軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:ファンタジー弓屋

「耳カワイイー」

「そう?」

シイタケさん、最高にカワイイ狐耳フードをありがとう!

ぱっと見はカッコいい暗殺者風の装備に、狐の耳がピコンとしてるのはとても好きです。

でも装備の説明にあるように、顔がめっちゃ見えにくくなったのはちょっと残念。隠密っぽさはマシマシでカッコいいんだけどねー。

「ついでに弓も見に行く? まだだったでしょ」

「あー、そうするか」

どうせならピリオに出てきたついでに全部済ませた方が楽だしね。受けたクエストもそんなに急ぎのモノじゃないし。

前に買い物した時に貰った地図によると……弓とボウガンのお店は、ピリオノートのプレイヤー居住区画にあるとの事。

街をグルッと囲んでる居住区画の北側。門の近く。

そこそこ家が増えてきた居住区画をテクテクと歩いて……弓矢が大きく描かれた看板のお店に辿り着いた。

「あったー、工房『弓張月』」

「わかりやすい」

看板のすぐ下に、ニターッと笑ってる金属製のお月様がぶら下げてあるのが良いセンス。

「では突撃ー」

扉を開けると……おおー! 色んな素材、色んな大きさの弓がズラッと並んでるー!

なんだかんだ僕ら、露店じゃない店舗のプレイヤーがやってる武具の専門店って初めてかな? いっつも観光ばっかりだもんねぇ。

「いらっしゃ……あー、いらっしゃい」

「こんにちはー」

いつもの渋いヒゲの人が、なんでか僕らを見て挨拶を言い直した。

まぁいいや。そんな事よりお店が面白い。

色んな木で作られた弓がいっぱい、黒いのも赤いのも白いのも。

「見て見て相棒、この弓みょんみょん動いてるー」

「えぇ……」

「あー、それは【ダンシング柳のスウィングツウィッグ】ってのを使ってみたんだが……やっぱ自己主張激しいよなぁ」

なんか聞き覚えがあるよ、その面白そうな木の名前。そしてどこの部位なのその名前。

いつかダンシング柳の生えてる所に行こう。そして本物を見たい。目標がひとつ出来ました。

とりあえず、相棒的には動く弓は使いづらそうでノーサンキューらしい。残念。

「そろそろ1段階上のにしようと思うんですけど……良いのあります?」

「今使ってるのが……あー、このくらいか。だったら……」

真剣な相談が始まったから、僕はぶらーっと店を隅々まで見て回る。

みょんみょん弓は面白かった。他にも面白い物無いかなー。

……あれ?

なんか落ちてる……ドングリ?

……ドングリを拾おうとしゃがんで手を伸ばす……と

すぐ横の床板が一部パカッと床収納の扉みたいに開いて、中からネズミが出てきた。

ネズミもドングリに手を伸ばして、僕を見て硬直する。

見つめ合う、ネズミと僕……

……え、ペットかな?

それとも、確かボウガン担当のお兄さんは小人だったはずだから……お友達?

なんとなく振り返ってヒゲの人をチラ見して、ネズミに視線を戻すと……ネズミは気まずそうに目を泳がせた。

そして、僕に向かって指を一本立てた手を口の前に持ってきて『シーッ』ってした。

え、カワイイ。

なにそのアニメ的な動作。

なんだねキミは?

お忍びのネズミ族とかそういうのかね? 服とか着てない普通のネズミっぽいけども。

僕はもう1回ヒゲの人が相棒との話に集中してるのを確認して……床に落ちていたドングリを指先で転がしてネズミに取らせてあげた。

たぶん、キミの落とし物でしょ?

キョトンとするネズミちゃんに、僕も指を一本立てた手を口の前に持ってきて『シーッ』ってする。

ネズミちゃんは慌てて床板の下の穴にドングリを入れると、ペコッと一礼してから小さい手でバイバイしてくれた。

カーワーイーイー!

バイバーイって僕も小さく手を振り返すと、ネズミは床板を元通りにしながら引っ込んでいった。

「……奥さーん、困りますねぇー、俺の友達を勝手に餌付けされちゃあ」

「あびゃっ」

振り返ると、腰に手を当てて仁王立ちしながらニヤリと笑っている小人のボウガン職人さん。

……ん? でも待って?

「……友達なんです?」

「おう、なんか知らんがピリオに住んでるネズミは時々話が出来る理性的なヤツがいるんだわ」

「へぇ~!」

メルヘーン!

「客がビックリするから店から出入りすんなって言ってんのに、まーたドングリ拾いの行き来にココ使いやがって……まぁ、その客がドングリ渡すような客でよかったけどよ」

どうも、ドングリ渡すような客です。

……いや、落とし物渡しただけなんで。確かに追加でドングリあげようかなーとか魔が差してたけど、思いとどまったんで。

とかなんとかしゃがんだまま話してたら、相棒がやってきた。

「……何してるの?」

「ネズミがいたの」

「ネズミ?」

「ドングリ落としてたから、渡してあげた」

「へぇー」

そして小人さんは相棒を見るとわかりやすく目を輝かせて飛び上がった。

「おうおうおうおう! 久しぶりじゃないですかお得意様ぁー!? 待ってたんだぜお前の事をよぉー!」

「兄貴、ほどほどにな」

ヒゲの弟さんの言葉が聞こえているのかいないのか。

小人さんは相棒に何か見せたい物があるらしく、小さな体に似つかわしくない速さで工房の奥へと駆け込んで行った。