軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ︰本

さて、僕は相棒とフッシーに見送られて最初の街『ピリオノート』に出てまいりました。

適当な兵士さんに声をかけて、本屋さんが無いか聞いてみよう。

「本屋は無いなぁ。むしろお上は冒険者さん達が本屋始めてくれないかなーって期待してる感じだったよ」

「なるほど」

こんな言い方するって事は、今の所、公式の本屋実装予定は無いってことかな。

「じゃあ図書館はどこにありますか?」

「図書館なら入植記念公園の隣だよ」

「ああ、あのへんかぁ。図書館って本の貸し出しはやってますか?」

「いいや、こっちに持ち込んだ本はどれも貴重品の扱いだから、貸し出しはしていないって話だ」

貴重品か、そりゃそうか。

兵士さんにお礼を言って、図書館へ向かう。

図書館ではお静かに。ゲームの中でもそれは変わらないんだね。

中は静かで、人が少ない。

……うん、少なすぎかな?

専用NPCが混雑したってくらいだから、もっと多いかと思ったんだけど。

もしかして、図書館は個別フィールドに入る処理でもされてるのかも?

カウンターに司書さんぽい人がいるので、声をかけてみる。

「すみません、今少々よろしいですか?」

「はい、何でしょう?」

「新しい属性の魔法を覚えられる本と、【刻印】スキルに関する本はどのあたりにありますか?」

「それでしたら──」

司書さんに大体の場所とタイトルを聞いた。

これで場所は大丈夫。

あとは──

「ここの本って、写本はしても良いですか?」

「構いませんよ。むしろ推奨しております」

お、聞いてみるもんだね。

ファンタジー世界で本が貴重品な上に追加が望めないなら、ワンチャンあるかなと思ったんだ。

リアルだとね、本の撮影ダメ絶対だけど。

なんならこの司書さんから写本用の羊皮紙とペンを買えるらしい。

とはいえ、写本なんて相当時間がかかる。

まずは目当ての本のボリュームを確認することにした。

図書館とは言っても、蔵書量はそんなに多くない。中学・高校の図書室程度。むしろ読書スペースの方が広い。自習室みたいな個室まであるみたい。

魔法関係の本はすぐ見つかった。

本、デカいなぁ!?

大判サイズで羊皮紙も分厚い!

書いてある文字も、デカい!

……そこそこ厚い本に見えるけど、表紙と羊皮紙が厚いだけだねコレ。安い羊皮紙をゴツい表紙で押さえてる感じの本。

……あれかな、あんまり出来の良くない本を安く手に入れて開拓地に持ってきたのかな? これなら破損しても惜しくないって感じで。

ゲーム的にも『ちょっとした本』感を出しつつ、そこまで読む時間を取らせずダレないように済むんだと思う。

でもこれなら、写本にそんなに時間はかからなさそう。

とりあえず相棒にメッセージを送る。

──『本屋さんも貸し出しも無かった。写本はオッケー。やってみたいんだけど、いい?』

返事はすぐに来た。

──『いいけど、あんまりかかりそうなら一回帰ってきてね』

そだね。ご飯作ってくれてるもんね。

『了解』って返事をして、司書さんから紙とペンを買う。

西洋ファンタジーな世界観だけど、書いてある文字は日本語です。日本語しか読めないから助かる。義務教育? 何年前の事だと思ってるの。

羽ペンは初めて使うから、紙の端に適当な模様を描いてペンの感触を確かめた。……こんな感じね。結構引っかかる。文具の発展は偉大だ。

静かな本の住処で、カリカリとペンを走らせる。

別に出直しても良かったんだけどね。

相棒も、この状況なら普通に図書館に来たと思う。記念公園の辺りは人が少ないから許容範囲だろうし。

でも、ちょっと気になる事があったから。

【建築】も【木工】も、ブループリント機能がある。

立体にコピペ機能を作っておいて、印刷物に無いなんて、そんなことあるかな?

そんなわけないと思ったから、もしかしたらスキルが取得できるかもしれないって思ったんだ。

大判の本の1ページあたりの字数はそんなに多くない。

買った羊皮紙とペンは質が良いものだから、余裕で原本より小さい字が書ける。

あとは所々にある魔法陣みたいな図形。省いてスキル取得の効果がどうなるか分からないから、コレも書き写す。

これに関しては僕にはちょうどいいスキルがある。

「【製図】」

わぁお、紙の上に製図板のスケールみたいなの出たわ。三角定規もコンパスも分度器もあるね。これなら図形も余裕よ。

こういうのは仕事で触ってるからね。

それほどかからずに、一冊分の写本が終わった。

──【火魔法】スキル取得

──【転写】スキル取得

ほら来た!

転写の終わった紙に【製本】を使って、同じ羊皮紙の表紙で綴じる。うん、羊皮紙製の同人誌って感じ。

そのまま次の属性の魔法本を手にとって、【転写】からの【製本】。これを繰り返す。

それほど時間をかけずに、火・水・風・土魔法と刻印の写本が揃った。

ふへへ、本だ本だー。紙の本が好きなんだ。

こうなると、拠点に書庫が欲しくなるよねぇ。ロッキングチェアとか置いてさ。夢が広がるぜ。

それじゃ、目的は達したし帰ろうか。

* * *

「ただいまー」

「おかえり」

「お疲れだ主よ」

「スープ出来てるよ」

「やったー!」

帰宅早々、幸せが待っていた!

椅子がまだないから、二人でベッドに座って食事を取る。

スープうめぇ。

野菜と肉の旨味が最高かよ。パンとの相性もバッチリだね。

「うむ、調理された食事というものは良いものだな!」

「フッシー食べられるんだねぇ」

ボウルに入れたスープを試しにフッシーにお供えしたら、なんと普通に食べ始めたよ。食べる量は僕らの十分の一くらいだけどね。

「うむ、栄養摂取というよりは、満足感を得るのが主目的のようだ。お供えというお気持ちがまず嬉しい。それが美味ならばなお嬉しいという具合よ」

なるほどねぇ。

そして話は図書館の事になった。

「やってみたら【転写】のスキル取れたから、とりあえず魔法の本の写本作って来たよ」

「マジで? 【転写】なんてスキルあったのか」

相棒曰く、有志wikiで見た記憶は無いって。

皆、意外と試さなかったのかな。

まぁそんなに使い道あるかっていうと微妙かもしれないけど。

「食べたら本読もうか。あと紙とペンも買ってボックス入れてあるから、好きに使っていいからね」

「オッケー」

安楽椅子なんてまだ作れないから、二人でベッドでゴロゴロしながら読書タイム。

「……自宅でのんびり読めるなら、最初に取るの【闇魔法】でもよかったかもな」

「あー……言うて、闇と光は草と違って種族特性じゃないし、こういう本どっかにあるんじゃない?」

「だといいけど」

……居心地が良くてうっかり寝そうになりながら、こういう時間っていいよなーって。

……なんて思っていたら、相棒が突然ガバッと起き上がって耳を澄ませた。

「えっ、何? どしたの?」

「……襲撃だ!」

「えっ」

──ゴッ と、外壁に何かがぶつかった音がした。