軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

正義は勝つ!(ネタバレ)

「それ!」

ピンクちゃんが飛んだまま左右の人差し指を突き出した。

びくぅっとするホワイトは眼前に幾重もの防御魔法陣を展開する。ホワイトの姿が見えなくなった。なるほど、防御とともに視界もふさぐって寸法か。

「ならば、こうです!」

魔弾を放つ魔法陣が重なるように集まった。一点に集中させることで、防御魔法陣をひとつずつ破壊してホワイトを丸裸にする作戦だ。

「くっ、なんだこの威力は……ええい!」

ホワイトがさらに魔法陣を展開した。壊されたものを補いつつ、どうやら強化したらしい。魔弾がいっさい通らなくなった。

「なるほどです。重ねた防御魔法陣をひとつに集約させて強度を増したのですね。ですけどあえて言いましょう」

ピンクちゃんは両の人差し指を前に突き出し、高らかに告げる。

「悪手ですよ、と!」

片方の人差し指を魔法陣に、

「仲良くぅ~、くっついちゃってください!」

もう一方を地面に示してふたつの指を合わせた。とたん、ホワイトの防御魔法陣が地面に引き寄せられる。

「おのれっ! 物体以外にも効果があるのか!?」

ホワイトの口調が乱れましたねえ。

そりゃ特殊能力の説明には『左右の人差し指のそれぞれで指差した対象同士を接着させる』としか書いてないからね。『対象』はなんでもアリよ。でもって幾重もの魔法陣をひとつにしちゃったもんだから、一瞬で丸裸になっちゃいましたぷぷぷ。

憤慨するホワイトに向け、

「一斉射! です!」

ピンクちゃんが引き連れていた無数の魔法陣から雨あられのように魔弾を浴びせた。

「ぐぼあぁっ!」

吹っ飛ぶホワイト。だが遠目でもニヤついているのがわかる。

「たとえ戦闘不能になっても自分の特殊能力ならすぐ復活できます。宝石を砕かれても即座に直せばいい。そうして時間が過ぎれば変身を解除するとしましょう」

ぺらぺらと自身の考えを明かすホワイト。まあ余裕の現われだろうな。でもね。

「ええ、そうなりますとわたくしにはどうにもできません。でもわたくしだって無策ではありませんよ?」

ピンクちゃんの小躯から光があふれる。

「正義の魔法少女は、必ず勝つ! のです!」

背後に展開する数多の魔法陣も輝きを増した。ひとつから二つ、三つ、四つと魔弾が同時に射出される。しかも一発一発がまるで生きているかのように蛇行して、ホワイトの上下左右前から後ろから襲いかかった。

「待て……、そんなバカな話が、あるか……」

ホワイトはただ愕然と、無数に迫りくる魔弾の光を「うぎゃあぁあぁあああ!!」まともに喰らった。

その時点で戦闘不能。

しかし魔弾の嵐は止まらない。

やがて「ぁ」と小さなうめきが聞こえたかと思うと、

『〝白〟の宝石が破壊されました。〝白〟の魔法少女とそのパートナーは本儀式から脱落したと認定します』

そんなアナウンスが聞こえてきた。

ようやくピンクちゃんの攻撃が止まる。

「いったい何が……」

「起こったというのですか……?」

見物していたイリスと学院長が呆然と眺める先には、立ったまま気絶してるっぽいお子さまがいた。白いパンツスーツ姿の(たぶん)男の子。

「ま、復活する先から宝石を砕きまくってたらそのうち相手も根負けするってもんよ」

あるいは魔法少女ピンクのすさまじい攻撃が、白い宝石が再生するよりも早く破壊し尽くしたとかそんな感じかな。

「ぇぇ……」

「力技すぎます……」

お二人はドン引きみたいだが、魔法少女ピンクこと我が天使シャルロッテちゃんはそのくらいやってのけますことよ?

可愛く勝利のポーズをするシャルに拍手を送る俺。スタンディングオベーションです。

ほら、君たちもやんなさいよ、と二人を見れば、おや?

「なんだ、あれは……?」

「まさか……〝聖なる器〟!」

視線を追えば、魔法少女ホワイトだった少年の真上に、黄金に輝く〝聖なる器〟が現れた。

そういやあいつの謎時空に隠してたんだっけか。

でもティア教授やマリアンヌお姉ちゃんの話では、その陣営の謎時空に収納されたものはサポーターのとこに返されるんじゃ? さっきイリスが退場したときも俺の背後にぼとぼと落ちてきてたし。

まさか〝器〟そのものに意思が宿って移動してきたなんてことは……ないよね?

「なんだかヤバい感じがしませんか!?」

わたわたするピンクちゃん可愛い。

まあ実際、〝聖なる器〟から黒い霧みたいなのがにじみ出てきたんだが。

「マズいぞ」

「とにかくすぐに回収を!」

二人が飛び出そうとした、まさにそのときだ。

ぶわっ、と。黒い霧が器からあふれた。真下にいた白い少年を呑みこんでいく。

「ぁ、ぉ……、ぶごぁっ」

黒い霧は小躯を包むだけでなく、口や鼻、耳や眼球との隙間からも中に侵入していった。うわー、わりとキモいな。

「いけません!」

シャルがステッキを振るい、霧を吹き飛ばそうと旋風を呼んだ。

竜巻じみた一陣の風が、少年を呑みこまんとする黒い霧へ向け疾走する。冷気を纏ってここまでひんやりしてきたぞ。ナイスだ、リザ。

二人の協力魔法で黒い霧はまさしく風前の灯火。

勝ったな、がはは! と俺が白い歯を見せたところで。

――〝聖なる器〟が強烈に輝いた。

「まぶしいですぅ……」

「くっ……、ただの光ではないぞ……」

「魔力圧……しかも、これは……」

たしかにふつうの光じゃなく、風でもないのに風圧みたいなのを感じる。

パッと、唐突に光が消えた。

シャルが生み出した竜巻は霧散し、そして。

〝聖なる器〟も消え去って、白い少年は背中からばったーんと倒れてしまう。

いったい何が起こったのか? シャルもイリスも学院長もわけがわからないのと不安なのとで複雑な表情をする中、俺もワケわからんのは一緒なんだけど。

黒い霧が体の中に侵入しているその最中。

俺は白い少年が楽しそうに笑っていたと、そう見えたのが気になった――。