軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:妖精と夫婦の自己紹介

参加者の自己紹介が始まって、どうやら順番が時計回りじゃなく立候補順だとわかった今、俺達はあるひとつの重大な想いを抱いていた。

(……自己紹介でトリは避けたい)

(それなー)

最初も嫌だが最後も嫌だ。

真ん中あたりがいい。

うっかり最後で空気が微妙になったりしてみろ、最低でも三日は落ち込む事になる。

オープンにする内容?

死霊魔法も精霊も解禁になったし、別に秘匿する内容も……あー、いや。死の海の事は黙っておくか。強請られても困るし。

「よし! では次の者!」

一瞬顔を見合わせる参加者達。

三番手か……行くか?

「じゃー俺がいこっかな」

「うむ、ではフェアリー殿!」

おおっと。

「ただその前にちょっと聞きたいんだけどさ? お宅らどーやって自拠点がある次元の名前確認してる? そんな機能あったっけ?」

あ、それは俺も気になる。

俺はフッシーから『死の海』とか『深き夢の台地』に広がる『 微睡(まどろみ) の森』とか聞いたが、他の面々の自己紹介を聞くに、アレって多分次元の名前じゃないと思うんだよな。

ここはどこですか? って聞いて町の住所だけ返ってきて、国名は言われなかったみたいな状態だったと思う。

アルネブさんとド根性ブラザーさんはキョトンと顔を見合わせた。

「転移オーブから行き先を選ぶ時、右下に小さく詳細ボタンがあるわよ?」

「うむ! 他所から帰る時にそれで自拠点の詳細を見れば良いのだ!」

「マジで?」

マジで?

転移メニューなんかそんなマジマジと見なかったわ。

「ちょっと見てくる」

「あ、僕も見てくるー」

「おたくらもかーい」

フェアリーと一緒に相棒も転移オーブに走る。

(わーマジだ。僕らの拠点の次元、『終焉の夢想郷』だって)

(へぇー)

(フッシーが「そういえばそんな名であったな」って言ってる)

(おい)

フッシー、さては『死の海』の事が先に来てて忘れてたな?

二人が戻ってきて、自己紹介が再開。

「割とあっちもそっちもフルオープンに見えてビビったけど……まぁ確かに似た境遇同士ならそのへんはあんま秘匿する意味無いっていうか、お察しするよねーとは思ったわ」

言いながら、男フェアリーも装備を変えた。

クヌギのドングリっぽい帽子を被り、下からはカールした黄色の髪が覗く。

体は布の服に、虫の甲殻を使った胸当てをつけて、その上から葉っぱを束ねたようなポンチョを羽織っていた。

「どーも『カステラソムリエ』です。一応β勢。『世界樹の木陰』の『小さな洞』を寝床にしてる『マナの召喚士』でっす」

「おお! 掲示板で時折お見掛けするβ人だったか!」

「βさんでも知らない事あるのねぇ」

「β勢って別に歩く攻略本じゃないから。正サでサイレント修正されてる事も多いし、割と手探りなのは一緒」

カステラソムリエさんは「やれやれ」と肩を竦めた。

「そもそもマップ選択で変な所選んで変な所行くのも正サからだから。俺βと同じ事したのに変な所に行って焦ったよ」

「でも情報拡散したりはしなかったんでしょう?」

「当ったり前。現状世界樹関係は俺の独占よ? 平凡な俺が高みの見物できる機会なんてそうそう無いんだから、精々秘匿して楽しみますよ」

「わかるー」

うんうんと頷く性別不明とアルネブさん。

「そういう意味では、そこのお二人には感謝なのよねぇ」

「えっ、僕達?」

「それな。森夫婦さん目立つから、『所在不明の特殊な開拓地にいるっぽいプレイヤー』って言えば森夫婦さんって感じだし」

「うむ! 我々が多少変わった物を売ったところで話題にもならんな!」

知らん内にデコイ扱いされているだと……?

「ねー?」じゃないんだよ、利用料取るぞ?

「じゃ、この流れで次は僕らが自己紹介していい?」

「どうぞー」

この流れでいいのか?

いや確かにトリは嫌だけどさ。

……まぁいいか、着替えね着替え。

システムウィンドウを開いたところで、隣のキーナが首を傾げた。

「……あれ? 相棒、僕らってどっちに着替えればいい?」

「普段着でいいよ」

「顔がいっぱいあるのも大変そうねぇ」

装備品を選んで、いつもの暗殺者風な装備に着替える。

相棒もいつもの魔女スタイルだ。

「僕は『キーナ』です。職業は『ハイネクロマンスクラフター』」

「……『ユーレイ』です。職業は『霊狼の射手』」

「拠点がえっと……『終焉の夢想郷』にある『深き夢の台地』の『 微睡(まどろみ) の森』」

あ、住所そんなに長かったの?

……もしかしてあのマップ、島ごとに別の名前付いてるのか?

「あとは……あ、僕ら夫婦です!」

「うん、知ってる」

「リアルでも夫婦です!」

「だと思ってた」

「あれー?」

ものすごく微笑ましいものを見る目を向けられている。

「てかあんたら普通に見かけた事あるわー。たまに露店広場で手繋いで買い物してるバカップルじゃんすかー」

「あ、たぶんそれであってる!」

「照れもしねぇぞ」

「自他共に認めるバカップルなんで」

「旦那も同類だコレ」

「まぁ夫婦って似るって言うものねぇ」

「ハッハッハ! 夫婦仲が良いのは良い事だ!」

……よし、とりあえず盛り下がったりはしないで自己紹介は乗り越えたな?

じゃあ次の人ーってなった所で、性別不明の呪い屋っぽい人が……妙な迫力を漂わせて手を上げた。

「主催はトリおねがいしまーす。俺はちょーっとそこの夫婦に言いたい事あるからー、次のターンもらうねー」

トリを任された天使が狼狽える。……いや、この流れでトリが主催以外はありえないと思うけど。

でも俺達に言いたい事ってなんだ?

心当たりが無い。

なんだなんだと全員が視線を向ける中、性別不明の呪い屋の自己紹介が始まった。