作品タイトル不明
キ:気になる事を確かめておく
とりあえずメイドさんのお手紙はそっとインベントリに入れて後回し。
それよりも、僕らは魔術師団長さんの呪いの件で、もう少し気になる事があった。
「悪夢の呪いってさ……夾竹桃さんだったらなんとか出来たりしないかな?」
「それ、俺も思った」
流石に隠遁仲間を勝手に紹介するのはちょっとよろしくないかなーと思ったから、城では何も言わずに応急処置的なやりとりだけしてクエストクリアしてきたけど。もしも呪いをなんとか出来るならその方がいい。
と、いうわけで、現在ログイン中の同盟メンバーはー……夾竹桃さんと、カステラさんと、ド根性さん。
とりあえず夾竹桃さんがいればいいや、同盟チャットどーん。
キーナ:こんにちはー
キーナ:夾竹桃さん、いま大丈夫ー?
夾竹桃:はいはーい、大丈夫なうー
キーナ:えっと、お城の魔術師団長さんが悪夢を見る呪いをかけられてたみたいで
キーナ:夾竹桃さんは、そういうのなんとか出来たりする?
夾竹桃:唐突なおおごとー!?
カステラソムリエ:おいなんだそれどういうことだ
カステラソムリエ:魔術師団長って、サフィーラだろ?
ド根性ブラザー:実に陰謀の匂いがする話である!
「おおん、同盟チャットが混乱しちゃった」
「うん、それはそうなるだろ」
とりあえず経緯を説明する。
……なんか今日は経緯の説明ばっかりしてる気がするなぁ。
夢守の事も含めてひと通り説明。
キーナ:で、とりあえず夾竹桃さんに訊いてみようと思いました。イマココ!
夾竹桃:この夫婦はよー!いっつもこうなんだからさー!
カステラソムリエ:ツッコミどころしかねぇ!!
ド根性ブラザー:さすがの引きの良さである!
夾竹桃:まぁなんとか出来るか?って言われたら、たぶん出来ると思うー
夾竹桃:呪い返しとか解呪とか、呪術でそういう事は出来るらしいしー?
夾竹桃:レベル上げもそこそこ頑張ってるからー
おおー、すごい!
でも話はそこで終わらなかった。
夾竹桃:ただ、なーんにも城にツテが無いんだよねー
夾竹桃:βテスターじゃないしー
夾竹桃:周りから認識出来ないようにして潜入して直接こんにちはーしてもいいと思うー?
カステラソムリエ:やめとけ、出禁になるわ。
ド根性ブラザー:うむ!目に浮かぶようだな!
カステラソムリエ:俺が連れてくわ、サフィーラ気になるし。
カステラソムリエ:夾竹桃、変装して合流な。
夾竹桃:よっ、βテスター!
ド根性ブラザー:もしも物理が必要になったらこちらにも声をかけるといい!
キーナ:じゃあよろしくお願いしまーす。
うん、二人で魔術師団長さんに会いに行ってくれるなら安心だね。
「解決した!」
「丸投げとも言う」
明日も仕事な僕らは、そろそろログアウトしないといけない時間。
2人はまだ時間があるっぽい。
呪いなんて、対策は早い方がいいだろうからね、この後すぐ行ってくれるって。助かる〜。
* * *
さて、そんなわけでログアウトして、僕らは寝る支度を終えてベッドの中。
眠気に負けるまでの少しの間の時間で、メイドさんが教えてくれた名前を有志wikiで調べてみる事にした。
「名前なんだっけ?」
「えっと……確か『ヴィリジス侯爵家』」
「あー、そんなだったそんなだった」
有志wikiには、ゲーム内のお貴族様関係が専用ページにまとめられている。
プレイヤーによっては、貴族の権力争いとかにゴリッゴリに巻き込まれるようなクエストばっかりやってる人もいるんだって。
そういう人達が注意喚起も兼ねて情報を提供してくれている。
今のところは名前だけ出てくる貴族とか、もうピリオに別宅を建てて住んでる貴族とか、そういうのが分かるようになってて助かるね。
いつぞやのオバケ屋敷で派手にやらかしてた男爵も一応載ってた。色んなプレイヤーからヘイト集めてて、もう爵位剥奪されてるから『m9(^Д^)プギャー』って顔文字が備考欄に入ってて吹いた。
さて、今回僕らが名前を知った『ヴィリジス侯爵家』さんはー?
「えーっと……『ロズ公爵家の、つまりサフィーラ・ロズ魔術師団長の家の政敵』!」
「はい、察した」
お家単位の敵ですねぇ!
ズラズラ書かれている情報によると……
ピリオノートに別宅を建てていて、当主はいないけど跡継ぎが住んでいる。
跡継ぎの名前は『ファトゥーロ・スワド・ヴィリジス』。
成人済みの若者で、サフィーラ・ロズ魔術師団長を良く思っていない感じ。
プレイヤー冒険者の事も見下している雰囲気。
理不尽な命令や叱責こそ無いが、ちょいちょい言葉にトゲとか毒があるから、それが好きってプレイヤー以外には人気が低い。
確証が無いが、サフィーラ・ロズ魔術師団長と懇意にしているNPCが危機に陥った数件に関わっている可能性有。要注意。
今のところ、わかりやすい噛ませ敵対NPC説が有力。
「……だってさ」
「なるほど」
呪いの犯人候補の筆頭って感じなのかな。
まぁ僕らプレイヤーは襲われて死んだ所で死に戻るだけだからいいんだけどさ、NPCを狙われるのはイヤだねぇ。
でも僕らはそんなに仲の良いNPCなんて……
「……いや、ちょいちょいいるなぁ?」
「何が?」
「仲良くしてるNPC、狙われたらイヤだなって」
「あー……でも魔術師団長と仲が良いNPCはいないんじゃ?」
「かな?」
たぶんね?
魔術師団長の交友関係とか知らないけど。
とりあえず、この要注意貴族の事は頭の片隅に置いておくことにして、今日はおやすみ!