軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ワニとカカポと御老人

川の対岸のジャングルにいたゴリラから、大砲のような投擲攻撃を受けて……俺達はようやく視線が切れてタゲが外れる距離にまで逃げて来た。

ずいぶん凶暴なゴリラだったな……アレがいる限り、あのジャングルはそう簡単に探索をさせてもらえないぞ。行く用事が無くてよかった。

「あービックリしたー……」

「酷い目にあった……」

「ワニィ……」

……ん?

「……ワニがいるが?」

「いるねぇ」

「……なんで?」

「ゴリラに投げられた子が一緒に逃げてきちゃったから?」

「逃げてきたワニィ」

何でだよ。

キーナとワニは顔を見合わせて『仕方ないじゃんね』みたいな顔で頷き合っている。何でだよ。相棒は言葉もわかってないはずだろ。

俺の『解せぬ』って雰囲気を感じ取ったのか、キーナは納得がいかない雰囲気で首を傾げてネビュラの背中に乗っている鳥を指した。

「そんな事言ったらカカポだっているじゃんすか」

「……いるなぁ」

「なんで?」

「ゴリラに投げられたカカポが……ネビュラの背中に乗ったから?」

「乗ったからでカカッポゥ」

そしてこのゲームは相変わらず動物の鳴き声がおかしい。

キーナ側だとそのまんま「ワニィ」と「カカッポゥ」と鳴いているらしい。なんで鳴き声はいつも微妙に雑なんだ。

「ワニの名前は『日和見ワニ』だって」

「……まさかワニなのにノンアクティブなのか?」

「カカポの名前は『カカオカカポ』」

「名前」

卵の代わりにカカオでも産みそうなカカポだ。

キーナがワニに「カカポと一緒に帰る?」と言いながらカカポを差し出すと……ワニはあんぐりと大口を開けて「ここでいただくワニィ」と食事の構え。

……ダメそうだな。

ワニだけさっさと先に帰らせる事にする。

「バイバーイ」

「ワニィ」

ワニは去って行った……ゴリラを避けるように、来た方向とはズレた所を目指して歩き去る。賢いワニだな。

「僕らはちょっと休憩してからカカポ返しに行こうか」

「だな……」

とりあえず、すぐにカカポを放ったらワニが出待ちしてて食われるかもしれないし……

ちょうどゲーム内では昼食の時間だから、火を起こして昼食を作る事にする。

「簡単にパンとスープでいい?」

「うん」

野菜とキノコとベーコンと……ベーコン入れてるから味付けは整える程度で……

「後は煮えるのを待つ」

「わーい」

パンにはチーズでも乗せるか……

焚き火でパンとチーズを炙りながらスープが煮えるのを待っている……と、ネビュラとベロニカがピクリと反応し、俺の【感知】にも気配が引っかかった。

「……さっきのワニ、か?」

「それと、ヒトがひとり来てるわ」

「え?」

気付いていないキーナがキョトンとしていると、近くでガサガサと草を踏む音がする。

念の為、声変わりシロップを飲んでボウガンを構えつつ警戒するが……

「まだいたワニィ」

「おお、やけにイイ匂いがすると思えば、ここか」

……さっきのワニと、その後ろに探検家って感じの装備を着た爺さんが現れた。

そして……ワニは野生モンスターの表記が出なくなっている。

「……このちょっとの間にテイムされたのか、ワニ」

「えっ」

「おお、カカポもおる! トゥティノコゥも! なんだここは動物使いの溜まり場か?」

「……あ、そういえばトゥティノコゥ、気絶したまま持ちっぱなしだった」

……情報量が多い。

* * *

「儂はクラン『インターネット老人会』所属の『元教授』じゃ」

何故か話をしている内に食事を奢る流れになっていた爺さんは、そんな感じに名乗りを上げた。

「……わかりやすいですね?」

「そうじゃろうそうじゃろう。名刺なぞ無くても一発じゃから楽で良いわ」

……この場合の『インターネット老人会』は、本当にインターネットで余生を楽しんでいるリアル老人会の意味なんだろうな。

出来上がったスープをよそってパンと一緒に渡すと、元教授は嬉しそうに受け取ってズズーッと啜った。

「うむ、美味い。お前さん達はCMで見たぞ。孫が大興奮しとったからサインとか後で貰えんか?」

「ん~、芸能人じゃないんで……」

「……ネビュラの肉球スタンプで良ければ」

「!?」

この元教授は、老人会の仲間達で エフォ(EFO) を始めて拠点を作り、それぞれが気ままに好きな事をして過ごしているらしい。

そして元教授は、現役時代は植物の研究をしていたらしいが……骨折してからフィールドワークが出来なくなり、リアルと遜色ないと噂のフルダイブVR世界が広がる エフォ(EFO) でフィールドワーク欲を満たす事にしたんだとか。

「最近は図鑑を作って遊んでおる。ボケ防止にもなるしの!」

「……ワニも研究の一環です?」

「いや、ワニはカッコいいから欲しかった」

「ワニィ」

ドヤ顔をするワニ。

「近くに川とジャングルがあるのだがな……凶暴なゴリラがいてなかなか近づけん。ワニをテイムしたくても中々川から上がってこんかったからの。1匹でうろついていてくれて良かったわい」

そして元教授はカカポとトゥティノコゥに目を向ける。

「……そのカカポも遠目にジャングルで見たぞ。よく連れてきたの?」

「いえ、連れてきたわけじゃなく……」

「ゴリラに投げられたのがついてきまして」

「ほう? ではお前さん達の従魔では無いのか?」

「違います」

「後でジャングルに返そうと思ってました」

「それを返すなどとんでもない! いらんならくれ」

「「どうぞどうぞ」」

そしてカカポもテイムされた。

(……僕らってさ、従魔の紹介っていうか、仲介すること多いよね)

(だな)