軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:突撃、インターネット老人会

クラン『インターネット老人会』の拠点が近くにあるらしく、御招待を受けることになった僕達。

というのも……

「老人会の『元写真家』がトゥティノコゥをテイムしてみたいと言い出しての……あらかじめそう言えば食わずにとっておいたものを……」

食べてみたらめっちゃ美味しかったからその後せっせと狩猟して……この拠点周辺ではあんまり見かけなくなっちゃったんだとか。

僕らが捕まえたトゥティノコゥはゴリラに投げられて気絶しているからまだ生きてる。だからそれを譲って欲しいらしい。

「食用にした肉ならまだとってあるはずでな、それを分けるのでひとつ」

「まぁ、そういう事なら……」

「……別に良いですけど」

僕らもたまたまゴリラが投げてきただけで、見つけて狩猟したって意識は無いしね。食べたかっただけだし。

咄嗟に捕まえて持って来ちゃったトゥティノコゥは、スヤスヤと穏やかに眠っている。

見た目は絵に描いたようなツチノコ。

テイムできるのかな……? 出来たとして、戦えるのかな? ペット枠? 何もわからないけど、観察するのを楽しみにしている老人会のヒトもいるらしいから、手探りなのも楽しめるんだと思う。たぶん。

「よし、着いたぞ」

案内されたのはジャングルから割と近い場所にある、丸太の防壁で囲まれたロッジが立ち並ぶ拠点だった。

あー、なんか探検家が滞在してそう。キャンプ場っぽくて、文明と大自然の中間な感じがする。

防壁の外には罠がたくさん置いてあった。『元マタギ』さんのなんだって。

そして拠点に入ると、夏のイベントで見たことのある袴姿のお爺ちゃんがいた。

「なんだ武芸の、来とったんか。孫はどうした?」

「今日は友人と約束があるらしい。……そちらは?」

「客人だ、トゥティノコゥを生け捕りにしてくれてな」

「ほう。……確か、夏の海上で見かけた姿だ。『武芸之翁』と申す」

「えっと、森女って呼ばれてます」

「……どうも、森男って呼ばれてます」

夏のイベントでエンペラースイカを真っ二つにしたお爺ちゃんは、元教授さんから「例のゴリラが川辺に顔を出したらしいから片付けてくれ」と頼まれて出かけていった。

「あの人も『インターネット老人会』だったんですか?」

「最初はその予定だったのだがな。あやつは孫に誘われるままホイホイと和風クランに行きおった裏切者よぉ〜。本人もそれが若干後ろめたいらしいから、こうしてやって来た時は安全確保に扱き使っとるのだ」

ハァッハッハッハ! と笑う元教授さん。

うん、裏切者とは言うけど、気安い間柄の冗談って感じ。

* * *

案内してもらった拠点は、お爺ちゃんお婆ちゃん達がそれぞれ自分の好きな事を好きなようにしてるんだなーってのがとっっっってもよくわかる拠点だった。

街として育てていないから、NPC住人もいない。

集会場みたいな大部屋があって、そこから渡り廊下がそれぞれの個室に伸びている。

そしてクランメンバーが個室を自分の城にして、好き放題やってる感じ。

とある若いエルフ女性(リアルはお婆ちゃん)の部屋は花がいっぱいで、フラワーアレンジメントで埋まってたし。

とある中年男性(リアルはお爺ちゃん)の部屋は魚拓と釣り竿とルアーまみれで、紹介してもらった時はお刺身つついてお酒飲んでたし。

かと思えば若い男性(リアルはお爺ちゃん)の部屋は犬が何頭もいて、相棒がユニークアイテムのボールを取り出したら『遊べ遊べ』ってもみくちゃにされてた。

「今はおらんが、『元登山家』は若い登山仲間が出来て山に行ったきり戻ってきておらん」

「あー、登山好きならゲームだとしても登れるの嬉しそうですねぇ」

「うむ、子供のようにはしゃいでおった」

他にも不在だったのは『元パティシェ』さんと、トゥティノコゥを欲しがっていた『元写真家』さん。

『元パティシエ』さんは菓子友の牧場やってるプレイヤーが良いミルクのとれる牛を手に入れたからって、アイスクリーム作りに行ってた。

『元写真家』さんはトゥティノコゥの連絡を入れたら急いで戻ってくるって返事が来たって。

「待たせてすまんな」

「いえいえ、街じゃない余所の拠点ってめったに見ないから面白いです。旦那も犬と遊べて嬉しそうですし」

「うむ、かなりの犬好きだなあれは」

相棒はさっきから楽しそうに犬と戯れている。

とりあえずトゥティノコゥは元マタギさんの檻をひとつ借りて、そこに入れておいた。

僕はのんびりお茶を御馳走になる。

「お孫さんとかもここを拠点にしてるんですか?」

「いいや、老人会メンバーの孫たちは孫たちで好きに遊んでおる。レベル上げにクエストだレアだなんだと忙しそうにしとるわ」

そうだね、MMOだからね。

それでも同じゲーム内にいるから、リアルよりは会える頻度が高くてお爺ちゃんお婆ちゃん達はウハウハらしい。

お小遣いの代わりに美味しい物や役立つアイテムを上げれば孫も喜ぶし、息子娘夫婦から苦情も言われない。

とっても今風にフルダイブVRMMOをエンジョイしているお年寄り達だ。

……そうやってのんびりと過ごさせてもらっていると。

突然、バタン! と音を立てて駆け込んできた熊の手で防壁の門が閉じられた。

……あ、違うわ。熊じゃない。

熊の毛皮装備を着こんだゴツいお爺ちゃんだ。

「……どうした元マタギ」

「襲撃じゃ。全員呼べ」

うう~ん、さすが年の功。

何一つ動揺の無い世間話みたいな口調でお知らせです。

秋イベントは、戦闘クエストが少ない代わりに各拠点の襲撃は普通にあるのだ。