軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法少女戦争、完――

巨人がしゅわしゅわと消えていく。

イリスたちの魔力を集めたシャルとユリヤの合体技の直撃を喰らったのだ。

「いったい何がどうなって……?」

唖然とする学院長に説明するのは後回し。

実のところ、ここからが今日一番の大事な仕事と言えた。

実はシャルにも内緒にしてる。

百を超える結界で封じた魔神ヴィーイを、ひょいっと皇帝さんの身体から抜き取って、ひとまず謎時空へと収めておく。

そうして結界をいくつか作り上げた。

主に演出用のやつなのだが、こいつを忘れちゃいけねえよなあ。

「それは!? 〝聖なる器〟……ですか?」

そうです。

中身が抜かれた成れの果て。これだけだとただの優勝トロフィーだ。

おっと急がねば。

黒い巨人が完全に消えそうになっていた。

俺はすぐさま〝聖なる器〟(中身なし)をあちらに飛ばす。

あたかも消えかかっている黒い巨人の中から現れたように、ぺかーっと光らせながらゆっくり上空へ浮かばせていった。

『あれって〝聖なる器〟よね?』とユリヤ。

『シヴァが回収したのに、どうして?』とシャルちゃん不安そう。

『様子がおかしくないか?』とは鋭いイリス。

『見てください! 黒い霧が集まっていきます』とマリアンヌお姉ちゃんは不安そう。

よしよし、演出効果はばっちりのようだな。

ちなみに黒い霧も俺の結界で作ったやつなので害はありません。

『いけません、やはり〝聖なる器〟はもう……汚染されてしまっているようです』

シャルちゃんが哀しそうに告げる。

『……あー、なるほど。そうしちゃうわけだ』

なんか察したらしいユリヤさん、ぜひ黙っておいていただきたい。

「完全に暴走してしまえば世界が終わる。攻撃は先ほどの巨人同様、魔法少女のものしか効果がない。二人でアレを破壊するのだ!」

俺はシナリオを進めるべく告げる。

シャルちゃんはきりりと、ユリヤも納得してくれたのか笑みを浮かべた。

『しかしボクたちにはもう、魔力が残っていないぞ』

うん、それはそう。わりと全力全開で巨人さんを倒したからね。

そこはほら、べつのとこから調達すればいいわけで。

「魔法少女たちよ、私と学院長の最後の魔力を君たちに託す!」

え? と巻きこまれた学院長が怪訝な視線を寄越すも、あくまで演出上の話なのでね、貴女にご迷惑はおかけしませんよ、と。

シャルちゃんたちの真上に浮かぶ魔法のステッキに魔力を注ぐ。

『ほわわぁ……』

『な、なによこれ……』

あれ? 困惑してるみたいだな。もしかして魔力が少なかったか。

俺が慌てて倍プッシュすると。

『わひゃぁ!?』

『うそでしょ!?』

魔法少女の二人に著しい変化が現れた。

それぞれのチームカラーであるピンクとゴールドの光があふれる。その背に巨大な光の翼が広がった。なんか学院長やヴィーイにあった翼みたいだ。

おかしいな、俺こんな演出やっとらんぞ。

「あれは〝無形の翼〟!? いえ、そんな、まさか……」

俺の隣で学院長が驚いている。

なんか知ってるもんと誤解してそうだけど、まあいっか。

「今だ! 正義の魔法少女たちよ、君たちの力で汚染された〝聖なる器〟を浄化するのだ!」

シャルちゃんが手にした短めのステッキがにょっきり伸びた。あれこれ装飾も現れて、豪華絢爛な魔法のステッキに為り変わる。

これは俺がやってます、はい。

ついでにユリヤにも似たようなのを目の前に生み出した。「ありがと♪」とどこにともなくウィンクをひとつ、魔法のステッキを手に取って。

『もう一度いくわよ、シャル』

『わかりました、ユリヤ』

二人は螺旋を描いて上空へと飛び立つ。やがてすこし距離を開けて背中を合わせた。

ピンクと金の光の翼。

輝きはさらに増していき、蒼天をそれぞれの色で二分した。

そうして奏でる、愛らしいハーモニー。

『『ダブル☆シューティングスターズ☆ストライクッ!!』』

ホント息ぴったりだなあ。即興で掛け声合わせるってすごくね?

全天を覆う星々のごとく、ピンクと金の光が数多に瞬く。それらは一斉に降りそそぎ、黒く染まった〝聖なる器〟に集約した。

音が消える。

世界もまた一瞬だけ消失した。

直後に大音声が鳴り響き、突風が駆け抜ける。

再びの静寂ののち、〝聖なる器〟は完全に消え失せたのだった――。

とまあ、これにて一件落着。

舞台の幕を下ろす前に〆の作業といきますか。

俺は気絶状態の皇帝さんを学院長に押しつけ、謎時空を通ってシャルたちの前に現れた。

「ありがとう。君たちのおかげで世界は救われた」

「いえ、シヴァの協力あってこそです。ですけど……」

シャルちゃんはくっと無念そうに視線を逸らした。はい可愛い。

「ああ、〝聖なる器〟は破壊されてしまった。儀式の中枢も魔神ヴィーイの暴走で完全に機能を停止したからな。残念だが、儀式はここまでだ」

なんとなく呆れた視線がシャルちゃんの背後にいる美少女から注がれているが今は無視。

「それでも! 君たちはこの儀式を通して多くの学びを得たはずだ。それこそが究極の願望機がもたらした君たちの願いのかたちだったのかもしれないな」

はっはっは、といい感じでまとまったような気がする。きっとそうだ。

よし、これで『勝者の願いを叶える』という、今回のイベントでもっとも厄介なミッションを有耶無耶にできた、はず。

別角度や監視用結界を通してジト目が飛んできているような気がしなくもないが、

「はい! すくなくともわたくしは、たくさん成長できたように思います」

シャルちゃんが満面の笑みでいてくれたから問題はまったくないのだ。

こうして、敵国の皇帝をどうするかとか学院長が神様的なにかだったとか放置したい問題は多々あるものの。

長きにわたる『シャルちゃんを楽しませるイベント』は完遂したのだった――。