軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:夏に染まったゴースト達

ちょっとカオスな客が来たりもしていたが、俺達の露店は昼になる前に商品はほぼほぼ売り尽くしていた。

「いっぱい売れたネー」

「デスナ」

「楽しかったです」

ほのぼのと余韻を楽しむ三兄弟に、相棒が近付いて小声で声をかける。

「じゃあ皆、せっかくだから売り上げでお買い物しておいで」

驚く三人に、相棒が広場の端を指す。

「僕らはあっちで占い屋さんやってるから、のんびりお店見て回って好きな物買っていいよ」

普段は外に出てきたりしないからな。

たまにはそういうのも良いだろう。

「……ベロニカ、迷子にならないようについててやって」

「仕方ないわねぇ」

デューがある程度人馴れしてるし、きちんと現場判断と道案内ができるベロニカが一緒なら、NPCだけでも大丈夫だろう。ちょっと世間知らずで無邪気だけど、精神年齢はそこまで低くはないからな。

「何かあったら、すぐに戻って来るんだよ。誰に何を言われても、困ったら戻って来るか、ベロニカに僕らを呼びに来てもらうこと」

「ワカッタ!」

「承知いたしマシタ」

「はい」

わーい! と喜びながら三人と一羽は露店広場へ繰り出していった。

(さてさて、どんなもの買ってくるだろうね?)

(さぁ?)

あの面子が買い物で何に興味を持つのか……あまり想像が出来ない。オバケのNPCのAIは何を選んで来るだろうな。

* * *

そしてしばらく占い屋をやっていると、特にトラブルも無く三兄弟とベロニカは帰ってきた。

「マスター、タダイマー!」

「ただいま戻りマシタ」

「戻りました」

「特に何も無かったわよ!」

……うん、無事で何よりだ。

ジャックは星の形のサングラスをつけて、マント扱いでアロハシャツ羽織ってるし。

デューはハート型のサングラスに、果物ジュースが並々と注がれたストロー付きのバケツを両手で抱えて、背負った籠に夏らしい果物を山盛りに。

マリーは花弁付きのサングラスをかけて、夏っぽい真っ白なワンピースに編み上げサンダルを履いて、麦わら帽子を被っていた。

それぞれ、買った物が入っていると思しき背負い袋はパンパンだ。

ついでにベロニカはサングラスこそ無かったが、大ぶりのガラスがゴロゴロついた『ザ・光り物』って感じの首飾りをつけている。

……めっちゃ夏に浮かれたバカンス集団が出来上がっていた。

「……おかえり」

「おかえりー。楽しかった?」

「ウン!」

だろうな。

周りのプレイヤーっぽい人達も微笑ましい顔でジャック達を眺めている。

あらかじめ看板に追記していたように、ジャック達が戻ってきたので今日の占い屋はここまで。惜しまれつつ閉店して、売れ残りのリンゴをいつものスレ民に売り払う。

片付けて露店広場を出て、人の少ない適当な木陰に布を敷いて腰を下ろした。

「どんな物買ってきたの?」

「あのねあのネー! 夏と言えばサングラスなんだっテ! あとアロハ!」

誰だジャックに適当なイメージを吹き込んだ奴は。

黒いエレガントなスーツにド派手なアロハマントと星型サングラスを装備したパンプキンヘッドは視界の暴力だぞ。

(てかジャック、頭の内側が燃えてるのにサングラスの意味あるかな?)

(無いだろ)

仮面の内側で苦笑いする俺達に、ジャックは背負い袋をゴソゴソと探って目当ての物を取り出した。

「コレ、マスターと旦那サマの分ネ!」

俺と相棒は、負けじとド派手なアロハシャツとサングラスを渡された。

「うん、ありがとう。拠点で着るね」

「ありがとう」

「エヘヘー」

他に買った物は鍛冶の道具やら玩具やらだった。……袋の中身が全部アロハじゃなくて良かった。

「自分はこちらヲ」

デューがズズイと俺達に渡してきたのは、いわゆるトロピカルフルーツのジュースと氷の塊だった。

「夏は氷でキンキンに冷やした飲み物が定番だと伺いマシタ!【氷魔法】による氷屋もおりましたのデ、買ってまいりマシタ!」

「わー、ありがとう」

「ありがとう」

よっぽど果物が気に入ったらしいデューは、ぐびぐびとバケツサイズのジュースを飲んでいる。

……荷物全部果物か。うちは知恵の林檎しか無かったもんな。ストロングベリーは育成中だし。今度から果物も多めに買ってくるか。

そしてマリーは。

「あのあの、綺麗な糸とか肌触りの良い布をたくさん買いました。だから……マスターと旦那様のお洋服、仕立ててもいいですか?」

「ぎゃんかわ」

健気可愛いさで相棒の心を的確に撃ち抜いていた。

よしよしと可愛がられているその背中で蜘蛛の腕が嬉しそうにわきわきと動いている。

……なんでそれが平気でリアルの蜘蛛がダメなんだ? 違いがわからない。

「寝る時に着るパジャマが欲しいな」

「わかりました。頑張ります」

まぁ、そのうち欲しいって言ってたしちょうどいいか。

「ところで、その可愛い白いワンピースと麦わら帽子はどうしたの?」

「夏の海辺と言えばコレが定番だと勧めていただきました。兄様達にも好評だったのですが……どうですか?」

「めっちゃかわいい」

その定番って今の時代でも定番なのか?

一昔前の映像作品で見る感じのような気がするけどな?

女性の服に疎い俺には、その辺はさっぱりわからない。

(可愛けりゃいいのよ)

(……そっかー)