軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:呪術士の嘆きと自己紹介

性別不明な呪い屋さんは、僕らに言いたいことがあるらしい。

……はて? リンゴと交換した呪いアイテムくらいしか心当たりがないなぁ。でも今更返してって言われても無理だし。

なんだろうって思いながら呪い屋さんの言葉を待つ。

呪い屋さんもショッ○ー衣装から早着替え。

頭は深緑色のボブヘアに細長い布が緩く巻いてあって、前髪が目元を完全に隠してる。……もしかしてアレもメカクレ仕様でちゃんと見えてるのかな。

装備はくすんだ色味の細身なズボンに、アジアンテイストなポンチョを着ている。

……ただ、そのポンチョの上から細いチェーンがぐるぐる巻かれてて、腕の可動範囲が狭そう。

チェーンには等間隔に黒い立方体が繋がれている。

ものすごく怪しい雰囲気の姿。

そしてやっぱり変装してなくてもメカクレで顔がわからないし、性別もわからない。

「『夾竹桃』って言いますー。職業は『火炎の呪術師』。【呪術】の使いどころを模索中なんで、メイン火力は【火魔法】ですー、コンチクショー」

投げやり気味な自己紹介に皆苦笑い。

けれども、僕と相棒の苦笑いは次の一言で凍り付く事になった。

「開拓地はー『奈落』でしたぁー!」

……ん???

「でしたということは過去形なのか!?」

「ちょっと人の住める環境じゃないんだわー、だから住むのは諦めて狩場にしてるー」

「住むの諦めるって……宿で寝泊まり?」

「友達の寮部屋に間借りー」

「え、寮部屋って広くないじゃん。よく置いてくれてるね?」

質疑応答していた夾竹桃さんは、若干固まっている僕らを振り返るとニヤリと笑った。

「そちらのご夫婦は『奈落』って地名に聞き覚えございますよねぇー? 無いとは言いませんよねぇー? どうやってか知らないけど出入りしたもんねぇええー?」

笑顔が黒い!

そっと目を逸らした僕らの反応で、カステラソムリエさんは閃いたらしい。

「もしかして……使徒の結晶捨てた所!?」

「大正解ー!!」

夾竹桃さんは仰け反って高らかに正解を宣言した後……バタリとテーブルに突っ伏してオイオイと泣き真似を始めた。

「おかげで奈落はただでさえハードモードだったのが地獄になっちゃったんですー! ヤベェ怨念とヤベェ虫の天下分け目の合戦が始まっちゃったんだよもぉー! どーしてくれるんですかー!?」

わぁ……なんということでしょう。

奈落なんて名前だからまさか人なんかいないだろうと思って捨てに行ったら、まさかの利用者がいたとは!

「えーっと……なんか、ごめんね?」

アチャーって顔を見合わせる僕と相棒。

ゲラ笑いし始めたカステラソムリエさん。

ビックリしているその他の人達。

「でもどうやって? 自分の開拓地でもない他次元に飛ぶようなアイテムなんてイベントの景品にも無かったわよね?」

アルネブさんの心からの疑問に、僕らは該当アイテムをインベントリから出して見せる事で答えた。

【奈落ニンジン】…品質★★

齧れば意識が奈落へ落ちる。戻って来れるかは本人次第。

「これを煮詰めたのがこちらです……」

【奈落行きの秘薬】…品質★★

その身に入れれば奈落に落ちる危険な秘薬。

強靭なモノは多く取り入れる必要があるだろう。

アイテムを見た夾竹桃さん以外の人達が「あっ(察し)」みたいな顔になった。

そして夾竹桃さんは……

「キョェエーッ!」

怪鳥みたいに吠えた。

「なぁーんだこのニンジンはぁー!? ピンポイントで奈落行き……そんなことあるぅー!? てかアンタらイベントの岩ヤドカリにくっついてた大岩君も一匹奈落に飛ばさなかったー!?」

「あ、それはこっち」

相棒がそっとインベントリから矢を取り出す。

【奈落送りの矢】…品質★★

危険な秘薬が塗られた奈落送りの矢。

強靭なモノには多く撃ち込む必要があるだろう。

「アイテムの使い方が上手い!! そういえば射手なんでしたねー!? 有能オブ有能かよこのスナイパーがー!」

「えっと……ありがとうございます?」

「褒めてねーんじゃー!」

「いや褒めてたよ。100%褒めてたよ」

「うむ! 褒め言葉しかなかったな!」

親の仇のように奈落ニンジンをギリギリと締め上げ始めた夾竹桃さん。

そんな様子をクスクス笑いながら見ていたアルネブさんが僕らに訊く。

「でもあのニンジンはどうしたの?」

「拠点で普通に地面で作物育てたら、普通のニンジンがあんなんなっちゃうんだよね」

「あら、他の野菜も?」

「なるなる。デスポテトとか」

「ですぽてと」

「見る? ……はい」

「……あらデスポテト」

「土がよろしくないみたいだから、食べる分はピリオの周りで土だけ採ってきて使うように……あれ? みんなの所はそういうの無いの?」

気になって訊いてみたら、何故か皆一斉に目を逸らした。

「……私の所、植物が育つ環境じゃないのよね」

「ハッハッハ! 溶岩地帯なので食料は基本買い付けている!」

「フェアリーってさ、サイズ的に農業向いてないんだわ……木の実で事足りるし」

「住めもしないのに農業ができると思うなぁー!」

「わ、私の所は……植えるまでもなく、たくさん生えているので……」

なんてこった。

試行錯誤して農業からの自給自足しようとしていたのは僕らだけ……!?

衝撃を受けていると、夾竹桃さんが奈落ニンジンを片手に僕らに言った。

「なんでもいいから責任取ってくれませんかねー!?」

それはそう。

こうなると僕らも不法投棄の自覚はあるので、なんとかした方がいいよなぁーとは思う。

すると、アルネブさんがクスクス笑いながら、天使ちゃんの肩を叩いた。

「そう言う事なら、ちょうどいいから次はこの子の話を聞いてあげてくれる?」