軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:夏の露店は賑やかに

……暑い。

ゲームだからって油断した。

日差しが暑い!

熱中症になることは無いとわかってはいても、夏の直射日光の下で遮る物も無しに露店は流石にキツイ。

というか、プレイヤーは大丈夫でもNPCは体調崩すかもしれないな……いや、ジャック達は人の体じゃないから大丈夫だとは思うが。

……ダメだ、暑さで思考もとっ散らかってる。

(……相棒)

(何ー?)

(【木魔法】とかで屋根作れない?)

(おお! 頭良い!)

「【ツリークリエイト】」

【木魔法】がブラフだと思われてるからもう使っても大丈夫だろ。

魔法の木は露店の四隅から細く伸び上がって、藤棚みたいな屋根になった。オレンジの花が咲いているのは相棒の気分かな。

俺達の露店を見た周りの店も、「その手があったか」みたいな顔でエルフの店主が真似をしたり、近くのエルフに頼んだりして各々屋根を付け始めた。

なんなら通行人のエルフもでかい葉っぱの日傘を差し始めた。……頭の上にデカいキノコを生やした人はそれでいいのか。

……うん、日光が遮られると快適さがだいぶ違うな。

(助かる)

(ええんやで)

さて、演奏でもするか。

今日の露店の商品は、いつものリンゴガチャと、相棒が書いた本が二種類、ジャックの作った武具が数種類、俺とマリーが作ったドリームキャッチャー、そしてデューがソロで仕留めてきたワンパンベアの素材だ。

……生産スキルの無いデューは、特訓がてらワンパンベアに喧嘩を売っていたらしい。

盾で受け流す訓練をしながら盾でボコボコにしてきたと誇らしげに報告してきた。相棒は褒めて頭を撫でていた。何度もワンパンされている防御が低いジャックは呆れていた。

周りの露店はプレイヤー産のポーションや海の素材が多い。初心者向けの露店は安い装備なんかも売っているが、俺達の品揃えはかなり特殊だ。

さて売れるかな?

* * *

「これください!」

「ハーイ、ありがとうございマース!」

「やったぜレゾアニムス装備!」

「こんな所で買えると思わなかったから嬉しい!」

店は中々の盛況だった。

主にジャックの作った装備品が。

いくら夢で入場出来れば採掘可能とはいえ、出回る絶対数がそう多くないからか飛び付くプレイヤーが多かった。

製作者のジャックは嬉しそうに自分で会計をしている。

「防具は胸当てと脛当テ、武器は軽めの剣と杖が売れ筋デスナ」

「ジャック兄様、さすが」

「へへへ、どんな人がこの鉱石欲しがるか旦那サマに確認しておいてヨカッター」

ちゃんと需要を確認してきたジャックのお手柄だな。

メインの客層はテイマーとサモナー、そしてヒーラー。時折バード系。ようは味方にバフをかける機会が多い職業だ。

バフの効果は精神の数値に依存するから、この辺の職業は防御よりも精神を優先して上げている傾向にある。

「フフフ、精が生まれるくらい使って貰えるとイイナ」

ステータスの精神数値に依存して能力が変動する装備だから長く使えるだろう。

このゲームの装備は上半身も下半身もセットだから、こうやって一部だけ売っている防具は、各々が服と組み合わせて自分好みの装備に整える。

服専門の店は、そういう形で防具屋とは別の需要があるらしい。

マリーはいつか服を作って売ってみたいらしく、周りのプレイヤーの着ている服を真剣な様子で観察して、渡した紙に木炭でせっせとスケッチをしている。

そんなマリーと俺が作ったドリームキャッチャーだが、意外と売れ行きは悪くなかった。

【蜘蛛糸編みの夢守り】…品質★★

寝床の上に吊るしておくと、網が悪い夢だけを捕まえてくれる。

説明に記載されたって事は、実際に効果があるんだろう。ゲームだとこういうアイテムも気休めじゃなくなるから侮れない。

他のプレイヤーもそう思ったのか、チラホラ買っていくお客がいる。

「リアルでも持ってるわー。睡眠バフの効果上がったりしないかなー?」

「ピリオのNPCにあげようかな、夢見悪いって言ってたし」

「あー、俺もお土産に買うかな」

会計はもちろんマリーがしている。

「ありがとうございます」

お金を受け取って嬉しそうにはにかむマリー。

背中から追加で生えている蜘蛛の腕に最初は皆驚くが、流石は相棒こだわりの容姿の人形だ。ほとんどがこの笑顔に撃ち抜かれて陥落していった。

「か、かわ……」「天使がおる……!」「あー! 自分専用の人形欲しくなるなぁあああ!」とか吠えるお客。……最後の奴はちょっと危ないな。ああいう人には近付いちゃいけません。

順調に少しずつ売れていく装備とお守りの横で、デューの狩ってきたワンパンベアの素材はサラッとまとめて売れて行った。

買ったのは、久しぶりのグレッグさん。

「お、久しぶりに見たな」

ニヤリと笑ったグレッグさんは「またうちにも来いよ」と小声で言い残してデューに代金を支払い去って行った。

……うん、やっぱりあの人は気付いてたな。