軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:悪夢の呪いの対抗手段

まさかまさかの魔術師団長さんが夢の主!

でも僕は驚きもしたけど、少し納得もしていた。

なんか、ずーっといまいち睡眠取れてなさそうな感じがしてたもんねぇ。

「えっと……つまり魔術師団長さんは、誰かに悪夢を見る呪いをかけられている?」

恐る恐る確認すると、魔術師団長さんはうんざりした顔でひとつ頷く。

「そうなるのだろうな。なぁに、これでも高位貴族で開拓地の責任者の1人などという立場だ。心当たりには事欠かん」

魔術師団長さんが言うには、開拓地に来てから夢見が悪くなって、眠りが浅かったり夜中に何度も起きたりしていたんだって。

「同時期から何度も同じ悪夢を繰り返して見るようになっていたが、起きている間は悪夢の事を忘れていてな……どれだけここで『おかしい』と考えても、具体的な対策が取れずに困っていた」

最初は環境が変わったせいかと思って、色々試したりはしていたみたい。

僕らが作ったお香なんかは確かに効果があったみたいで、悪夢の中で襲われた時に対抗する力が強くなったりしていたんだとか。たぶん、ペタちゃんが言ってた悪夢デバフが緩和されてたんだろうね。

「特にメイドが手に入れてきた蜘蛛の巣のような御守りは助かった。アレをつけてからは目に見えて夢の中での魔法が強くなったからな。アレもお前達の作った物だと聞いた、礼を言う」

「あー、役に立ってたなら良かったです」

それでも貫通しちゃってたのは……やっぱり呪いだからなのかな?

「ねぇペタちゃん、魔術師団長さんの呪いってなんとか出来ない?」

「不可能。ペタちゃんではその呪いにまだ勝てない」

ありゃ。

まぁ、今日レベル上げ始めたばっかりだしねぇ……

すると、僕らのやりとりを見ていた魔術師団長さんが、ペタちゃんをジッと見つめた。

「……それはなんだ?」

「ペタちゃんはムモリ、夢魔である」

「ほう?」

「蜘蛛の巣の御守りから時々生まれる卵を孵したら、この子だったんですよ」

簡単に説明すると、魔術師団長は驚いたように目を見張った。

「……それはまさか、御守りの下に転がっていた奇妙な卵か?」

「あ、それですそれ」

僕は簡単に魔術師団長さんに夢守の生態と僕らの経緯を説明した。……って言っても、分かってるちょっとした事だけだけど。

すると魔術師団長さんは、「ふむ……」って少し考えてから僕らに言う。

「……その卵を孵せる豆、譲って貰う事は可能か?」

「あー、いいですよ」

「……まだ卵持ってるんです?」

「持っている。生憎研究しようと寝台からは離してしまっていたがな……そういう存在ならば、孵して契約すれば今の私にはこの上ない助けとなるだろう。違うか?」

「肯定。ムモリは契約した主人を夢の中で守る。強くなれば、いずれは呪いも食い殺せる」

なるほど、魔術師団長さんがムモリと契約しちゃえばいいんだ。今回なんとかしても、偉い立場だからまた同じ事になるかもしれないしね。

「あ、でも……この話の事、覚えていられます?」

「む、どうだろうな……お前達からの進言ならば無下にはせんと思うが……」

「んー……ペタちゃんにも、夢を忘れちゃうのはどうにも出来ない?」

「不可能。記憶の喪失は呪いに組み込まれている」

って事は、僕らが起きてる魔術師団長さんに直接伝えた方がいいのかー。

……なんて考えていたら、目の前にポンッとシステムウィンドウ。

──クエスト『悪夢の呪いの対抗手段』を受託しますか?

なるほど。お知らせするだけでも依頼は依頼だもんね。

受諾っと。

「すまんが頼む」

「構わないですよー……あ、そうだ!」

僕らはアーチから陸続きで夢に入って来てるから、眠った時と違ってインベントリが使えるんだよね。

そこから、紙とペンを取り出して魔術師団長さんに渡す。

「自分にお手紙書いて下さい。それ持って魔術師団長さんに渡すんで」

「そんな事が出来るのか……」

なんか凄い顔で見られた。

首を傾げながらサラサラと書き上げる魔術師団長さん。

一応僕らは内容を見ないようにしておく。

書いた手紙は折りたたんで、魔術師団長さんはそこに魔法で封蝋みたいな物を押した。

「魔力で封をした。これで私が自ら書いた物だと覚えておらずとも伝わるはずだ」

「へぇ~! そんな魔法あるんですね」

「貴族の嗜みだぞ。お前達も貴族になるなら覚える必要があるな」

「そんな予定は無いです!」

ククッ、とイタズラっぽく笑う魔術師団長さん。

勘弁してくださいよー。ゲームの中でそんな責任ある立場みたいなのやりたくないでーす。

とりあえず方針がまとまった……そのタイミングで、夢の領域が白み始める。

「む、そろそろ目覚めるか」

「あれ、そういえば魔術師団長さんって今日はお仕事お休みです?」

「いや、まさしく仕事中だ。……うっかりうたた寝でもしていたのだろう……不甲斐ない、部下に示しがつかん」

渋い顔で片手を顔に当ててため息を吐く魔術師団長さん。

……たぶん、疲れてるんだろうなーってメイドさんとかは寝かせておいてくれたんだろうなぁ。

「では、頼んだぞ」

「はーい」

「……了解です」

夢の領域と一緒にホワイトアウトしていった魔術師団長さんを見送って、僕らは現れたアーチを潜った。

思いがけない所でとんでもないこと聞いちゃったけど、最悪の展開になる前に防げそうで良かった良かった。

トップ3の1人が呪われて衰弱死とか、とんだ大事件になっちゃうからねぇ。