは大丈夫か?

(……相棒、大丈夫?)

(いけませんでございます、ホラーを意識させないでくだされ旦那サマ。必死に暗い所から目を逸らしてる真っ最中だから)

(……セーフよりのアウト?)

(そんな感じ!)

ダメそうだな。

苦笑いしていると、夾竹桃さんが奇妙な動きをし始めた。

首を傾げて聖女から距離を取り、また首を傾げて聖女に近付く。

「……何してるんですか?」

「んー? ……なんかねー、聖女ちゃんから離れすぎるとHPが減ってる気がしてー?」

マジか。

それを聞いて俺達はそれぞれ聖女との距離と自分の状態を確認した。

「……ほ、本当です。は、離れすぎると少しずつHPが減りました」

「僕も」

「……俺もです」

「オレ達はなんともないヨー?」

オバケ組は効果無しか。

すると、それを見ていたネビュラが口を開いた。

「……ふむ、どうやらこの中は死の領域となっておるようだな。例えるなら、死の海の水がうっすら霧のように漂っておるような状態よ。このような場所では、生者は命を削られる。聖女殿は『生誕』の神の加護を持つが故、周囲の死が緩和されるのであろう」

なるほど……ギミック付きのダンジョンか。

「主は余と同化すればおそらく影響は受けぬ」

「了解。……それ以外は位置取りと回復でなんとかしますか」

「だねー」

確認を済ませたら、先へ進む前に態勢を整える。

貰った魔道具で全員にバフをかけて、他にも色々。聖女にも魔道具を渡して絶対に結界を切らさないように指示をした。

……それもひと段落して、いざ先へ進もうという空気になった時だった。

──カシャン……カシャン……

大霊廟の奥から、金属鎧を着ているような足音が近付いてくる。

「……隠れます」

小声で宣言して光学迷彩マントを起動。ついでに【隠密】スキルも使って気配も消した。

見えない状態で弓に矢をつがえる。

全員武器を構えて、デューが前に出る……そして近付いてくるナニかを待ち構えた。

……フラフラと近付いて来たのは、紫色のぼんやりした光を放つランタンを持ったアンデッド。

金属鎧を着たスケルトンだ。

それがハッキリと視界に入った瞬間、聖女がヒュッと息を飲んで固まった。

「……父さん?」

……なるほど、そういうやり口の相手か。

聖女の視線の先、スケルトンの手首には……色褪せたミサンガのような物が揺れていた。

鎧を着たスケルトンは、軽くこっちを手招きすると、やってきた方向へ戻っていく。

そして、ある程度の距離でこっちを振り返って止まり、また手招きをした。

「ン~? 攻撃してこないネ」

「呼ばれているようデス」

「ええー……みるからに罠だよね?」

「は、はい。露骨ですね……ど、どうしますか?」

オバケ達の言葉に嫌そうな声を出す相棒。困惑するラウラさん。

対して、夾竹桃さんは涼しい雰囲気のまま肩を竦めた。

「十中八九、聖女ちゃん連れて来たからこそ発生してる状況っぽいよねー」

だろうな。

クエスト絡みでダンジョンに来ると、敵の沸きや配置が普段と違うのはあるあるだってのをスレかwikiで見かけた記憶がある。

思いのほか静かで敵が見当たらないのもそういう事なんだろう。

パーティが別のロスティさんは、もしかしたら入った途端アンデッドに囲まれていたりしたかもしれない。

「ま、ここはメインでクエスト受けた人が決めるべきじゃないかなー、ってわけで……どーするー?」

問いかけられた相棒は……聖女が抱きしめたままの花束をチラッと見てから、待っているスケルトンの方を向いた。

「……罠だろうけども、ご案内してもらおっか」

「その心はー?」

「きっと案内された先に聖女ママがいるから」

聖女がその言葉にハッとしてキーナを見る。

「ここで暴れて聖女ママを隠されたら困るよ。……ちゃんと二人共解放しないと、ね?」

「っ、はい……すみません、取り乱さないよう気を付けますので、よろしくお願いします」

覚悟を決めなおした顔の聖女。

やりとりに夾竹桃さんもラウラさんも頷いて、方針は決定だ。

(相棒もそれで大丈夫?)

(いいよ)

キーナが受けたクエストだからな。

スケルトンが手招く大霊廟の奥には、祈るための祭壇のような物が置かれている。

そのさらに奥には壊れて朽ち果てた大きな扉があって、そこを潜ると地下へと続く階段があった。

……まぁ埋葬するのは基本的に地下だよな。

階段を下りると、石壁の通路が続く。

デューを先頭に、スケルトンから間を開けて着いて行く。

マリーを抱いたジャックとラウラさんが続いて、真ん中あたりに聖女。

その後ろにキーナと夾竹桃さん。

しんがりはネビュラに頼んだ。

俺は透明かつ【隠密】状態のまま、周囲の様子を確認しつつ隠れて進む。

通路と階段が交互に続く地下は、横穴のような部屋がズラズラと並んでいた。

軽く覗き見れば、部屋は壁が棚のようになっていて、そこに古い棺桶が納められている。

一見して無人の墓所を歩いている状態なんだが……何もいないように見えて、【感知】に結構な数の敵が引っかかるんだよなぁー……

これは、戻る時に退路を塞がれるやつじゃないか?

そんな不安を抱きながら、何度目かの階段を下りる。

……ところで、キーナが静かだ。

暗がりが多い地下墓地なんて所を歩いているのに、聖女の前をズンズンと歩いている。

(……相棒、大丈夫?)

(ん)

思いのほかしっかりした……なんか不機嫌そうな声色の念話が返ってきた。

(……もしかして怒ってる?)

(うん。聖女パパと聖女ママを人質みたいにして聖女ちゃん釣ろうとしてる黒幕は消し飛べばいいと思う)

なるほど、怒りで恐怖がどっか行ってるのか。

(相棒には怒ってないよ)

(うん、わかってる)

あれだろ、サメの口に飛び込んだ時みたいな苛烈スイッチが入ってる状態だ。

(レイス見た途端に飛び掛かったりしなければいいよ)

(……それはー……大丈夫)

本当か? じゃあその間は何だ?

……若干心配になった俺は、キーナが飛び出しそうになったら止められるポジションに移動して、行軍を続けたのだった。