軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:転職と死霊魔法、そして。

しばしウサギを狩りながら森を歩くと、俺の【弓術】レベルが上がった。

「やっと来た、職業」

「おっ、相棒も来た? どんな?」

エフォ(EFO) は全員一律『冒険者』で始まる代わりに、初期の転職が早い。

戦闘職で大体最初に候補に出てくるのは武器スキルが5になると出てくる『剣士』とか『ランサー』なんかの職業だ。

「……『狩人』」

【弓術】と【罠】を使っているとこの職業が出てくるのは有志wikiで確認済み。予定通りだ。

ここから先は個人のプレイによる分岐があまりにも多くて未知数になるけど、とりあえず『狩人』になっておけば職業ボーナスが俊敏に多く入る。

「転職っと」

「昨日も思ったけど、このゲームって転職にエフェクト無くて地味だよね」

「それな」

昔のRPGみたいに見た目がガラッと変化したりしない。

ファンファーレなんかも鳴らないから、黙っていたら隣にいたって転職した事はわからないかもしれない。

狩人に転職した事で、スキルも追加される。【テイム】と【追跡】だ。

「【テイム】は狩猟犬って事だよね」

「鷹とかな」

【追跡】は使うと対象の痕跡がスキル使用者にだけ薄っすら光って見える。

「どうする? 街で犬売ってないか見に行く?」

「いや……しばらくはいいかな」

『狩人』にはなったけど、俺のプレイスタイルって『狩猟』というより『闇討ち』なんだよな。

隠れて、敵に認識されてないところから急所を討つ。

だから犬が増える事で、隠れた時に見つかりやすくなると困る。

「なるほどねー、犬も【隠密】持ってればいいんだけどね」

「犬だからなぁ」

そういう情報が入ったら考えよう。今のところは。

「相棒も、そろそろ【死霊魔法】使ってみたら?」

「そだね」

というか、そもそも【死霊魔法】って戦闘で何ができるんだ?

「うむ、戦闘における【死霊魔法】だな? いろいろあるぞ。まずは我のように、ナニかに封入している霊魂の力を使うモノ」

霊魂の入ったアイテムは、【死霊魔法】の所有者にだけ使える魔道具のような扱いになるらしい。

「例えば我は不死鳥故、死んでおるから【蘇生】は出来ぬが、【フルリカバリー】と【煉獄の炎】あたりは使用可能だ」

「……それ、今の僕に使える?」

「使えるぞ? MPが消し飛んで威力はしょぼくなるであろうがな!」

「ダメじゃん!」

低レベル帯の雑魚相手に連れ歩く能力じゃないな。

「あとは【召喚魔法】のように、その一瞬だけ遠方より呼び起こして一発ドカンとぶちかましたらすぐに帰るモノ」

フッシーの言うように、イメージは完全に【召喚魔法】だ。

「例えば拠点にいる我を戦場に呼ぶとする。さすれば【フルリカバリー】か【煉獄の炎】あたりをぶちかまして、すぐに帰る。連発するのでないなら、この方法の方が杖の籠等を圧迫せんな。ただ遠くから呼ぶ分、MP消費はちとでかい」

「出張費用かかるんだね」

フッシーを使うならこっちの方が現実的かもな。持ちスキルが明らかに切り札仕様だ。

「あとは【死霊魔法】独自の技である憑依」

「憑依?」

「うむ、何かしらの器を用意して霊魂を下ろすのだ」

「自分とか人形とかに?」

「さよう。一時的に下ろすのみならず、器と魂の相性が良ければそのまま生き物のように単独での行動が可能になるのだ。あとはテイマーのように育てるなり指揮をとるなり、自由自在」

「生き返るのとは違うんだ?」

「生まれ持った身体とは異なる故、蘇生とはまた別物よ」

なるほど。

今の話を聞いて、わかった事がひとつある。

「今の相棒がフッシーを連れて歩いても、出来る事ないな?」

フッシーはキョトンとした後、少し気まずそうに目を逸らした。

「……そうかもしれんな? 【煉獄の炎】でも撃つか?」

「撃たないよ!」

そんな気軽にヤバそうな放火を勧めるんじゃない。

* * *

結局俺達は、ほどほどの所で切り上げて拠点に帰還した。

相棒は普段使い用のオバケを確保する必要があるし。

俺は俺で、他属性の魔法も習得してから戦闘したかった。

「言うて僕も色んな属性の魔法は欲しいんだよね。どうやって覚えるの?」

「基本四属性は図書館で本を読むと習得できるようになったらしい」

「前は違ったの?」

「β時代は専用NPCがいたけど、混雑したから仕様変わったって」

「へぇー……図書館って街だよね?」

「他に無いよ」

「相棒、行くの大丈夫?」

「……露店広場にいかなければ……なんとか?」

でもリアルでは昨日の今日なんだよな。

俺の不安を察したのだろう、相棒は何か閃いた顔でポンと手を打った。

「とりあえず本屋さん無いか探してくるよ。正式サービスで増えたかもしれないし」

「……あるかなぁ? あったら嬉しいけど」

「無かったら図書館で貸し出しサービスが無いか訊いてみる」

貸し出しはなおの事望み薄のような気がするけど。

……でも相棒がそこまで言ってくれるなら、お言葉に甘えようか。

「じゃあお願いしようかな。相棒はその間俺にやってて欲しい事はある?」

「相棒のご飯食べたい!」

「ああ、そういえば料理まだしてなかった。了解」

「杖にフッシー入れて置いていくから、料理しながら森のネタバレ聞いておくといいよ」

そんな話をしていると、フッシーが反応した。

「そうだ、主よ。書籍の多い所へ行くのなら【刻印】に用いる紋の一覧でも無いか探してみると良い。我もさすがに刻印の全てを知ってはおらぬのでな」

「おお、なるほど。ありがとう」

フッシーのこういうワンポイントアドバイスは結構助かるんだよな。いちいちwikiを開かなくて済む。

……というか、wikiにも無い情報が出て来てる可能性すらある。

相棒を見送って、俺とフッシーは家の中に入った。

「さて何にしようか……フッシーって食事はできる?」

「む、どうであろうな。このような状態になったのは初めての経験故」

「出来たらお供えでもしてみるか」

調理器具と材料を見比べる。

「パンはあるし……とりあえずスープでも作ってみよう」

野菜と肉をくたくたに煮込んで旨味を出そう。

……ゲーム内の料理で旨味出るか?

まぁやってみないとわからないか。

材料を切って、鍋に入れて火にかける。……マッチも水樽もあるけど、こうなると火と水の魔法も覚えた方が料理は楽そうだ。

ぐつぐつと煮込む間、俺は興味深そうに調理を見ていたフッシーに声をかけた。

「お待たせ。この場所のこと教えてくれ」

「うむ」

鍋から目を離さずにフッシーが語り始める。

「まずこの場所は、先日訪れた街とは陸続きになっておらぬ」

「ほう?」

「ここは『死の海』の畔となる『深き夢の台地』。そこに広がる『 微睡(まどろみ) の森』よ。人の子らが住まう彼の地からは、少々離れた次元に在る場所だ」

「……ハハハ」

なんてこった。

心当たりしかないんだが?