軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:暗雲を知らせる手紙

アーチから島に戻った俺達は、まずアーチに絡みついて実る豆を、手分けして大量に収穫した。

もしかしたら、話は魔術師団長だけで済まないかもしれないからな。騎士団長なんかも、知らないだけで狙われていたりしたら厄介だ。

豆もドリームキャッチャーも、念の為お香も、それなりの数をぱぱっと用意する。

相棒もペタの卵を持って行く事にした。

実物があった方が納得しやすいだろう。

アイテムを揃えたら、変装状態のままでピリオノートへ転移。

急いで城へ向かう。

入口の兵士に魔術師団長に書いてもらった手紙を渡せば、すぐに話は本人へと通った。

流れるようにいつもの応接室へ通されて、見覚えのあるプレイヤーメイドさんにお茶とお菓子を貰う。

……うん、美味いな。

そしてそれほど経たない内に、渋い顔をした魔術師団長がやって来た。

「詳しい話を聞かせてもらおうか」

自分が書いた自分宛の手紙を片手に、頭を抱えて溜息を吐く魔術師団長。

信じられないような話を信じるしかないみたいな感じで、悔しそうな顔をしている。……本当に夢の事は覚えて無いんだな。

キーナと俺は、事の経緯を説明した。

睡眠障害の原因を唐突に第三者から伝えられた上に、その悪夢を本人が覚えていないと言われる心中はもうお察しするしかない。

「そういう事か……まぁ、これでも高位貴族で開拓地の責任者の1人などという立場だ。心当たりには事欠かん」

「あ、それ夢の中でも言ってましたよ」

「……そうか」

呪われているという事実と、夢の中で話し合った対抗手段を伝えれば、魔術師団長は納得したように頷いた。

「記憶に無い私が書いた手紙と内容は同じだな……いいだろう、お前達と夢の中の私を全面的に信用しよう」

そう言うと、魔術師団長はメイドに指示を出して、どこからか例の夢守の卵と器をひとつ持ってこさせる。

そして器に俺達が収穫してきた豆を盛って、そこに夢守の卵を乗せた。

……すると、すぐに光の輪に包まれる卵。

「相変わらず乗せたらすぐ光るね」

「レンチンかよ」

そして光が収まると、そこにはペタの卵と同じ、夢守のシルエットがウロウロと動く卵があった。

「夢守……なるほど、これで孵化した状態なのか。興味深い」

「後はこれを枕元に置いて眠れば、夢の中で会えるはずなんで。そうしたら契約出来ます」

「ああ、わかった」

状況が状況なので、この後仕事を切り上げて睡眠を取って契約するらしい。

まぁどう考えてもその方がいいだろう。

俺達は収穫してきた豆と、ドリームキャッチャーやお香を、他にも狙われそうな人がいたら使って欲しいと言って全部渡した。

「重ね重ねすまんな……これだけ貢献しているなら、私から騎士爵に推薦する事も可能だが、どうだ?」

「いやいやいやいやいや、勘弁してください」

やめてくれ。

キーナのお断りの言葉と一緒に首を横に振る。

その笑顔の半分は純粋な感謝なんだろうけど、もう半分に『出来の良い部下が欲しい』って感じの願望が透けて見えてるから。取り込もうとするな。

……そして俺1人だとうっかり断れないかもしれないからキーナがいてくれて本当に助かった。

まぁ半分冗談だったようで、特に食い下がる事もなく話はそこで終わる。

黒幕の心当たりも、聞いてしまうと貴族のいざこざがイヤでも降りかかって来るかもしれないから、とりあえずは聞かずに終わっておいた。

俺達は珍しいアイテムを持ってるから、巻き込まれるとなると本当に貴族関係がメインになるくらい巻き込まれそうだからな。

たまにでいい、たまにで。

「今回も助かった。礼を言う」

──クエスト『悪夢の呪いの対抗手段』をクリアしました。

報酬は何がいいか訊かれたが、特に何も思いつかなかったから『何かあったら相談に乗ってください』と言っておいた。

……そうしたら、渡されたのがコレだ。

【ロズ公爵家の小勲章】…品質☆

ロズ公爵家に多大なる貢献をした証。これを城の入口で提示すれば、サフィーラ・ロズ魔術師団長に直接取り次いでもらえる。

受け取った本人の所有扱いになっていれば、一部を除くNPCの好感度が僅かに上昇する。

手放すとロズ公爵家からの好感度が大きく下がる。

(小勲章、2つ目!)

(お貴族コレクションかな?)

魔術師団長の好感度が一定ラインに到達した感がある。

ひとまず俺達の仕事はここまで。

魔術師団長に礼を言われながら別れて、プレイヤーのメイドさんに先導されながら城の出口へと向かう。

「本日はありがとうございました。こちら、拠点へ帰還してからお読みください」

そう言って、人気のない所で渡されたのはひとつの封筒。

……よくわからないが受け取って、拠点へと帰還する。

「……ようするに、他の人に見られないようにして読んでねって事だよね?」

「たぶん?」

いったい何を渡されたんだ……寝室に入ってから二人で封筒を開けて、中の紙を取り出した。

──『ヴィリジス侯爵家にはご注意を』

「……これって黒幕だと思う?」

「……どうかな」

ただの忠告だからな……俺達は何も知らないと言い張れる余地は残っている。

NPCから直接訊かなければセーフだろう。……セーフだと思いたい。