軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幕間:重要任務は突然に

(……どうしてこうなった?)

ピリオノート城騎士団所属の兵士プレイヤー『ゲオルク』は、呼び出しを受けてやって来た部屋に立ち並ぶ面々を見て、内心穏やかではいられなかった。

ゲオルクは、投げっぱなし系RPGが苦手である。

自由度が高すぎると、逆に何も出来なくなってしまうタイプ。

グラフィックとシステムに惹かれてゲームを始めた直後の入植先を選ぶ広場で、たまたまβ勢らしき人物がそうでない人物に『このゲームは自由度が高いのがいい』と話しているのを耳にして不安にかられ。

受付NPCがあまりにもリアルだったからついつい相談した結果、お城の兵士を勧められたのでそのまま就任したという経緯がある。

お城の兵士プレイはなかなか性に合っていて楽しい。

初期から兵士用の鎧を支給してもらえたし、先輩兵士が色々と教えてくれる。

任務という形でおつかいから討伐に調査まで色んなクエストが定期的にくるし、あちこちで見かけた気になる事を報告すればそこからまたクエストが生えたりするのが面白い。

そんな感じでせっせと仕事をしていれば、上司の覚えもめでたく騎士団長に期待の新人として紹介されてちゃんと進んでいる感もあり、兵士にやりがいを感じていた。

……だがそれでも、自分は普通の、極々普通の一般的な兵士プレイヤーだから、有名プレイヤーみたいに重要そうなクエストに関わったりはしないだろうと思っていた。

思っていたのに!

他ならぬ騎士団長に呼び出されたのは、城の尖塔の上の部屋。

重要な会議をするための一室。

まさか自分がここに入る事になるとは、と思いながらやってきて……そこに揃った面子にひっくり返りそうになった。

騎士団長ラッセル・コールビート

魔術師団長サフィーラ・ロズ

この2名が並んでいるだけでも『何が始まるんです?』感が凄いのに。

ちょくちょく話をする間柄の、サフィーラ魔術師団長の大ファンなメイドプレイヤー、オリビア。

そしてβ勢であり、先日ついに金で男爵位を買った商人プレイヤー、行商人パピルス。

さらに……夏のイベントでムービーに映っていた謎の集団の1人、森フェアリー。

……え、なんで自分はここにいるんだ?

ゲオルクは何でもない顔をしてキリッと立ちながら、内心で混乱している。

自分いらなくないか?

しかし扉は背後で閉められ、偉い人2人は『よし』って感じに頷き、話が始まる。

「全員揃ったな、では始めるぞ」

そうしてプレイヤー達に告げられたのは、中々に重要な内容だった。

サフィーラ魔術師団長が何者かに悪夢を見る呪いをかけられていた事が発覚。

これは開拓地に対する明確な敵対行為ということで、秘密裏に調査を開始する事。

そしてその極秘任務を受けるメンバーとして、ゲオルク、オリビア、パピルスが選出された。

「オリビアは私付きの専属メイドだ。初期入植の貢献勲章持ち。これまでの仕事ぶりでも信用に足ると判断できる」

オリビアは嬉しそうに微笑んで優雅に一礼する。

「ゲオルクも新人の中では抜きん出て優秀で実直だと騎士達からの評価が高い。こういう仕事に向いていると判断します」

それはどうも。

ゲオルクは少し緊張しながら敬礼した。

「そして行商人パピルス……初期入植の貢献勲章持ちで、男爵としての名は『パピルス・スワド・カミィ』。多額の献金から男爵となり、サウスサーペント港への協力からロズ家と同じ派閥に所属している。……期待を裏切る真似はしてくれるなよ?」

「もちろんです」

行商人パピルスが食えない微笑みを浮かべて一礼する。

そして……

「さて、もう2人紹介しよう。……今回の呪いについての情報提供者繋がりとでも言うか……まぁ裏から支援する担当だとでも思ってくれ。名前は出せんが……そっちの通り名は『森フェアリー』だったか?」

「まぁそれで通じると思う」

民族系の衣装で全身を覆ったフェアリーが気安く片手を上げる。

……が、2人?

「……もう1人は?」

「いるよー」

突然、誰もいないはずの窓辺から声がして、プレイヤー3人は咄嗟に武器を構えた。

トップ2人と森フェアリーは微動だにしない。

部屋の中が、若干薄暗くなったような奇妙な感覚。

瞬きの間に、その窓の縁には

森夫婦と良く似た衣装の誰かがだらりと座っていた。

「……ほほう」

不敵に笑うパピルス。

ゲオルクとオリビアは、上司を守るために立ち位置を変えた。

その様子を見て、謎の森衣装は嬉しそうにヒャヒャヒャと笑う。

「イイねーその反応。驚かし甲斐があるってもんだよねー」

「ほどほどにしとけよ」

「ハーイ」

凄い。

ゲオルクは警戒ロールプレイをしつつも感心していた。

この2人、怪しいNPCにしか見えない!

「隠れていた二人目は腕利きの呪術士だ。今回の件で、ここにいる全員を呪いから守ってもらう」

「本職だからねー、お任せあれー」

呪術士なんて職業もあるのか。

どこでどんなスキルを取れば生える職業なのか見当もつかないが、まぁ変わったプレイをしているらしいあの集団の一員ならおかしくも無いか。

……ん? ということは

「ロズ魔術師団長は、既に呪いは解かれているのですか?」

「いいや、まだだ」

返事をした魔術師団長は不敵に笑う。

「せっかく腕利きの協力を得られるのだ、こちらが後手にまわっていると思わせた方がいいだろう。悪化を防ぐための処置は既に済んでいる」

そう言って、テーブルに乗せられたトカゲ?のシルエットが見える卵に目線をやった。

そうして始まったロングチェーンクエスト。

なんだかんだゲオルクはそのクエストもキッチリ役目を果たすのだが……やはり内心ではずっと

(平凡な一兵士の自分で本当にいいのか?)

と、思い続けていたのであった。