軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:それはもう賑やかに

ジャック達が自分で用意した品物を売っている横で、僕は自分の本をのんびりと売っていた。

敷いている布を少し横長にして三兄弟に会計してもらってよかった。

僕の所にやってくるお客さんは、なんだか少しお話をしていく人が多かったから。

「ええー!? 森女さんも人形作る方だったんですね!?」

『いらっしゃいませ』

圧が強くて思わず筆談用の看板出しちゃったよ。

マリーを見て歓声を上げたヘアスタイルが縦ロールのお嬢さんは、あのお嬢様のクランのメンバーが着ていたのと同じ制服を着ていて、腕にはそっくりな表情を浮かべるビスクドールが抱かれている。

「あ、大変失礼いたしました。クラン『麗嬢騎士団』所属のレディ・ココロと申しますー。この子は私の人形のアントワーヌちゃんです」

「アントワーヌと申しますー」

わぁ、このお人形も動いて笑って喋ってる。

似た者主従って感じの二人にぺこりと会釈を返す。

二人はスケッチしているマリーに揃ってキラキラした目を向けると、ポカーンとしている僕らを余所にすごい勢いで喋り始めた。

「お姉さま。この方、大人っぽいボディでお仕事出来る感じがしますわ!」

「ねー! ロリ体型が頭の中で常識になっちゃってたよ! そっかこういうのも有りかぁー! 背中から虫の手が出てるのはなんでです?」

僕は慌てて声変わりシロップを飲んだ。

「もともと【裁縫】の出来る子が欲しくて、そこに【死霊魔法】使ったら蜘蛛のオバケが来てくれたんです」

「あ、そっか森女さんですもん、オバケ入れてるんですね! そっかそっか、精の自然発生じゃなくてスキル優先にしたらそういうこともあるんだぁー。勉強になりました!」

「いっぱいある手でいっぱいお絵描きしてる、すごいですわ!」

「ねー! すごいよねー! 職業婦人感がある、これはこれで中世ファンタジーに噛み合ってるからすごいなぁー」

レディ・ココロさんとアントワーヌちゃんは、ひとしきりマリーを褒めちぎり、あーでもないこーでもないとお人形作りについて職人っぽい会話を繰り広げ、僕によくわからないお礼を繰り返し述べてから……何故か人形師が集まっているスレを「よろしければ」と勧めて去っていった。

一応本も一冊ずつ買ってくれた。

「……マスター、結局なんのお話だったのですか?」

「……マリーちゃんが可愛いってお話かな」

もうそういう事でいいや。

あの熱量がデフォルトなんだとしたら、やっぱり僕は専スレに書き込むような人種ではないのだ。

ROM専でいいよ、ROM専で。

* * *

「カラスちゃん!! えらかったねぇえええええ!!!」

店先で本を読んでダバーッと泣き出したのは、小鳥とカラスを連れたテイマーの女性だった。

……この人の声、なんか聞き覚えがあるんだよね。

一緒の小鳥ちゃんも、色こそ違うけど……もしかして、いつぞやのフリーマーケットで、最初に鳥籠をお買い上げした人?

「この! この石碑っで! ピリオにあびまずが!?」

「お城の中庭にあります」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

そんなにページも文章も無い小冊子だから立ち読みオッケー、お城の許可も出てるから前と一緒で複製・販売好きにしなー状態なんだけど……まさかその場で号泣されるとは思わなかった。

お姉さん、両肩の鳥が呆れた目で見てますよ。

……あ、泣きながら自分のカラスを抱きしめた。

あ、抱きしめられたカラスの目が死んだ。

「二冊ともぐだざいぃいいいい……」

「……まいどーも」

チャリーン。

本を渡すやりとりの間に腕から逃れたカラスちゃんが、ふと僕の店の籠の中に目をやった。

「カァ!」

「ん? リンゴ食べたい? ずびばぜん、これもくだじゃい……」

「……まいどーも」

チャリーン。

女性のカラスちゃんは、ためらいなく知恵の林檎をガガガガッと食べる。

そして光る。進化の輝き。

そしてクチバシを開いた。

「まったくもう、見てらんないわ! ワタシはそこに書かれてる個体じゃないってのよ! 間違えないでちょうだい!」

「アィエエエエエエ!? また知らない進化したあああ! なんでぇえええええ!?」

おめでとうございます、元気なワイズクロウです。

* * *

時折、『占いは今日はやってないのか?』的な問いに今はやってないですと返答しながら売っていると。いつもリンゴを回収していくアカデミックな集団がやって来た。

この人たち、営業時間に間に合うと普通にお買い上げもするんだよね。

リンゴを齧って、出てきたTipsを読み上げてメモを取り……なんてやっていた集団。

そのうちの一人が、僕の書いた本に目を留めて手に取った。

……そっちは、フクロウちゃんの遺してくれた使徒の情報本だね。

パラリとめくって立ち読みを始めたその人は、少しずつ目を見開いて、何回も読み進めては戻り読み進めては戻りを繰り返した。

「あの、これ……ガチです? 幻獣って……本当に?」

コクリと頷くと、その人はワナワナと震えて……本の代金を素早く払ってお買い上げ。

そしてパンパン!と高らかに手を鳴らしてアカデミック集団の注意を引いた。

「刮目! 全員、これ読めぇ!」

わらわらっと集まるアカデミック集団。

集団は内容に目を通してそれぞれがそれぞれのリアクションで驚いた後……一斉に隅っこへガサササっと移動してウィンドウをポチポチやり始めてしまった。

(……え、何? なにごと?)

(……たぶん、考察スレじゃない?)

(ええー?)

スレで話し合いするんだ???

そこに固まってるのに???

まぁ、ログが残る利点はあるかもだけど。

……うん、考察スレも、僕は参加とかは出来そうにないね!

(……僕はやっぱり、相棒と一緒が一番落ち着く)

(何を今更)

相棒の返事は、ニヤリと笑ってる感じの声色だった。